2.2 少女として乙女心を持って生きる少年
「知っていましたのか…」
「あなたが…!」
「はい、私が名瀬ホタルです。」
「母親には自転車で旅行すると言ったが、ここに残りましたね。詳しく聞いてくれませんか?」
「はい、よろこんで。」
綿の質問に答えて、ホタルは自分の過去を語り始めた。
「私と兄は三つ子で、一人の妹がいます。
「しかし、その妹は肺の不全のせいで、生まれた直後に亡くなりました。
「それを知った父は、私を女の子に育て、母を安心させようとしました。
「それでも、私の体は男の体ですし、男の器官もあります。
「しかし、神からの贈り物かもしれませんが、私には明らかな喉仏がありません、変声もありません、このまま生きてきました。
「それを知った私と兄は、変わろうとは思いませんし、父が亡くなったあとで尚更です。
「ただし、大学二年生のころ、私が探した仕事、つまり、向こうの予備校は、男性の数学教師しか受け入れないと言いました。
「どうしても行きたいんですが、母の幸せを潰すわけにはいきませんので、兄と交換することを決めました。」
「だからお二人は急に学科を…?」
「はい、数学教師になるためには、数学学科を卒業すべきです。
「毎日、私たちは一緒に出掛け、衣装を交換します。
「夕方に合流して、衣装を戻したあとで一緒に帰り、ほぼ毎日そうしています。
「母も、まだ気付いていないと思います。」
「しかし、先生になってから少し立って、私はある女生徒と付き合うことになりました。
「幸せなはずですが、一ヶ月前、彼女は私が浮気したと疑いました。私と兄と一緒に買い物をしてるところを見たからです。
「買い物ですから、私たちは交換せず、つまり、彼女が見た浮気の相手が私です。
「説明も説得もできず、結局彼女は、私を殺そうと言いました。」
「ヤンデレ…。」
「残念ですが、その通りです。」
ホタルの表情は少しずつ不安になって、肝心なところを語り始めた。
「兄はそれを知ったあと、交換する、つまり彼が教師をやることを決めました。
「私はスタミナが足りませんので、兄の視線範囲で店を経営しています。
「今日の昼、彼はここで食事をして、すぐ終わるよと言いました。
「その…通りですね。」
シクシクと、ホタルは涙を我慢してる。
「じゃあ、あの女生徒は?」
「もうすぐ来ます、彼女は毎日二時くらいで来ます。」
やなは時計を覗き、今は丁度二時過ぎる所。
「すみません...?」
「...いらっしゃいませ。好きな席にどうぞ。」
ホタルは無理に笑顔を出して、女の子の注文をした。
「ありがとうございます。友達との会話を邪魔しましたか?」
「そんなことありません、今知り合ってばっかりです。」
「そうですか。ならよかったです。」
ホタルが料理を用意する時、綿はやなに目線を投げた。
やなもすぐ立ち上がって、女の子に声をかけた。
「こんにちは。真田と申しますが、少し聞いてもいいんでしょうか?」
「聞く...?」
「はい。私たちは警察で、先程店員さんに手がかりを訪ねています。向こうの予備校の殺人件と関しての。」
「そうですか。しかし私は手がかりがありません。」
「そうですか。向こうで通っていますか?」
「はい、数学だけですが。」
「偶然ですね、その被害者があなたの…教師、それとも、彼氏と言うべきでしょうか?」
やなの表情は平然で、まるで公認な事実を語ってるだけのようで。
「彼氏って…一体何ふざけたことを?」
「ふざけた?しかし私たちは彼の机で、二人の写真を見つけましたけど?」
「写真!じゃあ言ってみてくださいよ、どんな写真ですか?」
女の子はやなの嘘に気付いたようで、難しいことを言った。
「それは...」
「それは、海の前で一緒にハートを構えてる写真です。
「そうですよね?警察さん?」
タイミングぴったりに協力してくれたのが、ホタル!
「本当に...一体どこまで知ってるの!」
「全部。」
やなは少し微笑んで、冷たく言った。