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霹靂。雨吹き。

決行は明々後日、今日から言えば明後日ということにして、昨日は蒼ちゃんと別れた。結局二人だったなと思いながら、僕は今日も、部室に足を運ぶ。もしかしたら、蒼ちゃんに気を利かせたのかもしれないと、半ばうぬぼれ気味の思考を抱いた。今更だけど、なんか僕、やけにもててるなぁ……。モテ期、あるのかも知れなかった。あるとしたら、僕はもう二度と誰かに好かれることはなさそうだ。使うにしたってそんな一気に使い果たす事もないだろうに。天の采配は絶対におかしかった。

それはそうと、それにしたって、この日の天気は最悪だった。

少し先さえ満足に見通せない程に、細かい霧雨が降っている。その様子だと、むしろ吹いていると形容した方が正しい気すらした。一滴ずつの小ささ故に音も立てず連続して窓にぶつかる雨を眺めながら、明日のことを考える。蒼ちゃんの意志。尊重したいものではあるが、しかし、僕の行動理由には程遠い。僕は自分の為に動くし、自分の為にしか動く気になれなかった。絶対に、行かせない。そう決めたからには、完膚なきまでに、計画の根から、学校側の意識から、変え尽くしてやる。崩壊はお家芸である。

望んだ明日を迎えられない世界で、ひたすら生きる理由はあるのだろうか。何を思って、蒼ちゃんは留学を決意したのだろうか。そこに彼女の意思は、初めから存在しなかったのだろうか。結果が決行とはいえ、留学の話を最終的に締結させたのは、他でも無い蒼ちゃんだろう。いくら周りから圧力をかけられたからとはいえ、本人が断固として拒否するのであれば、そう簡単に留学の話なんて、決まるわけが無かった。どこかで諦めたのか。どこで諦めたのか。

「縋ったんです」

「縋った?」

いつの間にか、実験室には蒼ちゃんの姿があった。僕の悪い癖だ。考え込むと、周りが見えない。

「はい。だって、先輩なら、私が留学すると聞いたら止めようとするでしょう?」

「まぁ、全くその通りだけど」

「そんな希望的観測にすがったんですよ、私は」

「ふぅん」

なるほど、頷く。僕の性格を、悪い言い方を敢えてすれば利用して、蒼ちゃんはこの話を潰すつもりだったと。

「嘘だね」

「え?」

「嘘だろ。蒼ちゃんが初めから僕を頼ろうとなんて、するわけ無いじゃないか。周りに迷惑をかけるのを、ほとんど一番のように嫌うだろ、君は」

「……」

お見通しですか、と。蒼ちゃんは窓の外に目を向けた。依然、雨は吹き続けている。止む気配は、微塵も無かった。

となれば、とすれば。本来の答えはどうなんだろう。

「決まってるじゃないですか」

蒼ちゃんは言った。苦笑気味に。いや、そのまんま、嘲笑を浮かべて。自分に対する、嘲笑を。

「逃げたんですよ、圧力ってやつから」

教師や、周りの評価に、抗いきる自信が無くて。

「いっぱい、大事なものはあります。友達だっているし、家族だっているし、何より、研究部。先輩から離れるなんて、とてもじゃないけど耐えきる自信は、それこそ、無いです。けど、それを自分で守りきる自信が、私には無かった。ああ、奪われるんだ、なくなっちゃうんだって、諦めてたんですよ」

今度こそ、なるほど、と思う。兆候はあった。不当に低い彼女の自己評価やら、意外に高かった僕への評価。たまに見せる自虐的な表情だとか、そのほかにも、色々。全部、ここに繋がっていたのか。だとすれば、僕はいくつの伏線を見落としてきたのか。もっと早い段階で押し止めることは、間違いなく出来たのだろう。ただ、気付かなかっただけで。

「縋ればよかったのに、なんて言ったら、泣く?」

「泣きますね、絶対。それが出来れば苦労は無いんですよ! って」

「だろうね。じゃあ言わないよ。難儀な性格だよ、君は」

「先輩もですけどね」

「まぁ、さ」

一区切りして、変わること無い結論を。

「僕が潰すから、問題ねぇよ」

どのタイミングであろうが。それが前日であろうが、当日であろうが。あるいは、もう、飛行機が飛び立った後であろうが。絶対に、僕が潰す。僕が悔やむべくは、今までそれに気付かなかった事。蒼ちゃんに、誰にも気付かないくらい深い悲しみを与えてしまっていたこと。それをするには、僕という存在が朝過ぎたわけだけど。

「おっけ、分かった。全部分かった。君がなんて言ったって、僕は潰すよ。これまでの我慢が無駄になるじゃないかって、そんなこと百も承知の上で、ぶち壊すよ」

「嫌な性格してますね、相変わらず」

「見損なった?」

「見損ない果ててますよ、だったらとっくに。言ったでしょ、先輩」

「聞いたかなぁ後輩」

「言いました。好きですって、先輩に」

「聞いたきがするよ、後輩」

さて、これで。後腐れは無しだ。本気の本気で、崩壊にかかろう。母校にまで手をかけるなんて、まったく、僕は心底世界に嫌われ切っているらしい。

こんなにもててるんだから、仕方ないか。

なんて。

とんでも久々に更新です。まさかここまで遅れるとは思ってませんでした。お待ちしてくれている方がもしいらっしゃれば、それはもうとんでもなくごめんなさい。と、ありがとうございます。

合間に短編書いていたりもして。


では、感想評価等頂ければ幸いです。

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