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第十五話 誓いと開戦

 ハンナたちの出発を見送った後、アリスは村でナイトメアを討つべく待ち構えていた。


「そろそろですかね……。」


「そうね。」


 アリスからの問いかけに、セリーナが答える。

 冠災が村をターゲットにした時、村人が逃げようとしてもそれは叶わない。しかし冠災の性質として、集団が二つある場合先に人数の少ない方を狙うというものがある。それは事前にセリーナが話していたことであった。

 村人の半数以上を逃した今、それを仕留めようとナイトメアは動き出すはずである。その時に数の少ないこちらの陣営に誘き寄せようというのが、今回の狙いである。


 「けど、本当に大丈夫なんですか? もしナイトメアが私達でなくて逃げた人達を狙ったら……」


 冠災との戦いはアリスにとって初めてである。冠災が本当に作戦通りに動いてくれるのかどうか、アリスには一抹の不安があった。


 「ええ。前にも言ったけど、冠災は人を恐怖に陥れて殺すためだけに動くものなの。まるでそのために生まれてきたみたいにね。人数の少ない方を狙うのもいち早く片方を全滅させて、もう片方も仕留めに行くためよ」


 「じゃあ、私たちが負けたら、ハンナたちの方に行くってことですか!?」


 焦るアリスにセリーナが表情を崩し、軽い笑顔を見せた。


 「やっぱりハンナに逃げる人達の護衛を頼んだのは、ナイトメアと戦ってほしくなかったからなのね。大丈夫。ナイトメアの意識があちらに向かないよう、私達で頑張りましょ」


 「そっ、それだけじゃないですけど……」


 アリスが一度言い淀み、表情を整える。


 「ただ、私達の村の皆んなは今生きてるのかも分からなくて……。そんな状況でハンナにまで何かあったら私……」


 アリスの言葉を、セリーナは暖かい表情で聞いていた。


 「アリス、今回ハンナを別行動にしたのはいい判断だと思うわ。今逃げている村の人達になにかあったら、今回の作戦自体失敗になってしまうもの。ハンナが守ってくれるなら私達もナイトメアに集中できる」


 セリーナはそのまま続ける。


 「けどあなたのその考えは、あの子に対して不誠実だとも思う」


 「えっ」


 「ハンナはあなたにここを任せたわ。それはあなたが死んでもいいと思ったからじゃない。あなたを信じたから。あなたならきっと無事ナイトメアを退けられると、彼女は信じているの。それなのにあなたは、ハンナをまだ信じきれずにいる。自分自身すらね」


 アリスが俯く。たしかに自分は死なないとハンナに約束していたにも関わらず、もしかしたらという不安が拭えていなかったことに彼女は気づいた。気合いを入れるため.彼女は両の頬を叩いた。


 「ありがとうございます。セリーナさん。私、絶対に死にません!」


 握り拳を作って答えたアリスに、セリーナは再び笑顔を浮かべる。


 「ええ、私もあなたを絶対に死なせない。約束ね」

 

 草木の揺れる音が聞こえる。次の瞬間には目前の木は倒され、案山子のような姿の化け物が立っていた。


 「ナイトメア……!」


 村に残っていた全員、息を呑む。今、開戦が告げられた。

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