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しずくのいちご牛乳  作者: ぷらぷらぷらす
9/55

第09話 あいり

1時間目と2時間目の間


今日は、しずくの様子が何かおかしい。

何かを気にして、キョロキョロと周りを見回している。

その挙動不審な様子に、親友としての 女の勘 がピピーンとはしった。


(これは、何かあるな……)


しずくは自分では気づいてないだろうけど、何かを隠そうとしているとき、必ずこういう仕草をするんだよね。


私は、休み時間にしずくの机の隅から、その様子をじっと観察していた。


すると、しずくが そっと水筒を取り出した。


(……あれ? そんなの、今まで持ってたっけ?)


いつものしずくなら、ペットボトルの麦茶とか、せいぜいコンビニで買ったジュースくらいしか飲まない。

でも、今手にしているのは スリムで丸みのある可愛らしい水筒。


しかも、透明な容器から 乳白色の薄いピンクの飲み物 が透けて見えている。

よく見ると、水滴のモチーフが細かくあしらわれていて、しずくにぴったりなデザイン。


(ふーん……これはプレゼントっぽいな。)


その証拠に、しずくが水筒を手に取ったときの顔が 妙に嬉しそうだった。

まるで 大事な宝物 みたいに、大事そうに撫でたり、そっと微笑んだりしてる。


(……うわ、なにそれ……めっちゃ可愛い。)


思わず声に出しそうになったけど、なんとか堪えた。


でも、やっぱり気になる。


(誰からもらったんだろう……)


そして、もっと気になるのは なぜ、しずくはそれを隠そうとしているのか ってこと。

嬉しいなら、普通に堂々と飲めばいいのに。


(……これは、探るしかないね。)



---


お昼休み、しずくは、またこそこそと周りを確認しながら、水筒を取り出した。

飲み物を口に運ぶときも、妙に慎重で、周りにバレないようにしているのが明らかだった。


(やっぱり変だよ、しずく……)


そして、飲んだ後—— しずくが、幸せそうに微笑んだ。


(……え、ちょっと待って。)


ただの飲み物で、あんなに幸せそうになるって、やっぱりおかしい。

しかも 水筒を抱え込むようにしてるし。


(これは……ただのジュースじゃないな。)


私は、もう ほぼ確信していた。

あれは プレゼントで、しかも特別な人からのもの。


(つまり……ゆうくん、だよね?)



---


しずくに直撃!


これは探るしかない!

私は さりげなさを装いながら しずくに近づいた。


「しずくー、何飲んでんのー?」


しずくが ビクッと して、こっちを向いた。

……って、え!?


(ちょ、ちょっと慌てすぎじゃない?)


まるで 証拠を隠そうとする犯人 みたいに 慌てて飲み干そうとしてる……!

しかも 急いで水筒のキャップを閉める手の震え方!


(あー、これは確実にやましいことがありますね。)


しかも、さっきからすごい匂いがするんだけど……!?


(……え、何この匂い……甘いのか酸っぱいのか……なんか、発酵したみたいな……?)


私はちょっと顔をしかめながら、水筒に視線を移した。


「んー、言いにくいんだけど、特製ドリンクだよ。」


しずくが 口元を隠しながら、ぎこちなく答えた。

その様子がさらに怪しい。


「えー、特製のドリンク? だからこんな変なにおいしてんの?」


私はちょっと驚きながらも、じっとしずくの顔を見つめた。

すると、しずくは焦ったように、ぎこちなく笑った。


「うん、ちょっと変わった味と匂いなんだ。」


(うわー……完全に誤魔化してるじゃん……。)


ここまで隠そうとするなら、もう確定だね。

これは ゆうくんからのプレゼント。


私はニヤリとしながら、水筒に視線を移す。


「でもその水筒いいね。でもなんか珍しい色してるね。」


しずくの目が 一瞬泳ぐ。


「あ、うん、ちょっと……色々な成分が入っててね……。」


(あー、やっぱり焦ってる。かわいいなぁ。)


さらに 追い討ち!


「ねえ、しずく、それちょっと気になるなぁ。変わった味って言ってたけど、ちょっとだけ味見させてよ!」


しずくの顔が 一気に固まる。

この反応は 決定的証拠 だね。


「えっと、実は……これ、ちょっと……まあ、あんまり普通の味じゃないから、あんまりおすすめできないんだよね。」


(ほらきた!)


私はしずくを少しからかいたくなって、わざとらしく笑いながら言った。


「そうなの? でも、味見したらわかるかも!しずく、いつも変わったもの食べてるしさ!」


しずくは明らかに焦っている。


(もう、可愛いなぁ……)


すると、しずくが 思い切ったように言った。


「実はこれもらったものなんだ。だから、その人の気持ちを考えたら、誰かにあげちゃうのはちがうかなって。あはは。」


その言葉を聞いて、私は 確信した。


(……やっぱり、ゆうくんじゃん。)


私はしずくの気持ちを汲み取ることにした。


「もらったものなんだ。うーん、ならその気持ちは、わかるかな!ごめんね。無理を言っちゃって。」


私は しずくの気持ちを理解したよ、って伝えるように、優しく微笑んだ。

そしてわざとらしく軽く手を振りながら、教室を出ていくふりをする。


でも——


(……まぁ、このまま終わらせるつもりはないけどね。)


私は そのまま振り返らずに、次のターゲットへ向かった。


(……よし、ゆうくんに直接聞いちゃおう!)


挿絵(By みてみん)

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