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しずくのいちご牛乳  作者: ぷらぷらぷらす
43/55

第43話 しずくの夢

「えー、愛理、髪切っちゃったの?」


「うーん、ベタなんだけど、そりゃ失恋したからさぁ。やっぱ、気分変えないとさ。」


愛理は、耳までのショートカットにした髪を振りながら、にっこりと笑う。彼女の笑顔を見て、しずくは心の中で思う。愛理らしいな、どんな時でも明るく元気にいるから、周りも元気になる。


「でも、ショートの愛理、とても可愛いよ。」


それが魅力を引き立てている気がした。愛理はどこかほっとするような、可愛らしさを持っているから。


周りの女の子たちが「ええ、どうしたのー。」って、キャーキャーワーワーと、聞いてくる。


愛理は、あっけらかんと「私、失恋しちゃってさぁ。」なんて軽く言って、またみんなの中心になっている。


「ええ、誰と?」と、女子たちの話題はどんどん盛り上がっていく。愛理の周りに集まる笑い声に、しずくは少しだけ寂しい気持ちを抱えつつ、それでもほっとした気持ちが広がっていく。


しずくは、ふと思う。もしも、私がゆうくんに振られたら…もう立ち直れないかもしれないって、本気で思うからだ。


愛理の告白のことを思い出す。あんな風に思いを伝えられるのって、すごいことだよなと、しずくは自分に自信が持てずにいる。


愛理のように、あんな風に素直に気持ちを伝えられる日が来るのかな。


そんなことを考えながら、いちご牛乳のキャンディーをなめつつ、しばらくぼんやりとしていたけれど、すぐに愛理が戻ってきた。



---


「ところでさ、花恋さん、海外に行ってしばらく帰ってこないらしいよ。」


へぇ、そうなんだと、しずくは思った。花恋は、相変わらず自分の夢に向かって進んでるんだなと、少しだけ羨ましくも思う。


「結局、ゆうくんの作った初めてのいちご牛乳の謎は解けなかったなぁ。」


「ああ、そう言えば言ってたね。」


「でてきたのが普通のいちご牛乳だもんね。」


「たぶん、花恋さんの中での、ゆうくんの思いが詰まったいちご牛乳だったんだろうね。とはいえ、さみしくなるね。」


「うん、あの人、プロのピアニストらしく、海外コンサートやるんだって。なんか小さいころからの自分の夢をかなえた人って感じだなぁ。」


しずくの中で、ふと疑問が湧く。ゆうくんのことは、いいのかな。


あまり考えないようにしようと思っていたけれど、こんな時にどうしても気になってしまう。


愛理はその気持ちに気づくことなく、明るく話を続ける。


「私も自分の夢叶えてぇ。私の小さい頃の夢は、イケメン王子のお姫様になることだったな。しずくはどんな夢だったの?」


「え?自分の夢か。なんだろ、ゆうくんのいちご牛乳マイスターになることかな。」


「いや、それもうなってんじゃん。ちっちゃい頃の夢だよ。」


「あー、なんだろう。思い出せないな。ゆうくんのお嫁さんになることだったかな。」


しずくは照れくさそうに微笑みながら言ったけれど、何だか心の中にひっかかるものを感じる。


ゆうくんと一緒にいれたら、それで良かったし。


うーん、でもお嫁さんになる夢じゃなかった気がする。いや、それも夢は夢なんだけど…。


「くぅー、幼馴染ありがちのやつだわ。はやく、恋人同士になりなよ。雰囲気はほぼ恋人同士と変わらないよ。はやくキスしな。キスキスキスキス。もしかしてもうしてるかキス。」


「そんな、キスなんてしてないよ!」

愛理は驚きながらも、楽しそうに笑う。


「え?キスもしてないの?何年一緒にいるんだよ。」

しずくは少し照れながら、強く言い返した。


「子供の時ぐらいしか、手だってつないだことないよ!」


「え?ピュアな関係すぎる?びっくりした。天然記念物だわ。あんなにいちご牛乳で、思いがつながってますっていうのに、手はつながってないとか。」


うう、愛理。からかってきてるな。


「なら、愛理はキスしたことあるの?」


愛理は少し焦ったような顔をして、すぐに答えた。


「えっ?キ、キスでしょ、あるよ。そりゃあるよー。」


「その時、キスはどうだったの?」


「え?そ、そうね。なんか、相手の顔が近づいてきて、心臓の音が大きくなって、手も震えちゃう。唇がちょっと触れた瞬間、ちょっと甘い感じがして、目を閉じてもう何も考えられない、あなただけみたいな。その後にふわっと甘い香りが広がって、私まるで夢の中みたいな気持ちよ。」


「なんか、私その少女漫画みたことある気がする。」


「そ、そんなことないよ。へぇ、その少女漫画は、描写リアルなんだぁ。」


愛理は苦しそうに言っているけど、しずくはクスッと笑った。


しずく「わかったよ、信じてあげる。」


愛理は顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに笑った。



挿絵(By みてみん)

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