第51話 最終試練07
——そう言えば、私は極限いちご牛乳を飲んだ
理由は——なんだっけ?
ゆうくんの夢。
世界一のいちご牛乳を作って、
一番大好きな女の子に「美味しかったよ」って喜んでもらうこと。
—— 「大好きだよ」
彼のその言葉に、私は応えたかった。
だから 私も「大好きだよ」って言いたくて、極限いちご牛乳を飲んだんだ。
幸せだった。
ああ、こんなにも満たされてる。
こんなにも愛されてる。
ただ 漂うように、しばらくその幸福に浸っていた。
……でも、なんだろう。
胸の奥に、ほんの小さな違和感が生まれる。
それは、どこか寂しさに似たものだった。
これで、本当にいいの?
さっきまでの 満たされた感覚 はそのままなのに、
なぜか 心のどこかが、ぽっかりと空いたような気がする。
私、ゆうくんの夢を叶えたかったはず。
彼の「大好き」に応えたかった。
そのために、ここまで来た。
でも——
これって、私が本当に望んでいたことなの?
私がいちご牛乳を飲むたび、ゆうくんは笑ってくれた。
私が「美味しい」って言うたび、ゆうくんは嬉しそうにしていた。
—— 今、ゆうくんはどうしてるんだろう?
この白い世界にいて、
彼の顔が見えない。
その瞬間、背筋が冷たくなった。
心臓の鼓動が、ほんの少し速くなる。
—— もしかして、ゆうくんは、私が消えたことを悲しんでるんじゃない?
だって、ゆうくんは言ってた。
「しずくに、美味しかったよって言ってもらいたい」
—— 私は、まだ言えてない。
「美味しかったよ」って、伝えてない。
「ありがとう」って、言えてない。
もし私がこのままいなくなったら?
ゆうくんの夢は、叶わないままになってしまう。
そんなの—— 嫌だ。
私は、ゆうくんのいちご牛乳が好き。
ゆうくんの夢が、私の夢になった。
だから、最後までやり遂げたい。
—— 私は、まだ終われない。
白い世界が、ざわめき始める。
「……戻らなきゃ。」
そして、私は 決意する。