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第8章

~幻の秘宝を魔術で射止めるべく黒魔法使いはダンジョンで今日もインチキ宝石商と果てなきバトルを繰り広げ~第8章





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Scene.21 ミュウラって一体・・・



「ドンドンドンッ、ドスンッ!!」


「な、なんぞわやぁ~~~」


ミュウラの居る寝室の扉がおもいっきり大きな音で細木によって叩き開けられた。

あまりの騒々しさに警備の傭兵達もズカズカと集結する。

傍らにはショットガンを携えて。



「コラァッ!この糞ジジイ、私を舐めやがって!容赦しないよ。」


「ひぇっ!」


「あんたねぇ、ちょっとどうなってんのよ。清水とンデゲがここに来ているけど。」


「ん、マジで?」


「こいつ~この期に及んでシラを切るつもり?あんたたちグルなんじゃないのよ!」


「へ、わたくしは存じ上げませんが・・・」


「何をいけしゃあしゃあと、あんた、ショットガンで蜂の巣にされたいの?」


「め・め・め、めっそうもないでゴンザレス。」


「はぁ、アンタふざけてんの?ほらっ、これを観なっ!」



そういうや細木は傍らの水晶球を手に、先ほどの映像を壁一杯に映し出す。

今度はこのアジトの外壁を這い登っている3人の映像が映る。



「あんた、これをどう説明するつもりなの?」


「ううむ、わしゃしらん。」


「何ですって?もう直ぐそこに居るじゃぁないのよ!」



細木はミュウラの着ているガウンの首を猫のように持ち上げると、廊下まで引きずり出す。

そして廊下の窓際まで連れて行くと、今度は窓の外を指差す。

暗がりの眼下には外壁をよじ登っている3人がかすかに見える。



「ほうら、あいつらアンタを助けに来たんじゃないの?」


「いいや、わしゃしらん!」


「あんたって頑固ね。だから嫁が居ないんじゃないの?」


「それは違うよ、細木さん。ほら、あの丘で君と誓ったあの約束。」



細木は妙に澄んだ瞳でみつめるミュウラに思わずドキッとする。



「奥さん、もう忘れたのかい?たった昨日の事じゃあないか。」


「ハッ?ええと、忘れては居ないよ・・・」


「ダロッ、君と僕のあの秘密の約束。」



二人の妙に変てこなやり取りに、向けた銃を降ろしてやれやれと退散する護衛達。



「ま、まぁ約束はしたけどぅ~、だけどアタイ人妻だっしぃ~もうやだわ~」


「そんなことは気にするなよベイベ-!今夜は二人っきりでアバンチュールさ!」


「何よ、エッチウィ~~~、臭い芝居ね。」


「そんなことないさ、お嬢さん。さぁこちらへ。」



そういうとミュウラは尚も年甲斐も無い澄んだ眼をして細木を部屋へと招き入れる。



「もうやだぁ~~~いけないわ。お父ちゃんに言いつけてやるから~~~アッ・・・」




先ほどの清水たちの事もそっちのけで、奇妙な夜は更けていくのであった・・・・・





-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-



翌朝、ミュウラが起きてこないことに不可解に思った護衛が部屋に立ち入る。

すると、どうしたことかミュウラと細木が縄で縛られた状態で発見された。



話はこうだ。


二人は部屋に入ると冷蔵庫からシャンパンを取り出す。

そしてロマンティックな夜のためにグラスを傾けたわいの無い話をしていると、いつの間にか深い眠りについてしまった。

そして朝目覚めたときには既に縛られていたのだった。



「おう、ワシもビックリだよう。せっかくのアバンチュールが台無しさ。」


「は、何言ってんのよ!なんだかんだ言って、あんたたちグルなんじゃないの?」


「そんなことは、ワシはしらん!ケッ!」


「だいたいあんたが警戒心が無いからこんなことになったのよ?

それより、夕べの3人の目的は一体何なのよ?

