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第三十二話 決戦の日

 一夜が明け、アリスとハンナは事前に聞いていた集合場所へと向かっていた。


「ほら、アリスはただでさえそそっかしいんだから緊張感を持って行動して」


「分かってるってば! 最近のハンナって、お母さんみたい。うーん、それ以上かも」


「私だって、アリスじゃなければこんなこと言わないわよ」


 「そんなに私信用ないの!?」


 2人が軽口をたたいていると、前に集団が見えてきた。見る限り、15人ほどであるようだ。


「えっと、これが今回参加する人たちかな? なんだか、思ってたより……」


「少ないわね……」


 ヴァルメから魔物は30ほどはいるだろうと聞いていたため、余計にそう感じられた。集落の規模を考えればこの人数には納得できるものの、やはり少し心許ない。そこに見覚えのある人物を見つけ、アリスは駆け寄る。


「ヴァルメ!」


「あら、あなたたち今きたの? 随分遅いわね。あなたたちが最後じゃないかしら」


「やっぱり、これで全部なの?」


 ハンナの問いに、ヴァルメは頷いて返す。


「少ないと思う? 私から言わせれば、味方の数を気にしなきゃいけないあなたたちの実力の方がよっぽど心許ないわね」


「うっ、ごめん」


 ハンナがバツの悪そうに頭をかく。


「そうだよハンナ! 私たちが頑張ればいいんだから、数の差なんて気にする必要ないでしょ?」


「あ、アリスだって少し不安そうだったじゃない!」


「えへへ、そうだっけ?」


 アリスが目線を逸らした先に、ザグロが見えた。よく見ればファルも一緒であった。ファルの顔を見るに、少し緊張しているようだ。ザグロがそのまま集団の前に立つと、その場の全員の注目がそちらへ向いた。先ほどまでは話をしていた者達も、ザグロの言葉を聞き逃すまいと神妙な面持ちを浮かべている。


「まずはこの場にいる全員に感謝する。よく戦う意志を示してくれた。お前たちのおかげで、この村は魔族の不条理な略奪行為に対して抵抗することができる。それは奴らからすれば、たわいないものかもしない。しかし我々がこの戦いに懸ける思いは、魔族どもの暴虐を打ち破るに足るものだと、私は信じている!」


 ザグロの言葉に、その場の者たちは雄叫びをあげる。恐怖を払拭するためか、戦意の高揚か、皆一様にして滾る気持ちを吐露しているかのようであった。彼らの落ち着きが戻ると、ザグロはアリス達へと視線を移した。


「そして、この戦いに協力してくれる者たちを紹介する。さあ、こちらへ」


「わ、私たちのこと?」


「そうに決まってるでしょ。ほら早く」


 ヴァルメが困惑するアリス達を前に押しやる。


「この三人は、この村のために戦いに参加する意志を示してくれた。そしてアリス殿とヴァルメ殿の二人は、非常に強力な力を持っている。都市部などではこれを顕現と呼ぶそうだが、彼女達の力を中心に立ち回ることができれば、きっと勝機をつかめる筈だ。改めて、その勇気に感謝を言いたい」


 再び大きな歓声が起こる。アリスがヴァルメの方へ目をやるといつもの仏頂面を浮かべていたが、心なしか悪い気はしていないようであった。


「もう一人、ファルには今回非常に重要な役割を果たしてもらう」


「ファルに?」


 アリスは意外に思い、つい声に出してしまった。何故ファルがこの場に出ているのかは疑問だったが、まさか連れて行く気だとは思っていなかった。まだファルは子供である。戦いの場に連れて行くには危険なのではないかと心配したのだ。


「ああ、魔物達が拠点にしている場所を、私たちは確認できていない。そんな状況でもたついていたら、魔物の奇襲を受けてしまう可能性もある。だがファルならば拠点の場所、さらには内部状況まで知っている。戦いを優位に進めるためにはついてきてもらうのが一番だと判断した」


「でも、危なすぎる! もしファルに何かあったらどうするんですか!」


 ザグロの説明に、アリスは納得しきれなかった。第一ファルが拠点の場所を知っているならば、それを聞けば大まかには分かるはずである。アリスから見て、危険を伴ってまでファルを連れて行くことはないように感じられたのだ。ザグロが押し黙ると、ファルが前に出て口を開いた。


「やっぱり、僕から説明するよ。アリスさん、僕、自分からついて行きたいってお願いしたんです。」


「え?」


 アリスが呆気に取られるが、ファルは続ける。


「僕も力はないけど、みんなの役に立ちたい。魔族に捕まっていたみんなの中で僕だけで逃げ出した時から、ずっとモヤモヤが残ってて。みんなを助ける力になりたいんです。僕が着いていけば、きっと戦いやすくなるでしょ? お願いです、僕を連れていってください」


 ファルの意志は固いようだった。アリスにも、ファルの感じる無力感は理解できる。


「……分かった。でも絶対に自分の身を第一に考えて行動してね!」


「はい!」


 ファルの顔が晴れる。アリスも思わず笑い返した。


「話はついたみたいだな。それじゃあ早速魔物の拠点へ向かうとするか!」


 一向はファルの案内で進む。集落を出る際、多くの人たちから声援を受けた。この集落の者達にとって、この戦いですべてか決まるのだ。アリス達は強い決意を胸に、戦いへ踏み出した。

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