どんぐり拾い
ウルタールとじゃれ合って、気が付くと三時過ぎ。
さすがに、お昼前にお姉ちゃんから貰って食べたリンゴパイだけだと、小腹が空いたわ……。
うーん、しゃぁない。
「コンビニで、何か買ってくるか~。ウルタールも一緒にお散歩しよっか♪」
「にゃー♪」
と言う事で、ウルタールを引き連れて、近所のコンビニに行くことに。
近所と言っても、結構歩く距離。
まあ、お散歩には丁度良いかな。
ウルタールとのんびりお散歩を楽しみながら、コンビニに向かう。
そんで、肉まんとポテチと炭酸を買って、またのんびりと家路に着く。
ん?
優弥くんだ。
佐竹さん家の塀の上に座って、なんだか楽しそうに体を左右に揺らしてる。
さっき、家を出た時には居なかったんだけど、お母さんと、お出かけしてたのかな?
佐竹さん家からカチャカチャと食器を洗う様な音。
それに交じって、佐竹さんの奥さんの鼻歌が聞こえる。
そのリズムに合わせて、優弥くんが体を左右に。
メッチャ可愛い♪
幽霊にしとくには勿体ない逸材だわ。
暫くして、佐竹さん家から、その音と、鼻歌が聞こえなくなる。
優弥くんが残念そうにうなだれると、私に気付いたのか、笑顔で手を振ってくれる。
勿論、手を振り返す。
そうだ。
優弥くんに、聞かなくちゃいけない事が有ったんだ。
でも、話しかける前に、周囲を確認しないと。
私以外には優弥くんは見えないもんね。
誰も居ない空間に話しかけてるとこ見られたら、また不思議ちゃん扱いだわ。
取り合えず、周りに誰も居ないかな……良し、今よ。
「こんにちわ優弥くん♪」
そう声を掛けると、こっちに背中を向けて塀の上に座っていた優弥くんが、くるっとこっち向きに座りなおして、ジャンプ。
で、ぴょんと私の前に降り立つと、礼儀正しく、腰を直角に曲げ深々とお辞儀を返してくれる。
やっぱメッチャ可愛い♪
「チョット優弥くんに教えて欲しい事が有るんだけど、良いかな?」
何だろう?な感じで、小首をかしげる。
仕草がイチイチ可愛いわね……まったく。
「この間、優弥くんから貰ったどんぐりだけど、あれって何処で拾ったのかな?実はチョット分けが有って、もっと欲しいんだ。教えて貰っても良い?」
すると、優弥くんは笑顔で大きく頷いて、付いて来てと言う風に手招きして歩き出す。
そう言えばコンビニの袋を持ったままだけど、まっ良いか。
拾ったどんぐりを詰めて帰れば良いしね。
肉まんを頬張りながら、再び優弥くんとウルタールとお散歩気分。
長閑だ~♪
お正月もこんな感じが良かったよ……。
あれ?
神社の方まで、来ちゃったよ。
でも境内の方じゃ無い。
裏山の西側だ。
うーん、なんか嫌な事思い出しそう……。
でも、猿は退治したから、もう怖い思いはしないハズ……だよね……。
優弥くんはそのまま裏山に分け入って行く。
まあ、私が頼んだんだし、付いて行くしか無いよね。
優弥くんの後を付いて緩やかな斜面を登って行くと……。
何本ものアラカシの巨木。
確か、ウェンディゴに成った参事官を縛り上げた木もアラカシだった。
優弥くんが拾ったどんぐりを手渡してくれる。
「アリカト♪優弥くん♪」
どうやら、あのどんぐりは、ここ篁神社の裏山で拾ったと言う事ね。
目に魔力を集めて、どんぐりを確認……確かに魔力を宿している。
ついでに、そのまま周りを見渡してみる。
やっぱりだ、此処に生えてるアラカシの巨木達にも、魔力が宿ってる。
これは、アレかな。
篁神社の神域の霊力で、この木々達が御神木の様に育ったって事?
うーん、でも、なんか違う気がする。
このアラカシやどんぐりに宿る魔力は、そんな神聖な感じじゃない様な気がするのよ。
それも、どっちかって言うと邪な魔力が混じってる気が……。
この魔力に妙な既視感を感じる。
ん、何あれ?
一際、その邪な魔力が宿った一角が……。
「祠だ!」
縦横五十センチ四方無い程の小さな祠。
どうやら、この祠自体が、その邪な魔力を持っていると言うより、何か邪悪な存在が此処に居た形跡の残留魔力……。
不味いわ!
何か此処に、そう云う存在が居ると言う事かも。
優弥くんを手招きで、背に隠して、右手に刀印を結んで身構える。
まったく……私の長閑な休日は、一体いつ訪れるのよ!
補足情報:
〇アラカシのどんぐりが取れる時期
十月下旬から翌年の二月中旬頃まで採取できるそうです。




