第二話 転生
シリスの作り出した空間で、私は彼女の説明を聞いていた。
「私が力を渡すのは、あなただけではありません。12人に私の力が分割されることになるはずです」
「12人?」
「私の持っているような力は本来一人で一つしか持つことが出来ないのです。私は特異体質のようでいくつも持って生まれてしまいましたが、それが原因で命を縮める結果となりました」
なるほど、一人で一つしか持てないものを一人で十二も持っていれば、身体への負担はかなりのものだったのだろう。
「じゃあ、私の他に11人力を受継ぐ人を探すんですか?それとも、もう集まってるとか?」
「いえ、転生させるのはあなただけです。他の能力は生まれる前の命に譲渡されるでしょう」
「どうして? 私だけ?」
全員シリスが生まれ変わらせた方が分かりやすいんじゃ……。
「私には何人も転生させられるような力はありません。一人が限界です。それに、転生と言ってもあなたをそのまま生き返らせることができる訳じゃありません。魂を身体に結びつけ、もとの魂とあわせるようなものなので、1つの魂にあなたの記憶や意識をくっつけるといったほうが正しいですね」
「私一人……」
そう考えると重い重圧のように責任を感じてしまう。本当に私でいいのだろうかと。
「大丈夫です。私が頼んだのですから、責任を感じることなんてありませんよ。本当に感謝しています」
深刻な顔でもしていたのだろう。私の不安を彼女は表情からよみ、拭ってくれた。これではだめだ。もっとしっかりしないと。
「では、私がこれからしてほしいことを話します。この空間で共有できる情報量は限られるので、最低限に絞って話しますね」
「……はい」
真剣な様子の彼女に、私も心して頷く。
「まず前世。今のあなたの記憶は恐らく、しばらくの間は転生先の身体に現れることはないでしょう。経験や時間を積み重ねて、亡くなった時程の歳でやっと魂も馴染み、記憶が現れるかと思います」
「記憶が現れたら、どうしたらいいんですか?」
「アースフィルムという国を探し、向かってください。それから他の後継者達を見つけ出してほしいのです」
「……分かりました。でも、どうやって他の人達を見つけるんですか?」
「首元に印のようなものがあるはずです。その印があなたと同じだったら、私の力の後継者である証拠になります」
それからシリスにしばらく転生後についての説明をしてもらい、いよいよその時になった。
「では、ご武運をお祈りします」
一度死んだ命だ。もう一度与えられる生ではもう、あんなことが起きないようにしないと。
シリスが集中するように目を閉じ、私に触れる。そこで一度、私の人生は終わった。