表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しずくのいちご牛乳  作者: ぷらぷらぷらす
8/55

第08話 プレゼント

「しずく、この前、初級に昇格して頑張ったから、プレゼントだよ。」


ゆうくんが机の上に置いたのは、スリムで丸みのある円柱型の水筒だった。

細めのデザインで、しずくの手にも馴染む持ちやすい形。

透明なボトルの中には、乳白色の薄いピンクの液体——いちご牛乳 がすでに入っている。


水滴のモチーフが細かくあしらわれていて、どこか可愛らしい。


「かわいい水筒だね。本当に良いの?」


しずくは指でボトルの表面をなぞりながら、嬉しそうに問いかける。


「うん。すごくしずくは頑張ってるからね。これでいつでもどこでも、飲みたい時にいちご牛乳が飲めるよ。」


「ええ、そんなにいちご牛乳が飲みたい時ってないよ。しかも、最近は毎日飲んでるから、大丈夫だよ。」


しずくはくすっと笑いながら言ったが、ゆうくんはニコリと微笑んで——。


「せっかくだし、明日はこれを学校に持っていって、教室で全部飲んできてね。」


「——ええっ!?」


学校で飲むの……?


思わず驚いたが、ゆうくんからのプレゼントだということもあり、嬉しさと戸惑いが入り混じったまま帰宅した。



---


翌朝、冷静になって気づく問題点


朝、カバンに入れた水筒を眺めながら、しずくはふと考える。


(待って……これ、学校で飲むのって、結構問題あるかも。)


1. 透明の容器 だから、中身が丸見え。誰かに見られたら困る。



2. キャップを開けたら、あの強烈な匂いが広がる。周りに気づかれる可能性大。



3. 「何飲んでるの?」 って聞かれたら、どう答えればいいのかわからない。



4. 男の子からもらったもの というのが、なんだか恥ずかしい。



5. 何より……ゆうくんと私は同じクラスだから、飲まないわけにはいかない。




「うぅ……ゆうくんは、なんでこんな恥ずかしいことを……。」


でも、いちご牛乳を飲むのは別におかしいことではない。

ただ単に 自分が意識しすぎているだけ な気もする。


(堂々としていれば、何も思われない……かも?)


しずくは自分に言い聞かせながら、水筒をカバンにしまった。



---


1時間目と2時間目の間


休み時間。


しずくは机の陰にそっと隠れながら、水筒を取り出した。

周りはおしゃべりに夢中になっていて、今なら誰にも気づかれずに飲める……かも。


「……ちょっとだけ飲もう。」


キャップを開けた瞬間——


ふわっ……と広がる、いちご牛乳の独特な香り。


「うっ……!」


しずくは思わず固まった。


(ちょ、ちょっと匂い強いかも……!)


慌ててキャップを閉め、キョロキョロと周囲を確認。


(……だ、大丈夫。次の休み時間にもう一回挑戦しよう。)


結局、しずくはいちご牛乳を一口も飲めないまま、次の授業へ。



---


お昼休み


(ど、どうしよう……お昼ご飯の時に飲むしかないよね……。)


しずくはそわそわしながらカバンの中の水筒を確認する。

キャップを開け、コップに注ぎ——ごくん、と飲む。


その瞬間、視線を感じて顔を上げると——


「っ……!!」


ゆうくんが、じっとこちらを見ていた。


顔が一瞬で真っ赤になる。


心臓がドキドキして、急に胸が締め付けられるような感覚に襲われた。


でも、昔から——

ゆうくんが見守っていると、不思議と安心する。


学校ではあまり話さないけれど、家では一緒にいる。

クラスの中では不干渉だけど、いちご牛乳を通じてつながっている。


そんな距離感が心地よいのか、

それとも——


「……もう、考えてもわかんないよ。」


しずくはゆうくんから目をそらし、そっとコップを口元に運んだ。



---


「しずくー、何飲んでんのー?」


「……っ!?」


親友・あいりの声に驚き、しずくは いちご牛乳を吹き出しそうになったが、必死で飲み込む。

そして、水筒のキャップをすばやく閉める。


(ああ、もう……焦った!)


いちご牛乳の後は 口の中に異臭が残る。

喋ると バレる。


しずくは口元を隠しつつ、下向きに喋る。


「んー、言いにくいんだけど、特製ドリンクだよ。」


「えー、特製のドリンク?だからこんな変なにおいしてんの?」


(やばい……バレる!?)


「うん、ちょっと変わった味と匂いなんだ。」

そう言って、にっこりと笑う。


「でも、その水筒いいね。でも、中身はなんか珍しい色してるね。」


「あ、うん、ちょっと……色々な成分が入っててね。」


(あいりには内緒にしておかないと……!)


「ねえ、しずく、それちょっと気になるなぁ。変わった味って言ってたけど、ちょっとだけ味見させてよ!」


(ダメだ……どうしよう!?)


しずくは焦りながら、なんとかごまかそうと、ぎこちなく笑う。


「実はこれもらったものなんだ。だから、その人の気持ちを考えたら、誰かにあげちゃうのはちがうかなって。あはは。変なこと言ってごめんね。」


あいりは一瞬驚いたが、納得したように微笑む。


「もらったものなんだ。うーん、ならその気持ちは、わかるかな! ごめんね。無理を言っちゃって。」


しずくは心の中で (……セーフ!!) と思いながら、

再び こそこそといちご牛乳を飲み始めるのだった。



挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