2話 3年生を送る会(中学校)
今日は俺が待ちに待った3年生を送る会だ。この日のために俺は夏休みの時からネタを用意していた。今日はそれを披露する時だ。
6年生を送る会の時のような失敗はもうしないと決めている。
「今回こそは……今回こそは笑わせてやる!」
俺は決心し、ステージに向かう。
――腹が壊れる程笑わせてやるぞぉ! 絶対に大爆笑させてやる!
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『プログラム2番。虎川大輝の超爆笑お笑いタイム』
不思議なミュージックスタート!
横にある大太鼓を2回叩く!
「保健体育! 始めるぞっ!!」
リズミカルに大太鼓を20回叩く!
「男にはあるのに! 女には無い! それの名前はみんなが知ってる! チ◯コォぺニスゥイチモツゥチ◯チ◯男っ性っ器ぃっ!!」
ここで大太鼓を5回叩く!
「女のぉ胸に! みんなぁ注目! なぜならそこには人類の秘宝! 貧乳巨乳爆乳おっぱいマジサイコーーーーーーー!!」
大太鼓1回!
「男の魅力は股間にあって! 女の魅力は胸部にあるよ! みんなぁさっそく見まくろうじゃないかぁっ!! みんなぁ服を脱げぇっ!!」
ここで大太鼓10回叩く!
「男はチ◯コ大きくして! 女はおっぱい大きくして! わがままボディーを手に入れろ! 誰もが振り向く体を手に入れろぉっ!!」
大太鼓を強く4回叩く!
「巨大なチ◯コォおっぱいで気持ちよく! 交わる時間の始まりだぁっ!!」
大太鼓を強く10回叩く!
「チ◯コォビクビク! おっぱいぶるんぶるん!」
大太鼓を強く10回叩く!
「チ◯コとおっぱいを巨大にするのだ!! これぞモテへの道! ゴーーーーーーーー!!」
大太鼓をかなり強く叩く!
――決まった!
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俺はみんなを見た。そこには笑い転げる姿やクスクス笑う姿……ではなく、とても冷たい視線を俺に向けていた。
――まさか……またスベった?
誰もキチガイみたいな表情はしていないが、全員揃いも揃って、ゴミを見るような目をしている。
――……またやらかした!
俺はステージから逃げた。
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ステージの横にある倉庫に逃げると、そこに下級生の猫岸凛花がいた。
「おい猫岸! 下ネタ全然ウケねぇじゃねぇか!!」
「そんな事言われましても」
「お前が言ったんだろ!? 中学生なら下ネタは凄くウケるって!」
「言いましたね」
「じゃあなんだあのみんなの反応は!?」
「いやぁ、虎川先輩の下ネタってなんて言うかぁ汚ならしいんですよ」
「汚ならしいだとぉ!? 下ネタは汚いものだろうが!」
「ただただチ◯コだのおっぱいだの言うのには問題はあまり無いのかもしれません。だけど、先輩はセッ◯スネタまで入れたじゃないですか」
「何がいけない。立派な下ネタだ」
「いえいえ、そこまで言ったらさすがに過激すぎて引かれます。そもそも考えてみて下さい。学生、職員、来賓の方達がいるなかでチ◯コやおっぱいならまだしもセッ◯スネタまで入れたら皆さんはどう思います?」
「面白がる」
「違います。ドン引きです。皆さんとってもドン引きです」
「そんなはずは――」
「してますよ? 皆さんドン引きしてますよ? 聞いてみますか?」
「……いえ、遠慮しておきます」
――もう俺のイメージは最悪だろうなぁ…。
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最悪の雰囲気になった3年生を送る会だったが、猫岸凛花の変な演劇のお陰で雰囲気は挽回された。
――また俺の良いところを全てもってかれた感じがした。
俺は笑い者になるどころか、全校生から性欲魔と呼ばれるようになった。
――まだ、笑い者や悪魔である方が良かった。