第46話 最終試練02
しずくの覚悟を感じたゆうくんは、しばらく沈黙したまま、何かを考えるように目を伏せた。それから、ゆっくりと顔を上げて、真剣な眼差しでしずくを見つめる。
「……そっか。」
その一言が、しずくの胸を高鳴らせる。ゆうくんの心が、少しずつ開かれていくのを感じる。
ゆうくんは少しだけ言葉を詰まらせたあと、再び口を開いた。
「……まだあるよ。」
しずくは、彼の言葉の先を急ぐように、じっと見つめる。その目に、揺るがぬ決意が込められているのを感じた。
「僕の思いを全部受け入れたら……今度は、しずくの番なんだ。」
しずくはその言葉に驚き、目を見開く。
「……私の番?」
「そう。」ゆうくんは穏やかな微笑みを浮かべ、しずくの顔をじっと見つめた。
「しずくが僕の思いを受け止めれば受け止めるほど、また僕の思いが反応する。そして、しずくは僕の思いを受けて――その繰り返しの中で、どんどんしずくは幸せになっていくんだ。愛の連鎖だから、幸せの絶頂というやつだね。」
しずくの胸が高鳴る。彼の言葉が心に深く響き、まるで甘く深い沼に引き込まれるような感覚が広がった。
「でもね……」
ゆうくんは少しだけ視線をそらし、言葉を選ぶように息を整える。その様子に、しずくは不安と期待が入り混じった気持ちを抱えながら、じっと彼を見つめた。
「……うん、強すぎる幸福感や興奮を受け続けると、体が耐えられなくなって……最悪、命を落としちゃうことがあるんだ。」
その言葉に、しずくの瞳が驚き、少し震えた。
「えっ……?」
「だからね、しずくが僕の思いを全部受け入れたら、今度は僕もどんどんしずくに応えたくなって……そうすると、しずくも幸せになって……その繰り返しで、お互いの気持ちがどんどん高まっていくんだけど……。」
ゆうくんはそのまま、しずくの頬にそっと手を触れ、真剣な眼差しを向ける。しずくは息を呑み、彼の言葉が胸に重く響く。
「……そ、それって……?」
「簡単に言うと、思いが強すぎて、幸せすぎて……限界を超えちゃうんだよ。」
しずくはその言葉を胸に受け止めながら、しばらく黙って考える。その間、時間が止まったように感じられた。でも、心の奥から湧き上がる気持ちが、だんだんと固まっていくのを感じる。
やがて、しずくは目をしっかりと見開き、ゆうくんをまっすぐに見つめた。
「……大丈夫だよ、ゆうくん。」
彼の手をぎゅっと握りしめる。指先に伝わる温もりが、確かな絆を感じさせる。
「私、もうゆうくんなしじゃ生きられないんだから。」
その言葉を聞いたゆうくんの表情が、一瞬だけ揺れた。彼は何かを言おうとしたが、言葉が詰まったようだった。しずくはその気持ちをしっかりと受け止めて、彼を見守った。
「しずく……」
その声は優しく、どこか切なげだった。