アンタを助けに来たんじゃなかったの?そうすると・・・・」


「こんな老いぼれ助けたって何の価値も無かろう。

アイツラの目的は唯一つ、そう、「ドラゴンズ☆ソウル」じゃな。」


「でも、アタイが持ってるから大丈夫な筈よ。」


「あいつらはそんなこと知らんからなぁ・・・あっ!」


「へ?どうしたの?死にそうにでもなっちゃったの?」


「ほれほれ、夕べ例の「模造品」を完成しておいたのじゃが。

そこの引き出しに・・・・」



ミュウラがベットの脇の引き出しを指差す。

傭兵の一人が引き出しの中を探る。



「御座いませんが・・・」


「何ですって?てことはアイツラが間違えて・・・プッ!」


「そうか、「模造品」のほうを持ち去ったのか!ハハッこれはいい!」



ひとまず二人が安心する。

二人揃って遅めの朝食を取りにリビングへと向かう。

既にモーニングの準備は整っていた。

相変わらず食べ慣れぬ食事の味にミュウラがむさぼりついている。

二人が食べ終わる頃、一人の紳士がリビングに招きいれられた。



「あ~ら、これはこれは、村岡様。ご機嫌麗しゅうございますぅ!」



そこに登場した村岡という人物こそ、かの盗賊団の団長に違いなかった。





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Scene.22 団☆長☆参☆上☆☆☆



盗賊団の団長だという村岡はスラリと背の高い30代と見える日本人であった。

ミュウラが想像していた印象と大分異なっており、日本人であることも不思議だった。



「おお、細木君、お久しぶり。そちらは?」


「ええ、こちらが例の原石「ドラゴンズ☆ソウル」を操る第一人者の部族のミュウラ酋長で御座います。ほら、ミュウラ、ご挨拶っ!」


「ああ、これはこれは、始めまして。」



二人はとりあえず握手を交わす。



「で、原石を手に入れたようだが?」


「ハイッ、今お持ちします。」



細木はそういうと席を立つ。

リビングを出て自分の部屋へと向かった。

数分後、細木がそそくさと現れた。



「あ、あのぅ・・・・誠に申し上げにくいのですがぁ・・・紛失してしまいましてぇ・・」


「なんだと?それは誠か?」


「は、ははぁ・・・・」


「おいおい、私は君が取り返したと言ったからわざわざ日本から自家用ジェットで来た次第なのだよ。よりにもよって・・・・」


「はぁ、何と申しましょうかその~、確かに夕べこのミュウラと一緒にここへ持ってきまして、私の書斎に仕舞っておいたのですが・・・ね、ミュウラ。」


「ああ、ワシもそれは見たのですが。」


「そういえば・・・つい夕べのことですが、清水と申す宝石商が現れまして・・・」


「何?清水だと?」


「ええ、あら、ご存知ですか?」


「ん?い、いいや。」



様子を伺っているミュウラもその村岡の様子を不思議に思った。


「まぁ良い。そのうち出てくるだろう・・・ほら、細木君の黒魔法に掛かれば直ぐに追えるじゃあないかい、なぁ!」


「はぁ・・・・そう申しましても。判りました。少しお時間をいただけないでしょうか。」



そういうや、再び細木は部屋を後にする。



「あの野朗!ただじゃあ置かないよ!よりにもよって団長が参上する大事なときに!」


細木は水晶球を取り出すと、早速ンデゲの脳波にアクセスを試みる。





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「ンデゲ、よくやったぞ!それにしてもよく判ったな?」


「ええ、だいたいあの酋長ミュウラの考えそうなことくらい直ぐにわかりますよ。

もとも彫刻が趣味で、変てこなものをよく作っていましたからね。」


「そうか、模造品で誤魔化そうなんて、なんとも幼稚だな、ハハッ!」


「ほら、こっちが模造品。ちゃあんと自分の銘まで入れてあるから一目瞭然!」



清水にはそう言われても判別できなかった。


彼らは既に首都ドドマの空港からダル・エス・サラーム国際空港へのセスナの中、岐路へと向かっていた。

ロドリゲス皇帝のスマホが鳴る。



「はい、ああどうも。ええ、無事です。そ、そんな事は無いですよ、まだ誰にも伝えていませんので・・・」


誰と話しているのだろう、話は10分程続いていた。

ロドリゲス皇帝は何やら普段見せぬかしこまった態度でハンケチで汗を拭きながら会話を続けている。やがて電話が切れる。



「実は・・・チョット急用が出来てしまってね、今から引き返す。」



そういうやロドリゲス皇帝は焦るように機体を大きく旋回し、ドドマの空港へと向ける。



「一体どうしたというのですか・・・そんなことしたら空港で待ち構えている奴らに捕まりに行くようなものじゃないですか!」


「嗚呼、判っている。だがな・・・」


「まるでこれじゃあ、飛んで火に入る夏の虫、じゃあないですか。どうして・・・」



ロドリゲスは沈黙したままジッと前だけ見据えている。




