1-1 桜の木の笹
爽やかな風に向かって、彼女は微笑んだ。
さっきの終業式から始まった、少女の夏休み。
この二ヶ月間、少女は何をするのだろう?
帰り道を歩いて、少女は突然立ち止まり、隣にある桜の木を見ている。
その上にはたくさん美しい桜の花が咲いてるのに、少女の顔には疑問だらけ。
ずっと背が高くなってるし、太くなってる。
生きてる証が溢れているのに…
「どうしてこの桜の木は、枯れないのでしょう…?」
少女の独り言と同時に、拍手の音が響いた。
そして、拍手してる男も、木の後ろから歩き出した。
男を見た瞬間、少女ははっと息を飲んだ。
それは、彼女が誰よりも恋してる顔。
現役探偵·朝田綿の顔だ。
「日常にでも考えれば、たとえ小さなことだって、立派な結論が出るのかもしれないぞ。」
「あ…ありがとうございます。」
他人から見ればただの説教。
なのに、少女にとって、それは尊い言葉にしかすぎない。
困らない上、自分に感謝する少女を見て、綿は少し微笑んだ。
「この木は本物だ。偽物は花びらの方。」
「偽物ですか!」
「そうだ。」
少女は、アイドルが目の前にいることを忘れ、ただ綿の目線を追って、桜の木を眺めた。
「ここで質問。」
綿はそっと手を伸ばして、桜色の花びらを指差した。
そこにある、土と僅か130センチの距離を持つ小さな枝。
その枝の上に、七夕の笹みたい、結んでる小さな紙があった。
「…わたしもかれみたい、つよいひとになりたい。」
「それは、誰が書いたと思いますか?」
少女の眉はしかめていた。まるで手掛かりが少ないと文句を言ってるような。
「そうそう、十年経ったみたい。」
十年前?
少女はちょっと計算していたが、あの頃の彼女はたった六歳だった。
記憶は参考にならないようだ。
「ダメです。考え出せません。」
「まぁ、君にとってはさすがに無理か。」
「それでは、まだ用事があるので、これで。」
失望したのか、本当に用事があるのか。
とりあえず、綿は急に離れようとした。
綿が離れようとしているのを見た少女は、すぐ駆け出した。
「朝田さん!急に申すわけありませんが、助手になってさせてください!」
「真田さんは本当に、恐れを知らないタイプだな。」
少女が自分の名前を知ってることに、綿は全然驚いていなかった。
一方、少女は不思議に思った。
「なぜ…あなたが…?」
綿は笑いながら、答えを示す制服を指差した。
「まだまだ、ね。」
置いて行かされたくない少女は、勝手に綿について行った。
綿は追い出せず、声もかけなかった。
さっきの優しさと真逆、綿は冷たくなった。
「今はどちらへ向かいますか?
「やはりケースを解決しに…?
「朝田さ…!」
声をかけ続けようとした少女は、綿が立ち止まったせいで止まりました。
「チェックしなければならない論文があるんだ。勝手について来るな。」
「ですが、私はあなたの助手になりたいんです。」
「さっきの問題さえ解けない君が助手?」
綿になめられるように聞かれたが、少女は答えなかった。
さっきは実際、たとえ手掛かりが少ないとはいえ、少女は真面目に考えていなかった。
「明日!」
「うん?」
「明日、もう一度そちらへ来てください。必ず答えを推理してみせます。」
「おぉ?いいだろう。答えを解けるか、それとも実力を見せてくれることができれば、見習い助手になればいい。」
「あぁ…ですが…夏休みの間だけかもしれません…。」
「構わん。じゃあ決まったな。」
自信と心配が混ざって、少女はこの挑戦を受けた。