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姉の言いなりの私が幸せになるまで  作者: 池中織奈


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「よく似合っている」





 商人が帰宅した後、グラナート様から試着をしてほしいと言われて、購入したものを身につけてみてみる。

 ……一人で着るのが大変なものだと、侍女達が手伝ってくれた。

 私がこれらの服装を身に纏うのを見て、グラナート様は楽しそうにしている。そうやって楽しそうにしてくれているのを見ると、私も嬉しくなった。




「そう言ってもらえて嬉しいです。私、こんなに沢山の服を一日で着るのなんて初めてだわ」




 お母様やお姉様は、沢山の服を持っていたように思える。パーティーなどの前だと、特に流行に乗ったものをそろえなければと二人とも必死だった。お父様やお兄様はそれを見て、優し気に笑っていた。かなりの出費になっていただろうに、気にした様子はなかった。

 そこの家族の枠組みに私は入っていなかった。

 私はドレスなども、良い物を身に着けたことはなかった。

 だからなんだか、これだけ沢山の衣服が私の物なんだなと思うと凄く不思議な気持ちでいっぱいになった。







「シアンナ、此処では幾らでも買ってやるからな」

「まぁ、それは嬉しいですわ。でもあまり無駄遣いをしすぎてはいけません。領民のためにもっとお金を使う方がいいかと」

「前にも言ったようにこのくらい使っても大公領は何一つ痛手はない。だからもっと慣れろ」

「は、はい」




 こんな風にお金を使うことを慣れることがあるのだろうか? そんな気持ちにもなる。



 ……そもそも私は、この大公夫人という立場をいつまで保っていられるんだろうか。私は元々死ぬだろうってお姉様に言われていた。運よく私はグラナート様に殺されることなく、こうして大公夫人として過ごせている。だけれどもそれは……たまたまなのだと思う。

 いつかグラナート様が他の女性と婚姻を求めてくる際には、私は身を引く必要はあるだろう。

 というより、そうしたい。

 私は恋について、よく分からない。誰かを愛して、求める気持ちってどんなものだろうとぴんと来ない。




 そもそも私は貴族だから、恋愛なんて考えるべきものでもないのだけれども……。

 グラナート様はどうなんだろう。私と急に結婚しなければならなくなってどう思ったんだろう。凄く嫌だったと思われていたら少し悲しい。私はグラナート様と一緒に話すことがとても楽しいから。

 そんなことを私は考えてしまった。




「えっと、パーティーに参加する際はグラナート様も隣に居てくださるんですよね?」



 購入してもらったものの中には、社交界の場で着るようなドレスも沢山あった。


 着飾ったグラナート様はそれはもう綺麗なんだろうな、と勝手に思っている。そんなグラナート様の隣に私がいて文句などを言われたりしないだろうか。

 あまりパーティーに参加したことはないけれど、グラナート様は大公という立場も相まって凄く目立つだろうな。




「当たり前だ」

「なら、安心です。私、実家に居た頃にあまりパーティーに参加していなかったので、上手く出来るか心配なのです……。だからグラナート様が隣に居てくださるとほっとしますから」



 私はそう口にしてから、はっとする。




「ああ、でも慣れてきたら一人でも参加できるようになると思います! いつまでもグラナート様に頼ってばかりはいけませんものね」



 私としては、グラナート様がずっと傍にいてくれた方が嬉しい。安心もするし、ただただ楽しいなとそう思えるから。ただ嫁いできて間もなくならともかく、ずっとそうであるのはどうかと思うの。

 だからそう言ったのだけど、グラナート様は笑って言う。




「いつまでも俺と一緒に居たいって甘えていい。というか、一人で参加させるつもりはないから安心しろ」

「そう言うのは、やっぱり私が頼りないからですか?」

「そうじゃない。ただ心配だから、俺の傍に置いておくというだけだ」

「心配、ですか? そのうち私も慣れて上手く交わせるようになると思いますが」



 グラナート様は私のことが心配で仕方がないみたい。ただこんな私でも、いつかはお姉様みたいに上手く出来るようになるかもしれない。


 ――私はお姉様ではないから、いつまでもあんな眩しい太陽のような人にはなれないかもしれない。

 それでも……いつかはとそうなれたらと目指してはいるのだ。





「シアンナは可愛いから、変な男が寄ってくるかもしれないだろう」

「え? 可愛い、ですか?」



 グラナート様は私に可愛いとなぜか言ってくださる。

 私がそんなに周りから騒がれるほど、可愛いわけないのに。特にパーティーなんかだともっと素敵で目立つ方が沢山いるのにな。



「分かっていないだろう? 十分にシアンナは可愛いから、パーティーなどで、一人にならない方がいい」



 そう言われて、私はこくこくと頷くのだった。


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