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そこに隠されていた物

クローゼットの奥には、立て掛ける様に数冊のノート、手帳、大きめの封筒が。

その、数冊あるノートの一つに、見覚えのある表紙、しかも、前半は切り取られている……。

「帳簿の後ろ半分だわ!」

諏訪さんが手に取って確認。


「おや?こちらの手帳は……なんと!これはローレンスさんのものですな」

上村さんが真剣な面持ちで、手帳に目を通す。

「なんと……驚きましたな。昨日、小町ちゃんが仰った通り、ローレンスさんはほぼ、事件の真相に辿り着かれていたみたいですな。例の前大使の降霊会名簿も、この手帳には実名の方が記されています。それで、どうやら、先日白金三光町で眷属に殺害された大熊氏ともお会いして、お話を伺っていた様ですな」


そういう事でしたの……。

言い換えれば、前大使の降霊会名簿の実名版を参事官が手に入れていた事に成るわね。

一つ不思議に思っていたわ。

玉山さんのお話しでは、前大使の降霊会名簿に書かれていた方達は、参事官が降霊会に参加する以前に皆さんお辞めに成られていたわ。

参事官が、どうやって彼らの事を知ったのか、また何故、具体的に殺意を覚えたのか、不思議に思っていたのだけれど……。

ローレンスさんが、大熊さんのお話を聞いて、降霊会に辿り着いた……ローレンスさんの死後、どうやってか手に入れたこの手帳で、その事を知った参事官が、この名簿を元に口封じの為、眷属や刺客を放ったと云う事ね。


「それと、公使閣下が前大使閣下を毒殺した旨も書かれていますな。どうやら……フンフン……検死をした医師を公使閣下が買収したとも書かれていますな。と言う事は、此方(こちら)の封筒は……?」

上村さんが、A4サイズの封筒を開け中身を取り出す。

「やっぱり!検死報告書ですな。それも、毒物が検出されたと、書かれていますよ。改ざんされる前の物ですな」


「でも、上村さん、疑問が有りますわ。ローレンスさんがその改ざんされる前の検死報告書まで手に入れて、何故その事を、大使閣下に御報告なさらなかったのでしょう?」

その検死報告書を手に入れて、直ぐに殺害されたと言うのならともかく、殺害された大晦日は、普通に御公務をされていたという話し。

大使閣下に報告する時間は有った筈よ。


「ええ、その事も、書かれていますな。内容が内容だけに、かなり慎重に成られていた様で。その前大使閣下殺害に使用した毒物の入手、それが無理なら、その入手経路だけでも探れないかと、奔走されていたみたいですな」

「大使閣下は、ローレンスさんは真面目な方だと仰っていましたわ。ローレンスさんに取って、その真面目過ぎたのが仇に成ってしまったと言う事ですわね……」

もしも、なんて言っても仕方が無い事だけれど……もしも、この事が大使閣下の耳に入っていれば、ローレンスさんは殺害されずに済んだかも……。


「そうですな……ですが、彼の真面目さが有ったからこそ、彼は此処までの真相に辿り着けたのでしょうな……。我々も、彼が残してくれた『前大使の降霊会名簿』、実名版では有りませんでしたが、これが有ったからこそ、真実にたどり着けましたからな。とは言え……まあ、真面目なのは、ホドホドが宜しいと言う事ですな。ハッハッハ」


「では、他の何冊か有るノートは何かしら?」

一冊のノートを手に取り、開いてみる。

当然ですけれど、英語で書かれていますわね……論文の様ですわ。

それも、ネイティブアメリカンに付いての民俗学の論文。

至って、真面目な物ですわね……あら?

ナンナ族に付いての記述も有るわ……トーテムを使って精霊に姿を変えると云う例のお祭りの事も……でも、途中で筆が止まっているわ。


彼がどの様な人生を送って、何をお考えだったかは、分からないけれど、ウェンディゴのトーテムと出会うまでは、いたって真面目に、真摯に御研究をされていたのね。

この書きかけの論文を捨てずに、隠して置いたのは、研究者としての未練の様な物がお有りだったのかも……。



一通りの御役目も終えて、倉庫の外へ。

倉庫の中に籠る死臭から解放されて、新鮮空気ですわ。


諏訪さんと、上村さんとの別れ際、上村さんが思い出したかの様に。

「そうそう、小町ちゃん。幾つか御報告を忘れてました。昨日、回収された、ウェンディゴのトーテムを握っていた眷属の右手。つまりは、栗林さんに切断された参事官殿の右手ですな。念の為指紋を採取して、鑑定してみました。今朝、警部補殿からその報告が有ったのですが、やはり、小町ちゃんの推理通り、例の睡眠薬の入っていない方のグラスと指紋が一致しました。他にも大使館の西側の塀や、公使閣下の部屋の窓付近、それと、屋根の辺りにも鍵爪の跡の様な物が見つかりました。ともかく……これでローレンスさんの殺害事件に関しては、一件落着と言う事ですな。諏訪中尉や警部補殿は見つかっていない眷属や降霊会参加者の検挙とか、まだ色々お有りの処、心苦しいのですが、私の役目は此処まで、と言う事でして。明日からは、皆さんより一足早く通常の公務の方に戻らせて頂く事に成ります。小町ちゃんには本当にお世話に成りました。有難う、小町ちゃん」


「いいえ、此方こそ色々と、貴重な経験が出来ましたわ。少々御名残惜しいですわ♪」

「ハハハ、そう言って頂けると、恐縮ですな。魔技関係のトラブルは、海外を経由してくる事が多いのですよ。ですから、魔技取締分隊の皆さんとは昵懇(じっこん)にさせて頂いています。その内また、小町ちゃんのお世話に成るやも知れませんな。どうぞ、その時も宜しく」

「ええ、勿論ですわ。その時を楽しみに……フフフ♪トラブルを楽しみになんて言ったら不謹慎ですわね♪ともかく、何かの祭は、お手伝いさせて頂きますわ♪」

「ハハハ、では、いずれまた。御壮健で、小町ちゃん」



お二人に挨拶を済ませ、(はじめ)お兄様の待たれている車まで戻る。

「小町ちゃん、済んだのかい?」

「ええ、今日の御役目は済みましたわ。ですから、この後は、(はじめ)お兄様を小間使いにして、お母様と、ミッチーとお買い物ですわ♪」

年明けから、現代(むこう)の世界も含めて色々有りましたけれど、冬休み最終日ですもの楽しまないと、ですわ♪


「ハハハ♪それでは、お嬢様、お車をお出しします」

「フフ♪宜しくてよ♪」


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