倉庫で探し物
「隠されている物と、申されますと?」
「昨日の小町ちゃんの推理で、参事官が持ち去ったと言う帳簿の後ろ半分よ」
そう言えば、昨日の朝、大使館へ向かう車の中で、諏訪さんとそんなお話をしましたわね。
「成るほど、ですわ。その帳簿の残りを元に、降霊会の参加者を一網打尽にとお考えですのね」
「そう言う事よ♪」
「でも何故、その帳簿の半分が此方に有ると?」
「それも、例の封書に書かれていたのよ。この倉庫の何処かに有る筈だと……。それで、一晩かけて調査はしてみたんだけど……結局、魔技取締分隊だけでは分からなかったの。魔力や霊力を持つ隊員が、何か隠ぺいする様な術が、何処かに施されている様な気がするとしか……」
うーーん……。
「一体何者かしら、その封書の差出人は……?」
「匿名だったから分からないわ。多分、降霊会の参加者の誰かじゃないかと、土御門中佐はお考えの様よ」
それも、何か不自然な気がするわ。
だって、もし、帳簿の残り半分が出てくれば、もしかすると、自分まで逮捕され兼ねないのだもの……。
「ともかく、この倉庫内に隠された、何か怪しい物を探し出せば宜しいのですわね。やってみますわ」
とは言った物の……寧ろ怪しい所だらけだわ。
鋼鉄の檻や、怪しい器具はともかくとして、積み上げられた木箱、並んだクローゼット、それにレンガの壁や、石畳の床も怪しいと言えば怪しいもの……。
お話を聴く限り、魔技取締分隊で、結構お探しに成った様子。
それでも、見当も御付に成らないと成ると……私一人では、お昼前には終わりそうに無いわね……。
ん?その場合、叔父様も、一お兄様も、どうやって、お母様に言い訳なさるお積りかしら?
うふふ♪それはそれで、興味深いのだけれど、お買い物を楽しみにされているお母様をがっかりさせるのは、申し訳ありませんわ。
二つ結ひのリボンを解き、カメオに魔力を。
そして、子猫形態のノワールとブランを召喚する。
「ミャー♪」
「みゃー♪」
背後で、猫派の諏訪さんが、ソワソワしているのは、まあ、放って置きましょ。
「この倉庫の中に魔法で隠されている物が有るらしいの。ノワール、ブラン、アナタ達の力を貸して頂戴♪」
「ミャー♪」
「みゃー♪」
と、二匹はそれぞれの方向に走り去る。
ノワールとブランの子猫形態は、知覚、隠密性、素早さに特化した形態。
その優れた知覚能力を駆使すれば、私が一人で見て回るよりも、断然効率的だわ。
私も、壁や床に、公使の部屋に有った隠し金庫の様な物が、隠されていないか見て回る。
暫く経って……うーん、見当たりませんわ。
相当、巧妙に隠されているのかしら……?
「みゃー♪みゃー♪みゃー♪」
ブランが倉庫の片隅に置かれたクローゼットの前で呼んでいる。
あのクローゼットに何か有るのかしら?
「小町ちゃん、このクローゼットに何か有ると言う事かしら?一応、此処に置かれているクローゼットや木箱の中は一通り調べた筈なんだけど……」
「分からないですわ。見た感じ、何か魔法が施されている様には見えないのだけれど……。でも、ブランの知覚能力は、私よりも優れていますわ。私の見えない何かを、この子は感じ取れたのかもですわ。とにかく開けて中を見てみましょ」
クローゼットを開けて中を見てみると……中は空っぽ、何も入っていないわ……でも、違和感……。
巧妙な幻術で、隠ぺい処理されているのかしら……?
恐る恐るクローゼットの中に右手を入れ、奥の板に手を当てる……これは!?
「小町ちゃん、何か分かった?見た感じ不自然な所は無い様なんだけど……」
「フフ♪ええ、明らかにおかしいですわ。諏訪さん、私の右手はどの様にお見えに?」
「クローゼットの一番奥に、手を突いている様にしか見えないけれど……違うの?」
「では今度は、真横から御覧に成って、どの様にお見えに?」
「真横?やっぱり、小町ちゃんがクローゼットに右腕を差し入れている様にしか……え?変だわ!小町ちゃんの肘が見えるわ。正面からだと、もっと奥行きが有る様に見えていたはずよ、小町ちゃんの肘よりも深く……じゃあ!?」
「ええ、幻術ですわ。それも、魔力を感じさせない程、巧妙に……。このクローゼットは二重構造に成っていますわね。諏訪さんが御覧に成られた、正面からと、横からの差分、多分、奥行十センチ程かしら、この板の向こうに空間が有ると言う事ですわ」
「それじゃあ、この板を壊せば良いのね?」
「いいえ、その必要は有りませんわ。下手に強引な手段を使えば、トラップか何か、返って危険な事に成るかもですわ。少々お待ちを……」
これも、公使の金庫と同じ様な仕掛け、魔力の波長と強弱を変えて、入力する魔力のパターンを探る……入力は五パターン必要の様ね、公使の金庫よりは、強固なセキュリティーだわ。
でも、この程度なら……少々時間を掛ければ………………。
カチャリ!
十五分程掛かってしまいましたけれど、クローゼットの奥の板が両開きに開いていく。
「やりましたな!」
上村さんが声を上げる。




