3.2 太陽が眩しいほど、夜が暗い
「ここが平和神社か...すごそうだね。」
「そりゃそうです。安倍家族の次代当主が担当巫女なので。」
「あぁ...あの人か。」
「それはあとで。黒沢、その地下室はどこ?」
「それはですね...」
義孝が言わなくても、綿と徹は悪戦苦闘を予想できた。
「神社がお祭りで使うものは、この唯一の地下室に置きます。
「防衛システムはいないが、地下室に入るため、チェックポイントを通過すべきで、その答えを知ってるのが担当巫女です。」
「彼女は犯人ではない...だね。」
「はい。」
綿は少し考えたあと、ふと微笑んだ。
「とにかく時間を無駄するより、謎を解けて、早めに地下室に入ろう。」
義孝の案内で、三人は地下室の最初の扉に辿れた。
壁には格子、それと隣のチューブがあった。
「これは五十音の格子で、この五つのチューブはどうする?埋める?」
徹は言いながら、チューブを観察してみた。
「おぉ、じゃあバカ長に任せようかな。」
「冗談すんな、くそ野郎。答えが知ってたか?」
「はぁ...仕方ないね。これだけだけど?」
綿は笑いながら、チューブをアマテラスの穴に埋めたら、扉が開いた。
「天照大神が導きか...黒沢、チェックポイントはいくつある?」
「十個です。」
「十個!もう四時、急がないと!」
三人はすぐ二つ目のチェックポイントに辿り、そこで見つけたのは長さがバラバラな鉄板。
「正しい旋律か...こう?それでもこう?」
綿は気楽に叩いてみたが、扉は開かない。
「キャン、キャン、キャン、コン、キャン、コン、コン、キャン」
「あぁ、朝田、バット貸して。」
義孝はバットを持って、四つ目、六つ目、七つ目の鉄板を叩いた。
扉が開いた。
「朝田が叩く時、違う音がいつくありました。」
「ふふーん、どうやら僕の手柄だな。よし、次!」
すぐ、五時二十分になった。
「これが最後!」
扉が開いたら、三人とも全力でゴールに向けて走った。
ただ、地下室に入った時、予想外な景色が見えていた。
「真田さん、もう二十五分です…。」
不安なやなはステージの方を見て、そこから伝わる声が楽屋に満ちてる。
「頼んではいけないと知っていますが、しかし…君ならきっとできると思います。」
「奈々さん...。」
「また呼んでくれてありがとうございます。どうか...」
やなは小山を見て、何かを思い付いたように、仕方なく微笑んで、頷いた。
五時四十分、地下室の二つのソファには、五人が座ってる。
爽やかに笑ってる男の隣には、向こうの少女を見つめ、不思議な表情をしてる二人の男性。
その少女は自信な笑顔をしているが、側にいた男性は後悔してるように見えた。
「あのう...ひなちゃんさんですよね?」
「うん?おぉ!黒沢義孝くんですよね。そうですが?」
「どうしてそんなに大事なライブを破るのですか?」
「やぶ...る?破っていませんよ。」
「えぇ...?」
ひなちゃんはぐるりと、最初からずっと微笑んでる男を見つめた。
「君が朝田綿ですか?」
「そう。」
一瞬で、何かを思い出したように、ひなちゃんは幸せな笑顔をした。
「ありがとうございます、君たち。」
この頃の綿は、その感謝の意味を知らなかった。
五人がライブに辿り着いた頃はもう七時、丁度ライブも終わった。
ひなちゃんは楽しく会場の後ろに入ったが、残りの四人は前方から入った。
「すみません、光石さんのせいで、迷惑をかけました。」
「いいえ...ところで、ひなちゃんの目的はわかりませんね。」
「それは...」
この時、ライブから出てきたファンたちは、熱く語っていた。
「ひなちゃんだと思ったら、まさかあの人!」
「超ビックリ!来年は一緒かな?」
「いっそ復帰してよ!」
ほぼ全部のファンが、同じ言葉を言っていた
「あの人?まさかよるちゃん?」
義孝の戸惑いに、綿は何も言わず、ただ楽屋に向かって歩き出す。
「真田。」
「朝田さん!」
綿はやなしかいない部屋に入った。
やなは息がまだ荒いが、すぐ立ち上がった。
「久しぶりだけあって、一時間だけでこんなに。」
「知っていました...?」
「ついてこない時点で疑ったが、神社で確信した。
「犯人が冷静過ぎて、隠す場所も普通じゃない、きっと他の目的はあるはずと」
「はい、私も思いました。ひなちゃんは昔からずっとわがままで、賢さもありますが。」
「今回は許してあげてよ。」
「あなたがそういうなら...仕方ありませんね。」
笑いあったあと、綿はやなに休ませようと、部屋から去っていった。
「朝田、それは...」
朝田を探してる義孝はやなの部屋に来たが、予想外な会話を聞いた。
「真田がよるちゃんだってこと。」
「えぇ!ってことは、やなちゃんの復帰がひなちゃんの目的ですか?」
「うん。おそらく。」
「なるほど。しかし朝田,どうやって気付いたの?」
「どうして『ひとよる』なんでしょうね?
「それじゃバランスが足りないんじゃないかな?
「それで思ったんだ、よるちゃんの本名は夜にナをつけて、やなと呼べるんじゃないかなと。
「実際なところ、真田の名前も、夜那って書いているし。」
「すごい...」
「ただ、どうしてそこまでするのかを、未だにわかっていない。」
「わかるかもしれません。」
「うん?黒沢、わかるの?」
「はい。敬愛ですよ。その仲間に、そして、道しるべに。」