第十六話 悪夢と希望
「撃て!」
ゲルグルドの号令で、矢が放たれる。ナイトメアはその場で回転し、矢を弾いた。それと同時に大量の針を飛ばす。村人たちはそれを置盾で防御した。
「この針の量、この前よりも多い!」
針を躱して距離を詰めようとしていたアリスだったが、一度回避に専念させられた。
「今回のあいつは、私達をすぐに殺して次に行こうとしてるわ。向こうも本気だから、私たちも常に気を張らないとあっという間に全滅させられかねない。」
アリスがセリーナの言葉に頷く。それを見届け、セリーナはナイトメアの側面にまわった。アリスもセリーナとは逆側へと走り出す。
ナイトメアは側面を警戒し、アリスとセリーナを狙う様に針を飛ばした。その隙に村人たちは矢を放つ。
「オラ!」
ゲルグルドもナイトメアの正面から斬りかかる。剣が当たる前に、ナイトメアから煙が放たれた。これを吸えば、少なくともこの戦いの間は動けなくなる。ゲルグルドは一気に後ろに下がり、それを回避した。
「チッ。これじゃ近づけねぇぞ。」
「それで大丈夫です! 私たちが狙われているうちは弓矢で攻撃し続けられます!」
ゲルグルドへとセリーナが伝える。その間、セリーナは炎でナイトメアを攻撃していた。
アリスも針を躱せる距離から電撃を放って攻撃しているが、ナイトメアは怯みすらしていない。
「これ、ほんとに効いてるのかな……。」
アリスもすでに疲弊しており、弱音を吐く。冠災は痛覚がないためほとんど怯むことがないとセリーナから聞かされていたアリスだったが、やはり自分の攻撃に全く反応を示さない敵との戦いは不安が大きかった。
そして、それはセリーナ以外の村人達にとっても同じである。セリーナも、全体の士気が下がりつつあるのを感じていた。
しかし、一人の村人の言葉を皮切りに、状況が変わった。
「おい……、針の量がなんだか減ってきてないか?」
「ほ、本当だ! 効いてる、きっと俺たちの攻撃が効いてるんだ!」
その声は全員に伝わり、士気が再び高揚し始めた。針の数が減ったことで、アリス達も余裕を持って躱せる様になっている。
「そろそろ、あれを出しましょう!」
セリーナが叫ぶ。