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第十一話 悪夢(sideアリス・ローレン)

 目が覚めると私は、村にいた。先ほどまでいた村ではなく、私が住んでいた村だった。


 「え、どうして?」


 村は魔族に襲われてなくなったはずだ。それに私はたしか、化け物と戦っていた。それで、化け物のだした霧を吸い込んで……。そこからの記憶はない。


 「姉ちゃん、なにしてんだよ。」


 いつも聞いていた声。しかし今は聞こえるはずのない声に、恐る恐る振り返る。


 「ディーン……?」


 振り返った先には、魔族の襲撃以降生死の分からなかった弟、ディーンが立っていた。


 「ほら! 早く立てよ! 恥ずかしいだろ!」


 周りを気にして頬を赤らめるディーンに、私は涙ぐみながら抱きつく。


 「良かった!生きてたのね! 私もう、ずっと心配で……」


 「はぁ? 何言ってんだよ。ちょっ、離せって! 皆見てるだろ!」


 いきなり抱きついた私に抵抗するディーンに言われて周りを見渡すと、皆が私の方を見ていた。皆、村にいた人達だ。


 「皆……生きてた……。」


 「おい、どうしちゃったんだよいきなり! 今日は成人の祭りだろ!」

 

 ディーンの言葉に、私は目を瞬かせた。


 「成人の祭り……今日が?」


 「何当たり前のこと言ってんだよ。道のどまん中で寝てると思ったらこれって、楽しみにしすぎておかしくなっちゃったの?」

 

 私は、寝てたのだろうか。あれは夢だったのだろうか。シリスやセリーナも?試しに電気をつくろうとするが、何も出ない。


 「そっか……そうだよね。ごめん、ちょっと悪い夢みてたみたい」

 

 私はそう言って立ち上がった。


 「ふーん、まあいいけど。そういえば、クロッツさんたちが姉ちゃんのことよんでたよ」


 「あっ、ホントに!?」


 駆け足で会場に向かうと、クロッツとターナーが待っていた。


 「おい、遅いぞ」


 クロッツが腕を組んで言う。


 「ごめんごめん、ちょっと寝てたみたい」


 「ホントか?ディーンに聞いたときは家にはいないって言ってたが……」


 「えっ……それは……」


 クロッツの疑問に私は言葉を濁す。気づいたら道端で寝ていた、とは言えなかった。しかし、こうして村で二人と会えるなんてそれこそ夢のような気分であった。


 「ハンナは?」

 

 「あいつも来てないんだけど、お前と一緒じゃないのか?」


 「ううん。まだ会ってないけど……」


 どうしたのだろう。もうすぐ村長の話も終ってしまう。


 「キャー!」

 

 悲鳴が聞こえ、みんな一斉に壇上を見上げる。その既視感のある光景に嫌な予感を覚えながらも、私もそちらへと目をやった。


 村長はいない。ベルがそこに立っていた。魔族の突然の登場にも、逃げ出すものはいない。全員がただベルの方を見ている。


 「みんな! はやく逃げて!」


 私がそう叫んでも、反応をみせる者はいない。


 「クロッツ? ターナー!」


 二人へ呼びかけるが、反応は他の皆と変わらなかった。


 「無駄だ。お前以外は動けない。」


 ベルが嘲るように言った。


 「俺の意志なしではな。」


 ベルの傍らに、ディーンが現れた。


 「ディーン!」


 「姉ちゃん! 助けて!」


 ディーンが必死にもがくが、ベルはびくともしない。


 私はベルへと電撃を放とうとする。しかし、なにもおきない。


 「なんでよ! どうして!?お願い、出て!」


 「いやだっ、姉ちゃん! 助け──」


 ベルが、ディーンの頭を握り潰した。


 「あ、あぁぁ……」


 私はその場に膝をついた。しかしベルは止まらない。こちらに移動してきたかと思えば、クロッツへと手を伸ばす。


 「やめて!」


 ベルへ掴みかかろうとするが、吹き飛ばされた。


 「お前はなにも守れない。」


 ベルはそう言い、クロッツ、そしてターナーまでもを殺した。


 「いやぁぁぁぁ! や、やだ……私……だって……」


 絶望する私の視界に、一人の少女が映った。


 「あれは……前世の私……?」


 しかし、前世の記憶やシリスは夢だったはずだ。それがどうして……おかしくなって、幻でも見ているのだろうか。


 「……! …………!」


 少女はなにかを必死に伝えようとしている。しかし、聞こえない。それでも口の動きを見て、なんと言っているのか分かった。


 『これは夢よ!』


 そのとき、私の肩に何者かが触れた。ベルかと思い勢いよく振り返ると、涙を流してこちらを見る一人の少女の姿があった。ハンナだ。その瞳からは涙が静かに流れていた。ハンナはそのまま私を抱き寄せる。


 「早く起きて……アリス。」



―――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――


 「っ! はぁ……はぁ。」


 再び目を覚ました私は、村にいた。今度は自分の村ではなく、今セリーナに泊めてもらっている家だ。現在真夜中のようで、あたりは真っ暗だった。


 体中から汗を流している。うなされていたときのものだろう。私の傍らでは、ハンナが椅子の上で寝ていた。寝たきりの私を看病してくれていたのだ。


 「ありがとう、ハンナ。おかげで私、目が覚めたよ。」


 未だ眠っているハンナへ、一人感謝を告げた。ハンナが起きたらもっとしっかりとお礼を言おう。


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