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マニアな紹介者

「お母様、その行方不明になられた土手瓦(どてがわら)さんて、どんな方ですの?」

「あら?変な事聞きますのね?」

「ええ、もしかすると、先日から調べてる事件に何か関係あるかもと、思いましたの」

「そう、良いわ。教えて差し上げますわ……でも正直、あまり良い印象の無い方でしたから、それ程詳しくは知らないのですけれど……でも、その前にお茶にしましょ♪」


千代さんが入れてくれている紅茶は、昨日叔父様が、お母様のご機嫌取りの為に持ってらした物らしい。

どんなお茶かしら、チョット楽しみ。

ティーカップを手に取り、香りを楽しんで、一口口に含む……甘い香りと濃厚な味とコク、美味しいわ。

「叔父様、大分奮発されたみたいですわね♪」

セイロン地方産の芯芽(ゴールデンチップ)だけで作られた茶葉ね……どこの農園の物か分からないのは、叔父様のとっておきだからかしら。

普通、新芽(ゴールデンチップ)だけの紅茶は物足り無さを感じますけれど、これは、香り豊かで、濃厚な味わいですわ。


「まあ、この程度で、許す気には成りませんけれど、あの男の紅茶選びのセンスだけは認めるわ♪それで……そうそう、土手瓦(どてがわら)さんの事でしたわね」

お母様がゆっくり話し出す。

土手瓦(どてがわら)商会と云うのは、所謂(いわゆる)輸入雑貨を主に扱うお店ね。雑貨と言っても、基本的に高級で品質の高いモノが多いわね。まあ、中には安物も混じっている様ですけれど。店舗の方も、帝都に何店舗か、お持ちだったと思うわ」

お母様は、ティーカップを口に運び、一口含み話を続ける。

「それで、社長さんは……そうね、何と言うか、やり手の豪商という感じの方でしたわね。実際、一代で商会を築き上げただけ有って、御商売も上手な方ですわ。ただその分、棘のある感じがしましたわ。特に同業者の方々からは、良い噂は聞いた事は無いわね。もちろん、上客である(わたくし)や、蘆屋家の者を(ないがし)ろにする様な素振りは、御座いませんでしたけれど、プライベートなお話をした事も有りませんし、したいとも思わない方ですわね。要するに、お友達にはしたくないタイプの方、と言った方が分り易いかしら。でもー、今日初めてお会いしたのですけれど、息子さんの方は、まったく逆な印象でしたわね。感じの良い方でしたわ……ただ、御商売の方は……まあ、残念な方でしたけれど」


お母様の人物評は正確なものよ。

お父様だけで無く、お爺様迄、重要な方とお会いする時には、それとなく同行して貰ってその人物評を聞いていた程だもの。

そのお母様が、お友達にしたくないと酷評したうえで、お屋敷への出入りを許すと云う事は、それだけ商売人としては優秀な方と云う事だわ。


「そう言えば、今日息子さんが、妙な事を仰ってたわね。お父様が失踪されたのは、なにやら怪しげな宗教団体に傾倒していたからかも、と心配されてらしたわ」

宗教団体!?

諏訪さんは行方不明事件に、宗教団体が絡んでるかも、と仰っていた……話が近付いて来たわ!

「お母様、その宗教団体て、どう云うものですの?」


「さあ、世間話として伺っただけでしたから……、確か、なにか怪しい儀式の様な事をすると、お父様から聞いたと仰ってたわね。詳しい事は教えて頂けなかったらしいけれど」

怪しい儀式と云うのは、気に成りますわね。

もし、公使と何らかの関係が有るとして、諏訪さんが禍津神(まがつがみ)と称した、あの化け物と関係がある儀式かしら……?


「そうそう、儀式で思い出したのですけれど、一年半ぐらい前でしたかしら。土手瓦(どてがわら)さんに頼まれて、(わたくし)土手瓦(どてがわら)さんを紹介しにいらした方がいてね。小町ちゃんは知ってるかしら?玉藻堂の店主の玉山さんという方ですけれど」

確か、玉藻堂と云うのはお爺様が時折通ってらした、骨董品店じゃなかったかしら。

「ええ、お会いした事は有りませんけれど、お名前は存じ上げますわ」


土手瓦(どてがわら)さんとは同郷で、幼馴染と云う事で、仕方なく連れてらしたと仰ってましたけれど。それでね、その玉山さんも、何やら怪しい儀式をするのが趣味と仰ってらしたわ。なんでも、お化けを呼び出すんですって♪愉快な方よね♪でも、お化けなんか呼び出して何が楽しいのかしらね♪」

お化けって……それって!?

「お母様その儀式って?」

「お義父(とう)様にもしつこく頼み込んでたらしいわ。今度集まりが有るから、みんなの目の前で悪魔を召喚して欲しいとかなんとか。お義父(とう)様もウンザリされてらしたわ。勿論お義父(とう)様はお断りされてましたけれど。(わたくし)も見せて頂いた事が有るけれど、お義父(とう)様の召喚する悪魔なんか怖いだけですのに、その様なものを見て何が面白いんでしょうね。小町ちゃんの召喚する猫ちゃんなら、可愛いから見る価値は有りますけれど♪」

「お、お母様、今集まりがどうとか仰ってましたけれど!?」

集まりってまさか……。

「ええ、確か……講習会?……じゃ無かったわね。講演会……でも無かったし……交換会……これも違うわね。えーと……」

「お母様、降霊会では有りませんの?」

「そうそう、それよ小町ちゃん!鋭いわ♪」


これは、話が繋がって来たかもですわね。

「確か、玉山さんが土手瓦(どてがわら)さんを紹介にいらした時にも、その降霊会の話題が出てね、今度お二人で参加されると仰ってらしたわ。もしかすると、もともと土手瓦(どてがわら)さんも、何かそういう儀式とかに興味を持たれてらしたのかもですわね。それで、怪しげな宗教に手を出してしまったのかも知れないわ」


その玉山さんが参加されていた降霊会が、例の前大使の降霊会なのかどうかは分かりませんわ……けれど、確認してみる価値は有るわ。

明日にでも、上村さんか諏訪さんに連絡を取って、例の降霊会名簿に玉山さんや、土手瓦(どてがわら)さんの名前が有るか確認しようかしら。

それと仮に、玉山さんが参加されていた降霊会が、前大使の降霊会では無かったとしても、そんなマニアックな御趣味ですもの、狭いお仲間内のお話が聞けるかもですわ♪


補足情報:

〇ゴールデンチップ

ロンドン市内の高級ホテル『ルーベンス・アット・ザ・パレス』で一杯二万円の紅茶が飲めるらしいです。

因みにティーポットで注文すると六万七千円とか……。


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