怒号。再来。
落語で言うなら、天丼。同じネタを二度やることを指すのだけれど、ああ、ちょっと違うか。
これをネタと表するようになったんだったら、僕はもう死んだ方がいい。目標なんておこがましいにもほどがある。
じゃあ何か。簡単な話だ。ネタじゃない、これは、事件。
馬鹿馬鹿しい、そう吐き捨てたいくらいの、馬鹿馬鹿しい事件。僕の不注意にして、クズの再来。
缶ジュースを二本適当に見繕って戻ると、緑の姿が無かった。あれ? と思い、辺りを適当に見回してみる。やはりいない。トイレだろうか、などと楽観していた僕はこの時点でかなりの愚か者だった。
十分程待って、流石におかしいと気付きはじめた。いくら女性だからって(失礼な意見だが)トイレに十分超もかかるはずが無い。と思う。化粧云々の可能性はあれど、でも、緑は全然化粧なんてしていないように見えた。というか研究部にそんな今時な普通の女の子がいるとは到底思えない(これも失礼な意見だが)。そもそも、研究部面々は自覚はなさそうだが、皆一様に化粧の必要も無いほどに美人なのだ。可愛いとも形容できる。
さて、いよいよ良くない気配が漂ってきた。とにかく落ち着いて、まずは携帯電話で緑の電話帳を呼び出す。Now callingの文字が躍って、数秒。数十秒。……駄目か。呼び出し音が十回を超えたところで、僕はコールを止めた。
どうにもまずい予感がする。もしくはひょっこり帰ってきて「ごめんっ」なんて笑いかけてくる可能性も完全否定は出来ないが、でも、なんだか嫌な予感ばかりが僕の脳を駆け巡る。
考えてみる。もう彼女を見失ってから十分以上経ってるわけで、僕は楽観していた自分呪った。あの直後に異変を察して動いておけば、離れていたとは言え所詮缶ジュース二本を購入する程度の時間。そう遠くには行っていなかったはずだ。でも、それはもう遅い。十分あれば、もしかしなくとも相当の距離をあけられているだろう。と、そこまで思って、違和感に気付く。
缶ジュースを二本、購入する程度の時間しか経ってないのだ。時間にしておよそ一分弱。何か事件に、いや、もう推測はいいだろう、はっきり言おう。『誰かに無理やり連れ去られて』いたにして、でも、一分弱で最初の問答が終わるとは思えない。相当に暴力的な相手か、または、最初から計画的に彼女を狙った犯行……。そういえば。緑には、赤坂家には狙われる理由があったっけか。ああくそ、これも僕の落ち度だ。
チート感は否めないが、仕方あるまい、ここはまたすぅちゃんに頼ろう。全く、情けないなぁ僕は。
二回の呼び出し音の後、回線が繋がる音。
『もしもし、あらくん?』
「ああ、すぅちゃん? 頼みたい事があるんだけど」
僕の言葉に、すぅちゃんは大げさにため息をつく。
『また誰かさんのためなんだおうね、あらくんの事だし。全く、妬むにも嫉むにも馬鹿らしくてやんなっちゃう。それで、今回は何を調べればいいのかな?』
「うん、ゴメンすぅちゃん。一つ何でも聞くから、あ、僕の出来る範囲でな、頼む。緑の携帯の現在位置を確認してほしいんだ。電源は切られてないみたいだから」
『おっけー。……ん、出たよ』
相変わらず仕事が早い。メールで送るから、じゃあね、とすぅちゃんは続け、電話は切れた。直後、表示されるメールの受信画面。添付されていたファイルを開くと、自動的にGPSが立ち上げられ、僕の現在地から少しずれた所に、赤い点が表示された。このショッピングモールからほど近い、隣のビルとの間の路地裏。予想通り、誘拐の線で正しそうだった。でも、ならばなんでそんなところで止まっているのだろう。ここでようやく予感の正体に気付く。まさかとは思うけど、襲われてたりしないよね、緑。勿論、性的な意味で。――――打倒に考えると、その線が一番濃かった。
ヤバイって。
携帯を乱暴にポケットに突っ込み、僕はエレベーターを待つ時間も惜しんで階段を駆け降りた。どこの誰だか知らないが、緑に手ぇ出したらただじゃおかない。
ぶっ殺してやる。
きっと顕正はデートをするたびに厄介事が起きるのです。美少女五人も抱えこんでるバツですねきっと(笑)
今回は短かったですが、楽しんで頂けたようなら光栄です。楽しんで頂けなかったようなら……はい、すいません。
では、感想評価等頂けると嬉しいです。




