前大使の降霊会 【後編】
玉山さんはお話しを続ける。
「そんで、ダンテはんも、その事で大分落ち込んではりましてな。もう止めようか言うとりはった矢先ですわ。一年半ほど前、ダンテはんが亡くりはったんは……。その後は、その覆面の男が仕切るちゅうか、主催する様に成りましてな。ワシも、丁度もう辞めよう思とった時に、土手瓦に連れてってくれ、ちゅうて頼まれましたんや。ワシはオモロ無いから行かん方がええ言うたんでっけどな。まあ、あいつは商売のコネが欲しい言う事で、連れてってやったんですけど……そん時の降霊会は……ホンマ酷いモンでしたわ……。会場入ったら何か、煙たいねん。変な匂いするし、気持ち悪成るし……。そん時、大熊はんが慌てて、ワシと、土手瓦の手を引っ張って、会場の外へ連れ出してくれはったんですわ。大熊はんの話やと、あの煙はアヘンやと……」
成るほどだわ……色々と辻褄が合っていくわ。
公使は降霊会を、アヘン売買の為の社交場として乗っ取ったと云う事かしら……。
もし、端から乗っ取る積りだったとしたら……まさか、前大使の死に、何か係わっていたとか……?
まあ、その辺の真相を探るのは、私の仕事と言うより、現大使やストーカーさん達のお仕事ですわね。
「まあ、ワシら古参の参加者はその件以来全員辞めましたわ。そやけど、土手瓦の奴は……。商売広げるんに必死やったんやと思いますわ。土手瓦が行方不明や言う事は聞いてます。そう言えば以前からアイツも、降霊会の件で、身の危険を感じる様な事言っとりましたわ。丁度一年ぐらい前やったかな。アイツが真っ青な顔して、家来ましてな。エライ事成ってもうたと。詳しい事は頑なに教えてくれんかったけど、その日有った降霊会に新しい参加者が来た言うねん。ほんで、何やら恐ろしい儀式する事に成ったと」
「恐ろしい儀式ですの?」
「そうとしか教えて貰えんかったんですけど、もう取り返しがつかん、言うとりましたわ」
取り返しがつかない、恐ろしい儀式て……まさか。
「まあ、ワシも長い事、こう言う趣味してると……大体の想像は付きます。多分でっけど、なんぞ良く無いモノに生贄を捧げるとか、そんなもんや無いかと……。そんで、土手瓦にはもう降霊会は行くの辞める様に、繰り返し言い聞かせたんやけど、そんな事したら自分だけや無うて、息子や従業員まで危ない事に成る言うて……。そんで、結構危ない橋も渡らされてたみたいですわ。まあ、その分見返りも有ったみたいで、羽振りは良うおましたな」
「危ない橋と言うのは、やはりアヘンの売買とか?」
と、上村さんがストレートな質問を。
「多分そうやと思いますわ。他にも、なにやら柄の悪い連中使こて、色々しとったみたいですけど」
「それで、土手瓦と最後に合うたんは、二週間ぐらい前やったかな。そん時も、暗い顔して、多分自分はもう助からん、見たいな事を……。降霊会で何か有ったんか聞いたら、降霊会はもう解散に成った言うてましたわ。そやけど、最後の集会で何か有ったみたいで、それが原因で解散に成ったと。やっぱり、詳しい事は教えてくれんかったけど……多分自分は呪われる、見たいな事言って別れたんですわ……」
最後の降霊会で何かが起こった……それは、公使に降りた禍津神や眷属に関する何か……かしら?
「諏訪さん、上村さん、やはり降霊会が全ての事件の接点だと言う事ですわね」
「そうね、厳密にどんな事が起こったか迄は、まだ不明な点も多いけれど、推測も踏まえて、何が起こっているのか分かって来たわね」
「うーーん」
上村さんが難しい顔をして、腕を組まれているわね。
「上村さん、どうかされました?」
「諏訪中尉が仰った通り、事件の詳細までは分からないまでも、玉山さんのお話しは事件の核心に近づくものが有りますな。だからこそ、先ほどお命を狙われた。それは、その大熊さんと言う方でしたかな、その方が殺害された理由も同じ可能性が高い……。と、成ると……名簿に書かれている他の方々が心配に成りますな」
「確かにそうですわ!諏訪さん!」
玉山さんと大熊さんが狙われて、他の方が狙われない保証はないわ。
「玉山さん、名簿の方達の本名や御住まいを至急教えて頂きたい。あと、憲兵司令本部に電話を入れたいのでお電話をお借り……いいえ、憲兵司令部まで御同行をお願いします。その方が早いし安全だわ。またお命を狙われるか分かりませんから」
「そうでんな、承知しました。これ以上友人に死なれとうおまへんさかいな。協力させて貰いますわ」




