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姉の言いなりの私が幸せになるまで  作者: 池中織奈


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「どうした?」



 グラナート様のことをじーっと見つめていると、不思議そうな顔をされる。

 贈り物、どうしようかな。

 そんなことばかりを考えて、ついつい見てしまった。というか、それを抜きにしても……私はいつもグラナート様のことに視線を向けてしまうのだけど。


「グラナート様のこと、いつも見つめたくなるんです」




 ごまかすようにそう告げる。でも嘘じゃない。本心ではあった。



「本当に、お前は可愛いなぁ」



 可愛い、などとそんな風に言う言葉を口にされる。グラナート様は、よくそう口にする。



「ありがとうございます。グラナート様もかっこいいです」



 そう口にすると、グラナート様は機嫌良さそうにする。グラナート様が楽しそうにしていると、私も嬉しい。

 グラナート様は、お忙しいらしい。それはこの城で過ごしていてよく分かる。だけれども、こうしてゆっくり過ごす時間を作ってくれる。

 今は、侍女に淹れてもらった紅茶を一緒に飲んでいる。こうしてお喋りをするのは楽しい。




「今日もゼラニウムの花を見てきたんだろう?」

「はい」

「毎日、飽きないのか?」

「全然飽きません。やっぱり好きな物はずっと見ていられるなと思います」


 ゼラニウムの花を城内に植えてもらってから、毎日飽きもせずに私はその花を見に行っている。

 時間があるとこんなにも……ずっと好きな物を見たくなるんだなって不思議な気持ち。




 あ、でも好きなものだからずっと見たくなるなら、私がグラナート様のことをじっと見つめてしまうのは……そういうことなのかな。グラナート様のことを私が大切だなって思っているから、見てしまうのかな。

 そうなると……グラナート様がよくこちらを見ているのもそうなのかな。





「グラナート様も、一緒に見に行きましょう? 見ていると幸せな気持ちになるんですよ」

「そうだな。後で行くか」


 グラナート様はそう言って頷いてくれる。こうして頷いてもらえると嬉しいな。




「絵本や小説も取り寄せさせてくださってありがとうございます」

「お気に入りの絵本も、枕元に置いているだろう?」

「だって目が覚めた時に嬉しくなるんです」



 子供っぽい喜びなのかもしれない。絵本一つでこんなに喜んでいるなんて、おかしいのかも。

 それでも……実家に居た頃は絵本も自由に見ることは出来なかった。だからなんだろう、目が覚めた時に絵本を目にすると嬉しくなる。




「そうか。それは良かった」

「やっぱり起きてすぐに好きなものを見ると嬉しいですよね」

「そうだな。俺も目が覚めた時に、シアンナが眠っているのを見ると嬉しい」

「……グラナート様はいつも起きるの早いですよね? 私、グラナート様の寝顔はたまにしか見てないです」




 いつも、一緒の部屋で眠っている。

 だけど私の方が後に目覚めることも多いのだ。グラナート様の寝顔、時々しか見られない。



「俺が先に目覚めているだけだ」

「私ももっと早く起きられるようになりたいです」

「そんなに俺の寝顔を見たいのか?」

「はい。だって可愛いですもの」



 私がそう言ったら、変な顔をされた。可愛いと言われて不思議な気持ちだったのかも。

 だけれどもたまにみるグラナート様の寝顔は、とても可愛いなと思った。私はこれまで誰の寝顔をじっくり見ることなんてなかった。でもグラナート様の寝顔は、とても穏やかでずっと見てみたくなるものだった。


「そうか」

「はい。だからその……時々、昼寝とかしてくれてもいいんですよ? 幾らでも付き合います!」





 私がそう言ったら、グラナート様はおかしそうに笑った。




「シアンナもあまり昼寝などしてないだろう? もっと休んでもいいぞ。いつも日中起きて、何かやっているだろ」

「だってやりたいことが幾らでもあるんですもの」



 ここに嫁いできてから、自由な時間が沢山あって……。

 なんだかやりたいことが沢山あったりする。もっと城内の人達とも仲良くなりたいとか、そんな気持ちも盛りだくさん。


 そうすると眠るのが何だかもったいないようなそんな気持ちにもなる。

 だけれども、グラナート様の言葉を聞いて一緒に昼寝をするのもいいかなと思った。




「グラナート様も働きすぎですから、時折お昼寝する時間を作りましょう」



 私がそう提案すると、グラナート様は笑ってくれた。

 それから早速、本日お昼寝の時間が設けられることになった。グラナート様が使用人達に指示を出すと、すぐさま準備された。

 ……突然のことだったのに、良かったのかしら?



 少しだけ申し訳ない気持ちになった。だけどグラナート様はそんなものは気にしなくていいという態度だ。

 指示を受けた使用人達も、「仲睦まじい様子で何よりです」とにこやかに笑っていた。





「ほら、寝るぞ」


 ベッドの上のグラナート様に声をかけられて私はその腕に飛び込んだ。



 それからひと眠りする。

 グラナート様の腕の中は、とても安心した。


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