監禁ー1分で読める1分小説ー
彼女は、ある男に監禁されていた。
「いってきます」
男は毎朝そう言うと、家の扉を閉めて鍵をかけた。それは彼女が絶対に開けられない、鋼鉄の扉だった。
男は、彼女を決して部屋から出そうとしなかった。「外は危険なんだ」と不安げな表情を浮かべて、そう漏らした。その声音は演技には見えなかった。
しかも男は、彼女に水と乾パンのようなものしか与えなかった。彼女の食事はそれだけだった。
寿司やステーキなどのご馳走を口にするどころか、彼女はその存在すら知らなかった。
もちろん娯楽もそうだ。本や雑誌を読んだり、テレビやネットを見ることもできなかった。さらには友達はおろか、彼女の家族と会ったり連絡することも禁じられていた。スマホも携帯電話も持たせてもらえなかった。
さらに信じられないことだが、男は彼女に服さえ与えなかった。強制的に裸で過ごすように命じられた。
彼女はただ空気のように、家の中にいるだけだった。しかし、彼女は男を愛していた。
嘘だ。彼女は男にだまされているんだ! あなたは声高々に男を非難し、彼女を救いたいと願うかもしれない。
ただ彼女は、そんな意見に耳を傾けないだろう。彼女は男を愛し、そんな酷い目にあっても、十分に幸せだった。それは、真実の愛の形だった。
「ただいま」
日が暮れた頃に男が帰ってきた。頬をゆるませ、その表情は優しさで満ちあふれていた。
彼女は嬉しそうに答えた。
「ニャア」