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姉の言いなりの私が幸せになるまで  作者: 池中織奈


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「何をしようかしら……」



 嫁いできてしばらく、やることはそこまで多くない。とはいえ、ただグラナート様のお金で生活をするだけいいのだろうか? とそう思ってしまう。

 嫁いできたばかりで疲れているだろうから……生活になれるまでの間はゆっくりしていていいとはいわれている。

 本当にグラナート様は、どれだけ優しいのだろうか。彼の優しさをこうして実感すると私は少しだけ申し訳ない気持ちになる。



「奥様、何かやりたいことはございませんか?」

「……やりたいこと。一旦、また城内を見て回ってもいいかしら」



 まだまだ城内を見て回れてはいない。このただ広い城内を見て回るのは中々終わらない。本当にびっくりするぐらい広いの。

 私が過ごしていた実家の伯爵家の屋敷とはくらべものにならないぐらいだわ。

 それに沢山の人達が働いている。

 ここで働いている人達は、誰一人として私のことを蔑ろにはしない。というより、皆、嬉しそうに笑いかけてくれる。



 どうして私に向かってそんな表情を向けるのだろうかと不思議に思った。

 私はお姉様のように、誰かに役に立てたりしないのに。


 それなのにどうして私のことを大切にしてくれるんだろうか。……私が至らないからこそ、周りがそう言う態度をするのは当然だってそう思っていた。お兄様やお姉様のように両親が構ってくれないのはそれが理由だって。




 ……だからなんていうか、それなのに私がどうして此処で大切な物のように扱われているのだろうか。そんな不思議な感覚になる。



 実家での暮らしの通りなら、現状何の役にも立っていない私はもっと蔑ろにされるべきなのになって。

 そんなことを不思議に思いながらも、許可が下りたので侍女達を連れて城内を歩き回る。

 ……城内でも一人でぶらつかない方がいいって言われているの。

 私の身に何かあったら大変だからって。大公夫人という立場の私が例えば安全なはずの城内で何かあったら、それだけで大公家の威信にも関わる。



 もし何かが起こったら……私のせいだったとしても、護衛や傍にいた侍女達も罰せられることになってしまう。

 私はそんなのは嫌だわ。

 だから自分でも色々と気を付けておかないといけないのだろう。




「あ、奥様、どうかされましたか?」

「城内を見て回ろうと思って。少し見学してもいいかしら?」



 ぶらぶら歩いていると厨房に辿り着いた。

 当然のことながら私は料理なんてものはしたことがない。実家では放置されがちではあったけれど、食事はちゃんともらえていたもの。




「もちろんです。どうぞ!!」


 そう言ってもらえたので、私は嬉しくなった。




 なんだろう、こうしてやりたいことを認めてもらえると凄く嬉しい気持ちになる。些細なことでも、これまで生きてきて私がやりたいことって認められないことが多かったから。

 でもここだと本当に……基本的にやりたいことって認められるんだなって。嫁いできて間もなくても、それがよく分かる。



 本当に大丈夫かなと、心配しながら聞いたこともすぐに快諾されるんだもの。

 厨房には沢山の食材がある。私はいつも出来上がった料理の状態しか見ないから、食材のままだと不思議な感覚になるわ。

 最初から料理があるわけじゃないのに、やったことがないからあんまりイメージが出来ないの。




「奥様、おやつでもいかがですか?」

「まぁ、作ってくれるの?」

「もちろんですよ」

「なら、食べたいわ」



 私が厨房内の見学をしていると、そんな申し出をされた。急にやってきて、迷惑じゃないかしら? なんて思っていたのに目の前の料理人の男性はにこにこしている。

 その表情を見ている限り、嫌がられてはないのだろうなとほっとした。




「おやつを作るところを見ていてもいい?」

「どうぞどうぞ」



 そう言ってもらえたので、見学させてもらう。

 小麦粉などの材料をふんだんに使って、混ぜ合わせていく。




 そして型にはめた後は窯で焼くみたい。うん、まるで魔法みたいだわ。だって全く違う材料を組み合わせて、一つの物を作り上げるなんて素晴らしいことよね。

 私は料理人達がこうして何かを作る場を見るのは初めてだけど、それでもすごいなと思って仕方がないの。



「しばらく焼きあがるまで待ちましょうか」



 そう言われて私は頷く。

 私がいつも食べている料理もこうやって時間をかけて、手間もかかって、こうして出来上がっているんだなと感慨深い気持ちになった。

 もっと食事を摂る時には、感謝を欠かさずにしようとそう思った。



「いつも美味しいご飯をありがとう」

「そ、そんな言葉を奥様にかけていただけるなんて嬉しいです!!」


 私が感謝の気持ちを口にしたら、料理人達は全員が感激した様子だった。


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