1話 6年生を送る会
今日は俺が待ちに待った6年生を送る会だ。この日のために俺は冬休みの時から出し物のネタを用意していた。それをついに披露する時だ。
「覚悟するが良い。俺のネタで可笑しくなるほど笑わせてやる!」
俺は自信満々に発言し、ステージに向かう。
――みんなが笑い転げる姿が想像できるぜ。一生忘れられない思い出になる事間違いなしだな!
皆のもの 俺のネタ見て 笑顔だぜ(by 虎川大輝)
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『プログラム3番。虎川大輝の大爆笑ネタ』
「……ブリブリウンッコォォォォォ!!」
謎のミュージックスタート!
「ウンコォ! ウンコォ! レッツウンコォブリブリブリブリブリブリブリブリ!」
リズミカルに9回タップダンス! そして3回フィンガースナップ(指パッチン)!
「馬場(6年生の男子)のおっなっらっ! マッジッくっさっいぃぃぃ! ウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリおっなっらっがブーーーッ!!」
リズミカルに5秒コサックダンス! その間にフィンガースナップ(指パッチン)!
「牛田(6年生の女子)のおっなっらっ! 超っ爆っおーーーん! ウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリ!」
ここでドヤ顔!
「2人が結婚すればおなら夫婦!」
ここで3秒フラメンコ!
「ウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリ2人でブーーーップゥッ!!」
足をリズミカルに動かす!
みーぎ! みーぎ! ひっだり! ひっだり! まーえ! うっしろ! まーえまーえまーえ! みーぎ! みーぎ! ひっだり! ひっだり! まーえ! うっしろ! まーえまーえまーえ!
「猿田(6年生の女子)のウンコォタイムゥちょー長いぃ! ウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリ!」
またドヤ顔!
「あまりの臭さで気絶してるのかも! ウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリ!」
またまたドヤ顔!
「またはウンコ出すのに体力使ってるのかも! ウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリ!」
ここで5秒ボイスパーカッション!
「トイレの掃除ぃマジでやだ! トイレの掃除ぃマジでやだ! ウンコォ付いててちょー汚ぁい! 汚い汚いマジ汚ぁい! それでもウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリウンコォブリブリブリブリブリ! ウンコォおならぁブリブリブーーーッ!!」
――決まった!
謎のミュージック終了!
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俺は会場のみんなを見た。そこには面白すぎて笑い転げる姿……ではなくゴミを見るような冷たい目をした人ばかりがいた。
――あれ? 誰も笑ってないぞ? ……まさか……俺、スベった?
会場のみんなを見ていると、6年生の中にキチガイみたいな顔した奴がいた。俺がネタに使った馬場と牛田だ。俺を見てぶちギレているようにしか見えない。猿田は完全に死んだ目で睨んでいる。
――やらかした……。俺、やらかしちゃった! ヤバい! これはかなりヤバい!
俺はステージから逃げた。
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ステージの横の倉庫に逃げると、そこには同級生の熊谷凡太がいた。
「熊谷ぃぃぃぃぃ!! てっめぇぇぇぇぇぇ!! 俺を騙したなぁぁぁぁぁ!!」
「騙してないよ!」
「騙しただろうが! 小学生はウンコが好きだからウンコをネタにすれば大爆笑間違いなしって! 言っただろうがぁぁぁ!!」
「言ったよ」
「じゃあなんであんなにクソみてぇな空気になってんだよ!!?」
「いやいや、その場にいる人をネタに使うのは可笑しいでしょ? ましては主役の6年生をそんなネタに使うなんて」
「あ……そ、それは……」
「そりゃ個人のコンプレックスをだめ押しするようなネタがウケる訳無いでしょ」
――なんも返せねぇ…。
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その後、最悪の空気になった6年生を送る会は熊谷凡太が下手くそな歌を歌って挽回した。
俺は熊谷に良いところを全てもってかれた感じがした。
6年生を送る会の後。
俺はみんなから◯◯小学校のミスターウンコと呼ばれるようになった。
在校生からはダダスベりした奴として笑い者にされ、卒業生(特に被害者の3人)からは悪魔と呼ばれるようになった。