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獣魔召喚

 

 その後、俺はすぐに家に帰ることにした。1匹だからなんとかなったけど、あんなのが何匹もいるかもしれない場所になんて長居したくない。

 家に戻り、リビングで一息つく。あー麦茶がおいしい、でも暑い。こんなに早く戻るならクーラーつけっぱにしとけば良かったかも。

 一息ついたことで、考える余裕が出てきた。ゴブリンが出たあの辺りは山の入り口にあたり、民家も近くにはない。すぐには人が被害にあうことはないと思う。でもそれは、ゴブリンが増えるまでの話。


『グギャグギャはすぐ増えるからなー』


『ワオーンに食われても、気づいたらまたうじゃうじゃしてるし』


『めんどうなやつら』


 サクラ達からの評価はさんざんだが、それはそのままゴブリンの繫殖力の高さを物語っている。さすがに今日明日でどうこうなるもんでもないだろうが、近いうちになんとかする必要がある。

 気が重い。化け物とはいえ、生き物が火に巻かれて死んでいく様なかなかに衝撃的だった。そして考える。もし俺があの時一人だったらどうなっていただろうと。たぶん、何もできずに殺されていただろう。例え何か特別な力を持っていたとしても、あの時俺は気が動転して何もできなかった。サクラ達がいたからこそ、俺は無事だったんだ。手に入れたのが召喚で良かった。

 暗い事ばかり考えていても仕方ない。何とはなしにテレビをつけてみる。やっていたのはニュースで、どこそこの公園のひまわりを紹介していた。平和だなあ。


『次のニュースです。昨日、日本時間の午後1時ごろ、世界中の人々が不思議な声を聞いたと証言しており。何万という人々が、同じ時間に同じ言葉を聞いたそうです。中には超能力を授かったと自称する人もいます。一部では神の啓示だとする意見も―――』


 一気に現実に引き戻された気分だ。昨日の午後一時。俺が声を聞いたのも、確かそのぐらいの時間だ。あの声を聞いたのは、どうやら俺だけじゃなかったらしい。まあただの高校生1人に世界の選択云々みたいなこと言わないか。


 ちょっと気が楽になった。最悪、頼る相手がいるかもしれない。となると、あのゴブリンもわざわざ俺が相手にしなくても……

 いや、あれは俺がやるべきだろう。


 ゴブリンは繫殖力が強く、すぐに増える。そしてあの周辺に巣があるのはほぼ確実。となるとだ。手遅れになる前に誰かが対処しないといけない。

 最初は警察に通報することも考えた。野犬増えてて危ないとかなんとか適当な理由をつければ、あの辺りを調べてくれるだろう。けどすぐに動いてくれるとは限らないし、何よりゴブリンに普通の物理攻撃が効くのか不明だ。ラノベなんかだと、こういう場合たいてい現代兵器はほとんど役に立たない。

 俺のせいで警察官が何人も死ぬとか、罪悪感で死にそうになる。


 となると、あのゴブリンに対処に動くべき一番の適任は俺だろう。今一番ゴブリンの脅威を知っていて、倒す力があり、夏休み中だから暇。

 何より、俺には明確なメリットもある。ゴブリンを倒せば、レベルが上がる。これから何が起こるかわからないが、レベルは上げといて損はないだろう。


 とはいっても、じゃあ今から行こうとは思えない。帰ってきたばっかりだし、何より巣にはいったい何匹のゴブリンがいるのかもわからない。無策でいって死にましたとか笑えない。


 というわけで、色々準備をしていこう。後休息も。今日は準備に費やして、仕掛けるのは明日からかな。

 ただ問題は、どんな準備をするかだ。ゲームみたいにポーションなんてもの存在しないし、都合よく武器や防具になりそうな物が家にあるなんてこともない。強いて言うなら、修学旅行で買った木刀ぐらいか。あと身につけていけそうな物となると、自転車のヘルメットとかか。とてもじゃないがこんな装備でゴブリンと戦おうとは思えない。


 こうなると俺が取れる手段は1つだけになる。俺ができる準備、それは召喚しかないだろう。

 こんな事がなければ、しばらく召喚はしないつもりだった。何せ俺の召喚には送還できないという欠点がある。となると普段から世話をしないといけないし、家族の目からも隠す必要がある。そして何より俺が心配だったのは、魔力の問題だ。こいつらの主食は魔力だ。というか魔力さえ食べてればいいらしい。しかしその魔力が摂取できないと最悪死んでしまう。

 現状、魔力の供給元は俺だけだ。今は負担が無い程度の量で足りているが、何体もモンスターを抱えると許容量を越えるかもしれない。


 とはいえ、もうそんなことも言っていられない。明確な脅威の存在を知ってしまったし、何より他に効果的な術も無い。なら、多少のリスクは許容すべきだ。

 今回行うのは、獣魔召喚。今まで召喚したモンスター達は、全員後衛向きのステータスをしている。メインウェポンが魔法というか、実質魔法しかない。もし魔法が効かない敵なんかがいたら、詰む。というわけで前衛向きのモンスターを呼び出したい。()魔召喚というくらいだし、()魔召喚や()魔召喚よりは物理に強そうなモンスターが出てくれそうだ。


