01.転生先がサキュバスで
強くなりたい。
だいたい皆そんなことを考えるんじゃないだろうか。僕くらいの年齢だと。
強くてかっこいい男になりたい。
強くて、クールで、誰にも媚びることがなくて、けれど皆から一目置かれる、そんなヤツになりたい。そう思ってた。
特に僕は童顔で、女に間違われることも多かったから、そう見られたくないと必死だった。
できることは何でもやった。
毎日の筋トレ、それが終わったらプロテイン。
柔術の道場にも通ったし、学校にいる時も制服の下にリストウェイト、つまり重りをずっとつけていた。
でも、どれも全然効果がなかった。
リストウェイトは、そもそもそれ自体が無意味だったらしい。
プロテインと筋トレも、僕は生まれつき消化吸収率が悪いらしくて、太らない代わりにほとんど筋肉がつかなかった。
格闘技も、基礎体力がなければどうにもならない。スタミナがなくて、いつもすぐにバテてしまっていた。
道場の人はみんないい人たちで、自分のペースでやればいいと温かい目で見てくれて、それだけは本当にありがたかった。
けど、成果が出てこないのは辛かった。
時々、もうやめてしまえばいいと、あきらめの言葉が脳裏をよぎる。
それでも、ついこの前中学を卒業したばかり。もう少し身体が成長したら、何か変わるかもしれない。
だから、あとちょっとだけ続けてみよう。そうやってなんとか自分を奮い立たせて、また頑張って。ここ一年はずっとその繰り返しだった。
そんなある日のことだった。僕の人生が一変してしまったのは。
前触れもなく、その出来事は起こった。
出来事……というのは、ちょっと違うかもしれない。起きたらおかしなことになっていた、みたいな。
……多分、これを聞いたら、なんで? と誰もが思うだろう。
強さとは無関係の、むしろ正反対のアクシデント。
でも、そうなってしまったのだから仕方ない。
僕の魂は、異世界のサキュバスに憑依して……要するに、僕はサキュバスになってしまったのだ。
男なのに。
……いやほんと、なんで?