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御遺体確認、二人目

「到着しました」

曹長さんが車を止めたのは、銀座にある土手瓦商会の店舗裏の倉庫の前よ。

ここに来たのは二つの目的が有ったから。

一つは、社長さんの息子さんに、社長さんが傾倒していたと云う宗教団体の事で、何かお話しが聞ければと思ったの。

そして、もう一つは、今朝発見されたと云う番頭さんの御遺体を確認する為。


車を降り、倉庫の前で事件現場を警備している隊員さんに、諏訪さんが話を通し、先ずは御遺体が見つかった事件現場へ案内される。

倉庫の中は結構広く、木箱が幾つも積み重ねられ、並べられていて、ちょっとした迷路の様だわ。


「結構寒いですわね」

吐く息が白い。

屋内と言えど、広々とした倉庫は、かなり冷え込むわ。

「ええ、今朝も気温が氷点下を下回っていましたら、御遺体も凍り付いた状態で発見されたと伺っております」

案内してくれている隊員さんが、そう話ながら入り組んだ奥へと進んでいく。

「被害者の方は、土手瓦商会の支配人、従業員や顧客からは、番頭さんと呼ばれているそうですが、木島朔太郎(きじまさくたろう)氏45歳。一日の夜遅く、社長の土手瓦八十吉(どてがわらやそきち)氏と事務室を出てから、行方が分ら無く成っていたという話です。従業員の話によりますと、御遺体が倉庫で見つかったと云う事は、在庫の確認か何かをしていたのではと。御遺体が発見されたのは、本日早朝の五時過ぎ、従業員が店頭に並べる正月向けの商品を搬出しようと、倉庫の奥へ。そこで御遺体を発見した、との事です。検死の担当者によりますと、恐らく一日の夜から二日の早朝に掛けて殺害されたのではと、報告を受けております」


「この様な奥まった所に御遺体が?まるで、犯行を隠す様ですわね」

「ええ、確かにその様な形跡が御座います。犯行現場と思しき所から、御遺体を引きずって奥へ運んだ形跡や、御遺体に荷造り用の麻布を被せて有ったりと」


え?

公使やさっきの男と違って知性が有ると云うの……。

今まで、知性を感じた犯行現場は、倉庫街で見つかった山口さんの現場。

身に着ける着物を奪い、公使の御実家の紋章を、これ見よがしに残して行ったり……もしかすると何か関係が?


「こちらです」

麻布を被せられた御遺体の近くには、確かに引きずった跡が有るわ。

いつもの様にハンカチで、鼻と口を押えて御遺体の元へ。


麻布が(めく)られると、四十代ぐらいの男性の御遺体……その傷跡は……。

「小町ちゃん、やっぱり……懸念していた通りみたいね」

諏訪さんが神妙な声で、そう話しかける。

「ええ、そうですわね……」


懸念していた事、それは、年明け以降発見された他の御遺体が、公使の犯行では無く、工場で殺害された大熊さん同様、眷属による犯行、と云う懸念ですわ。

番頭さんの御遺体を確認したかったのは、それを確認する為なのだけれど……爪痕の傷の深さ、腹部の傷、そして争った様なかすり傷。御遺体の状況は、山口さんやローレンスさんの傷跡よりも、大熊さんが受けた傷跡に近い気がするわ。


それに……。

「いいえ、さらに不味い事態かもですわ」

「え?どういう事、小町ちゃん」

「先ほど、工場で捕らえた男性は、完全に知性や理性を失っていたわ。でも、この事件現場は御遺体を隠そうとしている。つまり知性を感じますの」

「知性を持った眷属の仕業と……眷属とは言え、あれ程の戦闘力と隠密能力を、知性をもって振るうとすれば……確かに脅威ね」

「ええ、ですから、この帝都には複数の眷属が潜伏していて、しかも、中には知性を兼ね備えた者も混じっていると、そう思って掛からないと、いけないと思いますわ」


無理やり仮定すれば、さっきの男が、番頭さんを殺害し、その後、知性を失って大熊さんも殺害した可能性も、皆無とは言わないけれど……それは考え辛いわね。

この倉庫には、かなり値の張る舶来品が保管されているわ。

戸締りは厳重なハズよ。

そんな倉庫に忍び込んで、あの男が番頭さんを殺害するとは考えられ無いわ。


そうね、この倉庫の中で、番頭さんを殺害出来て、かつ、禍津神(まがつがみ)を呼び出す儀式か何かに、関わっていた可能性のある人物……。

まあ、それは一人しか考えられませんけれど、でも、何で?

優秀な番頭さんを殺害する動機は?


それとも、そもそも、動機なんか存在しないとか……。

知性は残っていても、理性は消えて、食欲のまま襲った……?


うーーん、情報が足りないわ。

知性がまだ残っているなら、一番手っ取り早いのは、本人に聞く事ですけれど……何処に潜伏されてるのかしら、土手瓦さんは。


修正履歴

2020/6/5 土手瓦商会の所在変更。有楽町⇒銀座。本文の内容は追加変更無し。


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