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芝浦の洋館

門をくぐり、洋館の敷地に入ると……なんというか、雑草は伸び放題、門も錆びているし、おまけに庭木の何本かは倒木したままだわ。

だれも、手入れとかしないのかしら?

お手入れすれば、結構綺麗なお庭に成ると思うのだけれど……それとも、敢えて雰囲気出す為にこうしているとか?


玄関の扉の前に来ると、まあ、当然ですれど、鍵が閉まっているわ。

再び伍長さんが、見事なピッキングの腕前を見せてくれて、十秒と掛からず開錠。

そして扉を開けると……中が暗くて、良く見え無いわね。


「伍長、全員に懐中電灯を」

「ハッ」

で、手渡された懐中電灯の光量は……暗いわ……まあ、LEDの無いこの時代の電球では、仕方が無いのだけれど、危険があるかも知れない洋館の中に、この懐中電灯の光だけで入って行くのは、心許無いわ。


「諏訪さん少々お待ちになって。そうですわね、十分ほど頂けないかしら」

「それは構わないけれど、どうしたの小町ちゃん?」

「皆さんに良いモノをお渡し致しますわ♪」


梅柄の巾着袋から、白紙の御札と、羽ペンとインクを取り出し、魔法陣を描き描き。

比較的簡素な魔法陣だから、一枚描くのに一分も掛からないわ。

人数分の11枚を描き上げ、その御札の束を左手に乗せる。


右手で刀印を結び、左手の御札に魔力を流す。

すると、一番上の御札が一枚、ふわりと宙に浮きあがり、突如、ボッ!と燃え上がる。

その火は消えず、球形に形を整え、強く白く輝き出す。

そして次の御札が浮き上がり……そして次の……。

全部で11個の光球が、私を中心に円型に並んで浮かび、周りを明るく照らす。


「小町ちゃん……この鬼火は……?」

「ウィルオウィスプを召喚したのですわ。お爺様かから教わった数ある魔法の中で、数少ない実用的な魔法の一つですの。これなら、周囲を十分に明るく照らしますし、何より両手を塞ぐことが有りませんから、懐中電灯よりは便利だと思うのだけれど、如何かしら?」

「ええ、でも、これ……どうすれば良いの?」

「少しお待ちになって」


右手の刀印で()(しめ)した人の頭上に、一つずつ光球が飛んでいく。

「これで、皆様にウィルオウィスプが取り付きましたわ♪」

「と、取りついたって、小町ちゃん!?」

「上村さん、心配いりませんわ。悪さとか致しませんから。ただ、取りついた人の頭上で輝くだけですもの。それに、放って置いても8時間程で消えますけれど、洋館の捜索が終われば、お祓いして差し上げますわ。因みに、触っても熱く有りませんのよ」

上村さんが恐る恐る触って確かめようと、手を伸ばされている。

「これは、また驚きましたな……こんなに明るいのに、まったく熱くない」


「では諏訪さん、中の方へ参りましょう」

「ええ、行きましょう。上村課長と、三浦さんは此処(ここ)で待機していて下さい。中に何が有るか分かりませんから」

「承知しました。お気を付けて」


玄関ホールに入ると、ウィルオウィスプのお陰で、辺りの様子が明るく照らし出される。

想像以上に、荒れているわね。

ん?

所々(ところどころ)、壁に引っかき傷……それに床や壁に有る黒いシミは……。

「諏訪さん、この黒いシミは……もしかして?」

「ええ、小町ちゃん、血痕だわ。一体何が有ったのかしら……」


そして、取り合えず、三人一組に成って洋館を探索、伍長さんの班は二階を、諏訪さんの班は洋館の南側を、(わたくし)と曹長さんと爺は洋館の北側を担当する事に。

玄関ホールから北側へ延びる廊下を進む。

ウィルオウィスプの光に照らし出された廊下にも、傷跡や血痕が目立つわ。

だけどその割に、死体とかは無いわね……誰かが始末したのかしら?

それとも、もしかして、単なる演出とか……?

だとすれば、かなりの悪趣味ね。


それにしても……荒れた洋館に血痕なんて……本格的にサバイバルホラーな展開に成ってきましたわ……はぁ~。


幾つかの部屋を見て回る。

荒らされていて血痕も有るけれど、突然眷属が襲ってくると云う事は無いわね。

何も見つから無い、と云う事は無いと思うのだけれど……。


そして、三つ目の部屋に。

あら?

この部屋、何か変だわ?

「曹長さん、爺、あの本棚、少し前にせり出していませんこと?もしかして……後ろに何か?」


「小官が確かめて来ますので、特務少尉は此処(ここ)で」

「ええ、お任せいたしますわ」


曹長さんが本棚に手を掛け、引っ張り始める。

念の為、いつでも氷柱(つらら)を撃ち込める様に、両手を合わせて待機。

暫くして、本棚の裏側に有ったものが、ウィルオウィスプの光に照らし出される。


「御遺体ですわね」

「はい、お嬢様、しかも、少々ミイラ化している様子、このところ冷え込んでおりましたからな、腐敗を免れたのでしょう。恐らく……死後一月(ひとつき)ほどかと」

見たところ、左腕の肩から先が無いわ。

そして、そこから大量に流れ出したと思しき血痕。

何者かに襲われ、左腕を失って、此処に逃げ込み、出血多量でお亡くなりに……と、云う事かしら。


それにしても、此処(ここ)でどんな惨劇が……なんて、考えるのも野暮ですわね。

詳細は分からなくても、大体の想像は付きますわ。

眷属なり、禍津神(まがつがみ)なりが、理性を失って暴れ出したとか、そう云う事ですわね、きっと……。


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