伍長さんの特技
玉藻堂を出て、再び二台の車に分乗して憲兵司令部へ向かう事に。
例の捕らえた眷属の男は、屋根と窓が有って、飛び降りて逃げ出される心配の無い、上村さん達の車の後部座席へ。
一応念の為、その隣に爺が乗り込む。
そして、玉山さんは私達の車へ乗り込み出発する。
もう一つ重要な事を聞いておきましょう。
恐らく、この事を知っているとすれば、命を狙われる最大の理由に成ると思うわ。
「玉山さん、ところで、その降霊会ですけれど、どちらで行われていたのかしら?」
「ああ、降霊会の会場でっか。最初は、人数も少なかったさかい、ワシらの家とか持ち回りでやっとったんでっけどな。そのうち人数が増えて、芝浦の倉庫借りる様に成りましてん。そんで、さっき話した覆面の外人さんが参加して、金持ち連中が仰山参加する様に成ると、降霊会としても羽振りが良う成りましてな。そんで、その芝浦の倉庫街の近くに有った洋館を買い取りましてな。そこでやる様に成ったんですわ。ワシが最後に参加したんもその洋館で、一階のホールでやっとりましたんや。そやけど、土手瓦の話やと、ワシらが辞めた後、その洋館の地下室を増築して、そこで降霊会する様に成った言うてましたわ。まあ、アヘンとか怪しい儀式とか、後ろめたい事すんのにその方が都合良かったんでっしゃろな。ハッハッハ」
ビンゴですわ!
「諏訪さん!」
「ええ、小町ちゃん!その洋館とやらを至急確認する必要が有るわね」
憲兵司令部に到着し、魔技取締分隊の作戦指令室へ通され、諏訪さんが忙しく指揮を執る泰治叔父様に一通りの報告を済ます……泰治叔父様は、頭を抱えてらっしゃるわ……。
「分かった、降霊会名簿の人物たちの身柄の保護が最優先だな。で、保護対象は何人だ?」
「名簿の人物は全部で16人、うち前大使と今朝遺体で見つかった大熊さんを含む四名が既に死亡。外国籍の人物のうち三名は既に帰国。保護対象となる人物のうち玉山さんは、既に憲兵司令部に同行してきて居りますので、残り八名の保護が必要かと」
「うーーむ、八名もか……仕方有るまい、また部隊の再編成をせねば成らんな。だが、我々の部隊だけでは人手が足らん……他の隊に頭を下げに行かねば成らんな……はぁ~」
ため息をつきながら、器用に義手で頭を掻いてらっしゃるけれど、痛く無いのかしら?
「それと、眷属を罠にした手口に付いても、了解した。とにかく縛られている人物を見つけても、縄を解いてはいかんと云う事だな。特に目隠しか何か、巻かれた布は絶対外すなと」
「ええ中佐、ただ小町ちゃんの話では、その目隠しに描かれていた魔法陣は、敢えて不完全に描かれたもので、術が不安定との事ですので、念の為対魔用の捕縛縄でさらに縛り上げて連行するのが得策かと」
「承知した。それと、今からその芝浦の洋館に向かうと云う事だが、さすがに、お前達だけで行かせる分けにはいかん。本当は俺が付いて行きたいのだが……。そうだな八人……と言いたいところだが、すまんが人手が足りん五人ほど連れて行け」
「ハッ!」
玉山さんの身柄を憲兵司令部に預けて、再び出発。
もう日が傾ていると言うのに、今日は本当に忙しい日だわ。
私達の乗る車の後ろに、上村さん達の車、その後ろに、伍長さんの運転するトラックが続く形で、憲兵司令部の門をくぐる。
トラックの荷台には伍長さんの部下の方が四名乗ってらっしゃるわ。
因みに、伍長さんのお名前は島田さんと言うらしい、そう言えば初めてお伺いしましたわ。
憲兵司令部を出て三十分と掛からず、目的の洋館らしき建物の前に到着したのだけれど、既に日は沈んで、辺りは薄闇に包まれている。
到着したのは良いのだけれど……閉ざされた門には太い鎖が巻きつけられ、大きな南京錠が掛けられているわ。
どうするのかしら……まさか……。
「諏訪さん。鍵がかかっている様ですけれど、その……まさかとは思うのですけれど……よじ登らないといけないのかしら?」
「フフフ♪大丈夫よその心配は無いわ。伍長お願いね」
「ハッ!」
伍長さんが門の前に行くと、何やら細い棒の様な物を、南京錠の鍵穴に差し込んでゴニョゴニョ……カチャリ!と鍵が開く。
「伍長さん、変わった特技をお持ちなのね」
「フフ♪実は、伍長は代々奇術師の家系らしいの。でも、どうも……軍務局の役人が奇術と魔術の区別が付かなかったのね、それで、うちの隊に召集されたらしいのよ。まあ、本人も軍務の方が肌に合ってるって言うし、私も中佐も重宝してるから、結果オーライなんだけどね」




