お腹空いた~
一お兄様への仕返しは、まあ、おいおい考えるとして……。
気分を落ち着けて、お裁縫の時間。
ゴロゴロする前にやる事をやっとかないとね♪
何にしようかなぁ~……まあこう言うのはお守り袋が定番よね。
ウルタールは実際、私の御守りみたいなもんだし。
何の事かと言うと、ウルタールを持ち歩く為の御守り袋を作ろうと思って。
ウルタールの御札はお札だから、お財布に入れて持ち歩いても良いんだけど、それだと、なんかの手違いで使っちゃうと不味いからね。
まあ、私がそんなアホな事をする分けは無いんだけど……問題はお姉ちゃんよ!
ウルタールは実際は十円札だけど、この世界では一万円札に見える。
お姉ちゃんが、勝手に私のお財布から抜き取って使わないとは限らない。
実際、過去に何度かそんなことが有ったわ。
勿論、後で利子付けて返してもらったけどね。
そんな訳で、ウルタールをお姉ちゃんの魔の手から守る為に、御守り袋に入れるのよ。
さすがに、あのアホな姉でも、御守り袋を勝手に開ける様な罰当たりな事はしないハズよ……多分……。
「ふ~♪集中した。チョット時間掛かっちゃったけど出来たわ♪いい出来じゃない♪」
御守り袋の中央のキジトラ猫の刺繍が大変だったけど……ウン♪ウルタールに似て可愛いじゃん♪
御守り袋の後ろには、ファスナーを付けて、ウルタールの御札を出し入れ出来るようにもしたし、完璧よ。
で、これをスマホケースにストラップとして取り付けて、そんで、ウルタールを中に仕舞って、完成。
「あっ、もうこんな時間だ」
十一時前。
まあ、集中したもんね……。
そう言えば、お腹空いた……朝ご飯食べそびれちゃった。
「取り合えず、リビングへ行くかぁ~」
菓子パンかなんか転がって無いかな?
「お母さ~ん、お腹空いた~、何か無い?……あれ?」
一階へ降りてリビングに行くと、誰も居ない……。
昨日……と言うかリープ前にソファで爆睡してたお父さんも……またどっかに飲みに行った?
已む無く、キッチンの周りを物色するが、めぼしい食料が無い。
いや勿論、冷蔵庫の中に、食材は有るよ。
でも、さすがに自炊しようと言う気には成れない……自堕落を貫こうと言う精神に反するわ!
諦めて、ローテブルの上に有る、あたりめを一つしゃぶって、ソファーに転がる。
ローテーブルの上には、お皿に盛られたあたりめと、お屠蘇の残ったタンブラーが二つ……。
あれから、またお姉ちゃんとお父さんが酒盛りしたんだわ。
それにしても……。
「お腹空いたなぁ~」
ドンッ、ドンッ、ドンッ、と重い足音。
多分、お姉ちゃんだわ。
「お早う~……」
お姉ちゃんがふらふらと、けだるそうにリビングに入って来た。
明らかに二日酔いね、アレは。
「お早う、お姉ちゃん。そうだ、お母さんとお父さんが居ないよ。何か聞いてる?」
お姉ちゃんは、一つかみあたりめを手にすると、ドカッとソファーに倒れ込む。
そんで、あたりめをしゃぶりながら……。
「聞いてるよ。お母さんは、手塚さん家へお手伝いに行くって。赤ちゃんが生まれたんだって」
そう言えば、神社の手伝いに行った時に、叔父さんがそんな事言ってたっけ。
「で、お父さんは?」
「仕事に行ったよ。六時頃だったかなぁ~」
今日からお仕事なんだ……相変わらずワーカホリックな父親だ。
ん?
「お姉ちゃん、まさか六時まで飲んでたの?!」
「えへへ♪」
「じゃあ、私達のお昼はどうなんの?」
「ああ、お母さんがカップ麺でも食べといてって」
カップ麺?
「そんなの有ったっけ?」
「戸棚に有るはずだよ……ん?……ゴメン。今朝、お父さんと食べちゃった……てへぺろ♪」
今気づいたよ、ローテーブルの上にカップ麺の容器が……それも幾つも重ねられてる……。
「てへぺろ♪じゃ無いでしょ!殴るよ、お姉ちゃん!まさか、全部食べちゃったの?!」
「だって、ほら、お酒の後のシメのカップ麺がね、チョー美味しいの♪小町も大人に成ったら、きっとお姉ちゃんの気持ちが良く判ると思う。うんうん♪」
「アンタも未だ未成年じゃん!それよりも、どうしてくれるのよ私のお昼!」
「ふにゃ~……しゃあ無い。どっこいしょーいち」
とか、ふざけた掛け声で、ふらふらと立ち上がると、リビングを出て二階へ。
暫くすると、また、ドンッ、ドンッ、ドンッ、と重い足音を立てながら、お姉ちゃんがリビングに戻って来た。
「可愛い妹に、一つ恵んで進ぜよう。ほれっ♪」
と、包装された何か丸い物を投げて寄こす。
「この距離なんだから普通に手渡してよね……って何これ?」
ズシッと案外重量感が有る。
包装を取ると……ん?パイ生地だ、でも、ボールみたいに丸い……包装紙を見ると、リンゴの絵。
「あっ!これ、パイ生地の中にリンゴがまるまる入ってるやつじゃない♪前から、食べてみたかったヤツだ♪」
「ほれほれ、可愛い妹よ♪お姉さまに何か言う事は無いかね♪」
「有難うございます。オ・ネ・エ・サ・マ!」
「ウンウン宜しい♪」
とか言いながら、お姉ちゃんは、満足げにリンゴパイを齧ってる。
何か……釈然としないわ……。
でも……甘酸っぱくって美味しい♪
昨日、「信州土産よ」て言って野沢菜を渡されたけど……こっちを先に寄越せよ!オ・ネ・エ・サ・マ!




