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第四十三話 魔族の本領

 「アリス、この3人で連携するのならあなたが中心に動きなさい。あなたが戦うのを私達2人でカバーするわ」


 ヴァルメの指示に、アリスは困惑した表情を浮かべた。


「わ、わたし!? ヴァルメの方がほら、経験とか……」


「正直、私はハンナと連携がとれるか分からないわ。でも何故だか、先の共闘みたいにあなたとは動きを合わせられる。そしてあなたは当然、ハンナとの共闘経験が私より多いでしょう。そうなれば、これが一番うまく動ける筈。まあ、怖いなら無理強いはしないけれどね」


 アリスがハンナへと確認するように視線を移すと、彼女は頷いた。アリスも自身を鼓舞するように頷いたあと、深く息を吸って前を見据えた。


「うん、分かった。大丈夫。じゃあ、行くよ」


深く踏み込んで足を勢いよく前に出し、アリスがオロバへと駆けだす。ヴァルメとハンナもそれに続いた。にも関わらず、オロバは斧を構えるでもなく地面に片手を置いていた。普通ならばその場で迎撃しようと構えるだろうし、そもそも警戒していたとは言え三人で話している間にも攻撃の機会はあったはずである。そのことにアリスは違和感を感じ、一瞬走る足を緩めた。

 その瞬間アリスの目の前の土が盛り上がり、かと思えば鋭利な形を象りそのまま前方を穿った。突然の出来事にアリスは思わず後ろに下がる。減速していなければ、ちょうどアリスへと当たっていただろう。彼女の心臓が鼓動を早める。


「今の……あのグリムが?」


「みたいね。一体どういう……」


 アリス達が当惑している中、オロバが鼻で笑いながら口を開いた。


「まさか顕現を持っているというだけで、我々魔族を超えた気にでもなっていたのか? 力のある魔族の中にはこうした特殊な力を持つ者もいるのだ。人間共の扱う顕現ほど自由性のあるものじゃないが、貴様らを殺すには十分すぎる程だろう?」


 オロバの言葉に、3人ともが耳を疑った。それも当然である。魔族がこうした能力を持っているというのは、全員が今初めて聞いたことであったのだ。疑いたくなるような、理不尽な真実である。しかし先程の攻撃を考えれば、眉唾ではなかった。オロバの底知れぬ力に、アリスはついたじろぐ。


「ど、どうしよう? 素の状態でもあれだけ強かったのに、あんな能力持ち出されたら……」


「いえ、恐らくあの攻撃はそう軽く撃てるものじゃない。そうでなければ今、私達が話してる間にだってあの力で仕掛けてくるはずよ」


 ヴァルメの考えに、ハンナも同調した。


「そうね、恐らくは何か制限があるみたい。体力消費が激しいとか、距離の問題とか、考えられるのはその辺りかしら」


「そ、そうだよね……。そっか、でもどうやって攻めれば……」


 睨み合いの中、オロバが再び地面に手を置いた。当然、三人の意識は足元に向く。しかし、地面には何も変化がない。「しまった」と三人が思った時には既にオロバは動いていた。作り出したその隙をついて一瞬にしてハンナへと近づき、彼女の頭上から勢いよくその斧が振り下ろされる。一瞬オロバから意識が外れていたために、反応するのが遅れていた。仕留めたと確信し、オロバが口端を吊り上げる。


「きゃ!」


 ハンナは咄嗟に剣を上げて、斧の軌道を逸らすと同時にその反動を利用してその刃から逃れた。


「なんだと?」


 ハンナの動きは、オロバの想像を超えていた。突然迫られた判断の中で正確に剣を操り、オロバの凶手から逃れたのである。荒い部分もあるものの、並大抵の人間にはできない芸当だった。自身の認識が悉く外され、オロバは苛立ちを覚え始める。


「危なかった……。けど、やっぱりあの力になにか制限があるのは確かみたいね」


 ハンナに攻撃を躱され隙をつくったオロバへと、アリスとヴァルメが前後から仕掛ける。それに対して、オロバは地面に強く足を叩きつけた。地面が鋭く盛り上がり、形を成して二人の進行が阻害される。


「わっ……!」


 オロバの意識が二人に向いている間にハンナが斬撃を放つも、斧を横薙ぎに振るうことで防ぎきった。しかしハンナはこのとき、オロバの息遣いが荒くなっていることに気が付いた。希望が見える。


「ほら、体力は削れてる! やっぱりあの力はリスクもあるのよ!」

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