-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-◆-



やがてセスナは空港に到着する。

案の定、盗賊団たちは待ち構えていた。

護衛が銃を向けている。

3人はセスナを降りると黒塗りのセダンに乗せられてゆく。

そしてアジトへと出戻った。



3人はリビングへと案内される。

リビングには細木とミュウラがソファーに腰掛けている。

ミュウラは申し訳なさそうに下から覗き込むように3人を見上げる。


向かいの席に着いた3人は護衛に銃を向けられたまま無言でいる。



リビングの扉が開くと、村岡が現れる。

清水はあまりの驚きのせいで口をポッカリ開けている。

何故ならば村岡は清水の会社のJr社長であるから。

しかも、ダル・エス・サラーム国際空港周辺にいる筈だったから。



「おう、ロドリゲス君、こんにちは。元気かね?」



村岡の親しげな口調に懇意の中だと知る。

多分先ほどの機内での電話も彼からだったのだろう。

そして村岡は清水にウインクする。

一体二人の関係とは・・・清水の頭は完全にショートしていた。



「村岡さん、先ほどはどうも。」


「例のものは?」


「ええ、ここに御座います。」


「なら良い。どおれ、私に見せてみたまえ。」



ロドリゲス皇帝は模造品でない、本物の原石のほうを手渡す。

団長である村岡社長は背広の内ポケットからルーペを取り出しじっくりと観察する。



「ふーん、こんな石がねぇ・・・誠に信じがたいね。なぁ、清水。」



清水は動揺を隠せないまま黙って頷く。

細木が口を挟む。



「あのぅ・・・私の報酬は・・・」


「あ、ああ。無いよ。君は取り逃したのだからね。ま、チップくらいははずむがね。」



細木は申し訳なさそうになにやらモゴモゴと口ごもると、とうとう部屋を出て行ってしまった。



「では、ミュウラさんだったかね。早速披露してみたまえ!」



やがて一同に沈黙のときが訪れる。

ミュウラは原石「ドラゴンズ☆ソウル」を受け取ると、呪文を唱える。

皆がジッと見守る。



ミュウラの呪文が続く。

と、ミュウラの手のひらに載せられた原石から閃光が放たれ始める。

その閃光は一気にきらめきを増すと、虚空に浮かび上がった!

次の瞬間、轟音と共に青白き竜が浮かび上がった!



竜はトグロをくねらせながら部屋一杯にうごめいている。

あまりの見事さに一同が言葉を失う。



「おお、これが「ドラゴンズ☆ソウル」の青き竜か!」



村岡が感嘆の声を上げる。

数分後、何事も無かったように竜は原石の中に消えていった。

ロドリゲス皇帝が口火を切る。



「そうです、見事でしょう。」


「ああ、素晴らしい。」


「しかし、私の手元から盗んだのは、本当にあなた方なのですか?」


「ああ、そうかも知れないね。」


「宝石商の貴方が、一体何のために?」


「正直に話そう。私にとって宝石商の商売など、単に息子として引きついただけのこと。そんなちっぽけな商売など興味などとっくに無いのですよ。私がこの原石に魅了されたのは、言うまでも無く、その言い伝えにほかならない。この石の魔力はこの地球上において唯一無二の存在に他ならないのは周知の事実。それがあれば地上の支配が可能となるだろう。それ以上の魅力など何処に有ると言うのだい?」


「そうかも知れませんね。ですが、この石は「血」によって操ることが出来るのです。昔からの血統のある人物によって可能となるのですよ。だから魔力は私達一般ピーポーには操ることが出来ないのです。諦めてはいただけないでしょうか。」


「無論、そうでしょう。何も私が操らなくても良い。そこで、相談なのだが、ミュウラ君。私と共に世界を制覇する、ってのはどうですか?」


「ううむ、悪い話ではないが・・・」


「報酬は弾みますよ!」


「ワシにも確かに野望はあります。ですが、私の野望というのは何も自分の欲得のための「世界制覇」ということではないのです。最も、細木さんとタッグを組んでこの石を摩り替えて貴方から報酬をせしめようというゲームは思いつきましたがね。そして本物の原石は我が村に持ち帰って世界の平和に役立てるようにお祈りするつもりではあったのです。」


「ほう、中々崇高なお考えですね。しかし、世の中「金」ですよ。」


「私には全くといって意味が無いのです。私達の集落は自給自足で十分成り立っていますから。それよりも争いの無い世界のほうが何よりの宝ですよ。」



清水とンデゲはミュウラの話に聞き入るものの、村岡とロドリゲス皇帝は難しい顔をしたままでいる。










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~ To Be Continued! ~















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