 ノートに七芒星を書いていく。この点でも俺は獣魔召喚に期待している。五芒星や六芒星よりなんか特別感があって、強いモンスターを召喚できそうな気がする。…七芒星書きにくいな。

 なんとか七芒星を書き終え、血を垂らす。もう三度目になるが、こればかりは何度やってもなれそうにない。

 準備は整った。魔力込め、期待を込めて呼ぶ。


「腕っぷしに自身のあるやつ来てくれ」


 そうして現れたのは、ウサギのようなリスのような小動物。ふさふさとした毛はとても触り心地のよさそう。つぶらな瞳は、どことなく眠そうで、それがさらに愛らしさを感じさせる。モンスターらしい特徴としては、額から淡い緑色の石が生えているくらいか。これは、角なんだろうか。鋭くないうえに、短い。とても前衛で戦えそうには見えない。というか、これじゃあサイズが圧倒的に足りないだろう。なんせ手乗りサイズだ。前にペットショップで見たゴールデンハムスターと同じぐらいしかない。

 まあせっかく呼んだわけだし、戦力は多いにこしたことはない。何よりこのまま放っておくわけにもいかないので、仲間にしてしまおう。というわけで、魔力をあげるから盟約を結んでほしいと伝えたが、ここで予想外の返答が。


『魔力もほしいけど、寝床にちょうどいい宝石がほしい』


 なんだかんだ今回も、スムーズに交渉は進むと思っていた。まあこれは俺の落ち度だ。よくよく考えてみれば、魔力意外のものを欲しがるモンスターだっていてもおかしくない。これまでがたまたま上手くいっていただけだ。

 けれどまさか、宝石を欲しがるとは。しかも寝床にするとなると、されなりに大きな物が必要になるだろう。そんな物持っているはずが……あ。

 棚の中を探す。確かこの変に、しまっていたはずだ。


「あった」


 それは、3センチぐらいの大きさの勾玉。モンスターの額の角と同じく、淡い緑色をしている。


「どうかな。ちょっと大きさが足りないかもしれないけど、枕くらいにはなると思うんだ」


『…十分』


 そうして、新たな盟友は誕生した。もちろん今回も俺が名前をつけた。額の角が緑色だから、ミドリと名付けた。

 _______________

 ミドリ

 クラス:カーバンクル

 LV:2


 HP:F

 MP:E+

 STR:F

 INT:E+

 VIT:F

 MND:E

 DEX:F

 AGI:F-


 スキル

【宝石獣】E▼

【光魔法】E▼

【貫通】E▼

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 _______________

【宝石獣】E

 宝石と一体化することで真の力を発揮する。

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 _______________

【光魔法】E

 光を発生させ、操る

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 _______________

【貫通】E

 魔法に貫通属性を付与することができる。

 貫通属性はあらゆるものを貫くことができる。

 それは例え、魔法や物理影響に対する耐性を持つ者であっても。

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 カーバンクル、確か額に宝石の乗ったUMA的な奴じゃなかったか?創作だと妖精っぽく描かれるイメージ。まあそれはいいとして、強くね?パラメータもスキルも魔法特化。スキルは少ないながらも全てがEランク。特に【貫通】はかなり殺傷能力の高そうなスキルだ。魔法アタッカーとしてかなり頼もしい戦力になりそうだ。

 想定とは違ったけど、これはこれで嬉しい。

 ただ一個気になるのが、【宝石獣】のスキル。これだけ、効果がよくわからない。そこでミドリに実際に見せてもらおうとしたら、いない。俺がステータスに夢中になっている間にどっかいったんだろうか。せっかく渡した勾玉も置いてってるし。


「なあサクラ、ミドリどこいったか知らない?」


『それ』


「?それってどこだ?」


『だからそれ。それの中』


 それの中って。なんかの隙間に入り込んだのか?…いや、待てよ。

 勾玉に顔を近づけてみる。ようく見ると、中に丸っこい影が。


「ミドリ?おーいミドリ」


『…なに。眠いんだけど』


 その本当に眠そうな、少し不機嫌さを含んだ声と共に、ミドリが勾玉からぬっと出てきた。


「いやあ、この【宝石獣】ってスキルを見せてもらおうと思って……」


『これで見せたでしょ。もういい?』


「あ、うん、ありがとう」


『なら魔力ちょうだい。この宝石を身につけて魔力を流してくれればいいから』


 そう言い残すと、ミドリはさっさと勾玉の中に引っ込んでしまった。ちょっと気難しい性格なのかもしれない。ここは十分眠ってもらって機嫌をなおしてもらおう。

 勾玉は紐を通して、首から下げておこうと思う。




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