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13.暗黒騎士ディノスの素顔


「……なんか、サキュバスになってから、僕ってめちゃくちゃ働かされてない?」


 魔王城の自室にて。

 ベッドに腰かけ、腕を組みながら、僕は今後の任務について頭を悩ませていた。


「魔王軍に貢献なされて、私としてはたいへんありがたく思いますが」


 マリーは抑揚のない声でそう言うけど、僕としてはあんまり嬉しくはない。


「……お世辞を言われてもなあ……」


「本心ですよ」


 それはともかくとして、勇者にはどう対処すればいいんだろう。

 幸い、こっちが侯爵をやっつけたこともあって、勇者も警戒の度合いを強め、進撃の準備に時間を掛けているようだった。

 それでも、近いうちにこちらへ攻めてくるのは間違いない。

 何とかして、それを防がないといけないのだけど。


「勇者を消耗させるのは、当初の予定通り村の人たちに協力してもらうとして……問題は、どうやって倒すかだよねぇ……」


「おそれながら、今のラテア様を見るに、まだサキュバス本来のお力に目覚められていないご様子。ここは魔法を駆使して対抗するのがよろしいのではないでしょうか」


「うーん……まあ、それが順当かなぁ……」


 勇者に対してどう戦うかもだけど、僕がサキュバスらしい力を未だ使えていないことも気がかりだった。

 本当に僕って、サキュバスの身体に適しているんだろうか。

 マリーの言う通り、まだ魅了の力に目覚めていないだけならいいんだけど……。


「そういえば、ラテア様のご不在時に、ディノス様が訪ねてこられましたよ。『勇者に当たる時は自分も手伝うから、近いうちに人間の村に連れて行ってほしい』とのことでした。村人たちとも顔合わせをしておきたいそうです」


「え、そうなの? そういうことなら話は変わってくるんだけど」


 ありがたいことだ。直接的な攻撃力を持たない僕としては、暗黒騎士のディノスが共闘してくれるなら、それは大きな助けになる。

 勇者と戦う際にも、戦術の幅は大きく広がるはずだ。

 僕はさっそくディノスに返事を送り、近いうちに村に行く約束を取り付けることにした。






 

 二日後。魔王城の大正門前で、僕はディノスと待ち合わせをしていた。

 以前のように、ボンデージの上にブラウスとスカートを着用した村娘の格好。これから二人で村へ行き、村の人たちといっしょに対勇者についての打ち合わせを行うのだ。


「もうそろそろ来てもいい頃だけど……。ディノス、遅いな……」


「すまない、待たせたな、ラテア。準備に少し手間取った」


 集合時間から十五分ほど経って、焦れ始めていたところ、騎士服姿の男性が声をかけてくる。

 その騎士服は上下真っ黒で、髪も肩まである漆黒の長髪。見たことのない人だった。


「……?」


「俺だよ。ディノスだ。あれ、今まで素顔を見せたこと、なかったっけ?」


「ええぇっ、ディノス!?!」


 僕はびっくりして声を上げてしまった。

 なんだかイメージとかなり違う。謁見の時の全身甲冑からして、もっといかつい感じの容貌を想像していたのに。


「……かっ……かっ……」


「か?」


「かっこいい……!」


「……へ?」


「……すごい! めちゃくちゃかっこいいじゃない、ディノス! こんなイケメンだったの!?」


 思わずはしゃいで彼の背中をバンバンと叩いてしまった。

 いや、本当に。男の僕でも惚れ惚れするようなかっこよさだ。

 精悍な顔立ち、目元の彫は深めで鼻は高くて。あと、魔族だからなのか、耳がちょっと尖っている。

 でも、決して恐い感じの顔ではなく、むしろ美形寄りで、優しげな表情はさわやかな印象すら抱かせる。


(体格もマッチョになりすぎず、それでいて筋肉はちゃんとついてて、背も高いし……。僕が目指す『理想の男』って感じだなあ……)


「はー、いいなあ……。僕もディノスみたいな男になりたかったよ……」


「い、いや、なりたかったってどういうことだ? そりゃ、お前に褒められて悪い気はしないが……」


 顔を赤らめながら困惑気味に首をかしげるディノス。

 おっと、いけない。今の僕はサキュバスなんだった。

 「まあまあ、気にしないで」と適当にごまかして、彼を国境沿いの村へと案内することにした。



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