独りぼっち
この作品を見てくださり、ありがとうございます。
病んでる作者からの、提案。
そんな内容の詩となります。
つまずいていたり。
ちょっと、悩みを持っていたり。
素直になれなかったり。
そんな方にとって、何かのキッカケになったら嬉しいです。
『読んだよ』ということで、評価1点で構いません。
入れていただけると嬉しいです。
また、この先もご縁が繋がりますように。
何故ぼくは、あの手を取らなかったのだろう。
どこまでいっても、何も見えない。
何ひとつ、そこには存在していないかのように。
ぼくは、たった独りでそこに居る。
はじめは、暗闇だって怖くないなんて、虚勢を張って。
独りで居ることは、群れないことだと。
ぼくは、他のひとより強いのだと。
ぼくは、他の誰より秀でているのだと。
ぼくは、特別な存在なのだと自負して……逃げた。
本当は、知っていたのに。
ぼくは、誰よりも弱くて脆くて。
ここに居るって、声を張りたかった。
その一声さえ出ないくらい、ぼくは弱かったことを。
本当のぼくは、知っていたんだ。
そのとき、差し伸べられた手に。
ぼくは、すぐに気づいたんだ。
その手はとても、あたたかくて輝いていて。
飛びつきたくなるほど、それは美しくて。
それなのに、ぼくは手を伸ばせなかった。
ぼくなんかが、キラキラしたその手を取ってはいけない。
ぼくは、誰の目にも留まらない。
ぼくの手は、掴まれることなどない。
暗闇に背を向けて。
光にも手を伸ばせず。
ぼくは、独りぼっちだ。
ざわざわ。
きゃはきゃは。
なにあれ、なにあれ。
誰も居ないはずなのに。
ぼくを見て、嗤う声がやまない。
視線がぼくに向けられている。
いやだ、いやだ、いやだ……。
ぼくは、誰とも群れない。
ぼくは、誰とも相容れない。
誰も、ぼくには近づけない。
誰も、ぼくを理解しない。
誰も、ぼくを必要としない。
誰も、誰も、誰も……。
素直になれない、どこに居ても。
素直になれない、誰と居ても。
素直になれない、いつになっても。
強がって、拒んだその手は消えていた。
ぼくが手を伸ばすのを、待っていたんじゃなかった。
遅すぎた。
光は永遠ではなかった。
助け舟は、いつまでも停泊していない。
気づいたときが、勝機の瞬間。
眩い光を手にしていたなら。
ぼくの心も、救われたのか。
嘆いたところで、もう遅い。
強がったばかりに、見失う。
つよがったばかりに、見誤る。
ぼくは、独りぼっち。
ぼくが招いた、ぼっちの世界。
『次』があったならば。
今度こそぼくは、その手を掴むのに。
今日も暗い、独りぼっち。
何故ぼくは、あの手を取らなかったのだろう。
はじめまして。
あるいは、またお会いできました。
小田虹里です。
今日を一日生きてみて。小田の中に思い浮かんだことを、詩にしてみました。テーマは『後悔先に立たず』です。
7年前。亡き母との、最期の病室。小田は、もっと母と前向きな話をすればよかった。もっと、昔話にひたればよかった。なんだっていい。もっと、話をすればよかった。そんな後悔が、ずっとずっと消えません。そのとき、その瞬間の判断は、『そのとき』にしか出来ないんですよね。その一瞬が過ぎてしまえば、もうその時点に戻ることは叶わない。ましてや、死別となると、どうやったってやり直しはききません。
『口が渇く。渇いたといっても、看護士にワセリン塗られて終わってしまう』
癌が進行し、緩和ケア病棟の個室で、最期のときを待つのみとなった母。自分では立つことも出来ず、トイレにも行けない。物を食べることも出来ない。口に出来るのは、小さく砕かれた氷のみ。ジュースを凍らせたものなのでしょう。甘い味がするそれを、母に食べさせてあげたり。『虹里ちゃん、一緒にたべよう』と、ふたりで食べたり。同じ部屋で寝泊まりが許されるそこの部屋で、母と過ごした日はとても短い。いよいよ末期。そのときが来るまで、一緒の病室で寝ることもしなかったんです。本当にそれは、後悔でしかありません。
ワセリンを塗られる様子は、とても雑に見えました。棒の先に布かな? それが巻かれていて。それを口に突っ込んで、終わり。そんなものを口に入れられたって、喉の乾きは潤わないし。もちろん、多く居る患者さん、ひとりひとりに対して、手厚い対応が出来ないのかもしれない。でも、その方は他の態度でも、ちょっと酷いな……と思わせる行動が多かったんです。此処で書くと、長くなるので。それに関してはまた、エッセイにでも綴ろうと思いますが……。
とにかく。小田は未だに7年前の病室での自分の決断を、後悔しているんです。もっと、母の病室で寝ればよかった。そうしたら、母ともっと時間を共に出来ていたんです。他愛ない会話でいい。意味なんてなくていい。母と、1回分でもいいから、もっと多くの会話をしたかったな、って。
当時の小田は、今よりはるかに酷く病んでいて。自分が生きることで手一杯だったなと、振り返ります。手一杯の中で、色々と考えて。選んだ答えの『答え合わせ』なんか、きっと、自分が最期を迎える瞬間にしか、出来ないのだろうなと思います。今、割と元気になってきて。執筆しつつ、ちょっとだけでも仕事をして。父とも離れて、家を借り。恋人とふたりで生きている今を、幸せだと思います。恋人にはもう、感謝してもしきれないくらい、ありがとうの気持ちしかありません。恋人がいてくれるから、前を向けた。きっと、母とのことを振り返る余裕が出来たのも、恋人のおかげだと思います。先日医者にも、『久しぶりにお母さんの話になったね』と言われました。『後悔』の話で、医者的には良い話ではないと処理されているかもしれない……でも、今こうしてパソコンと向かい合っている小田には、良いことかな、とも。どれがよくて、どれがわるくて。判断するのは後からでいい。ただ、そのとき『これだ』と思ったものが見えたなら、恐れることに蓋をして、飛び込んでいきたい。小田は、そうしたいと思いました。
病んでる作者からの、提案です。
『進んで暗闇に居ることもないんじゃないかな』
長々とあとがきしてみましたが、一言でまとめるとそういうことです。
いろんな生き方があると思うし、判断があると思うし。ひとそれぞれ、生きたいように生きたらいいと思います。ただ、暗闇でそっぽ向いて。本当は怖いのに、暗闇を選び続けているひとが居るならば。この詩を見て、何かのキッカケになってくれたらいいなと思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
別の作品でも、お会いできましたら嬉しいです。
ふと、そういえば。
今日は、恋人と出会った記念日でした。
2021.5.15