酒乱
ウルタールを抱きしめ、自転車を乗り捨てた所へ向かう。
ウルタールのモフモフの毛並みが暖かい♪
「ホントあんな、おっかない猿の化け物相手に良く勝てたよー。ウルタールのお陰だよ♪」
「にゃー♪」
それにしても、今まで考えた事が無かった。
現代の世界にも、あんな妖が居て、小野小町まで魔法が使えるなんて……。
「現代の世界でもウルタールを召喚できたのは凄く嬉しいんだけど……あんな猿みたいなのが、現代にもたくさん居るのかなー……」
あんなのはレアなケースで有って欲しいよ、まったく!
自転車を起こして、一旦スタンドで立てる。
さて、ウルタールどうしようか?
このまま連れ帰って、寝るまでモフモフしたいところなんだけど……。
「ゴメンねウルタール。名残惜しいけど、また十円札に戻って」
「にゃー」
ウルタールは白く発光し、形を変えお札に戻った。
まーしゃーないよね、正月早々猫拾ったって帰ると、何かメンドーな家族会議とかに成りそうだし。
それに多分、今の私ならいつでも召喚できると思う。
体に魔力の流れを感じる……蘆屋小町程じゃ無いけれど、多分一割ぐらいの魔力は有るんじゃないかな。
魔力を込めて新しい魔法陣を描くには、一割程度じゃ足りないかもだけど、ウルタールの魔法陣を発動させるには十分だわ。
「ま、今度みんな出かて誰も居ない時にでも、お部屋で試してみよっと♪」
自転車のスタンドを払って、サドルに跨る。
「もう、真っ暗だ。お腹減ったし、早く帰って、晩御飯食べよ♪御節まだ残ってたかなー?あっそうだ、お母さんにお餅焼いてもらおっと♪磯辺焼きにしよっかなー♪黄な粉も捨てがたいよねー♪」
「ただいま……、はぁー……」
リビングのソファーに、明らかに酔い潰れて寝てるお父さんが居る……。
娘が生死を掛けたバトルを繰り広げてた時に……まったく、この親父は……。
「おかえり、小町。ゴメンね、御節みんな食べられちゃったのよー。今から何か作るからちょっと待てて♪」
みりゃ分かるよ。
お父さんが寝てるソファーの前のローテブルに、食い散らかされて空になった重箱が有るもの。
しかも、お箸が二膳出てる……アイツだ!。
ガバッ!
いきなり背後から馴れ馴れしく抱き着いてくる奴がいる。
「こーまちっ!おっかえりー!」
しかも酒臭い……。
「お姉ちゃんただいま……って。酒臭いよお姉ちゃん、未成年なんだからお酒飲んじゃダメでしょ、まったく!」
「何固い事言ってるの♪お屠蘇よ、お・と・そ♪」
「お屠蘇は、タンブラーで飲むもんじゃないよ。お姉ちゃん!」
「えへへへ♪」
小野巴、不肖で自由奔放すぎる姉は、黙って立ってるだけなら、かなりの美人だ。
長く艶のある黒髪を姫カットに揃え、色白で如何にも儚げ薄倖そうな容姿に、老若男女問わず殆どの人が騙される。
「それと、私に言う事は無いの?」
「うーーん♪何か有ったかな~♪ぶっはははは♪うそウソ、冗談だよ♪我が可愛い妹よ♪ゴメンゴメン、いやーホント、ゴメン♪」
と、私の肩をパンパン叩く……どう考えても謝罪してる態度じゃ無い……。
「それと小町、デッカイお猿に襲われたんだって♪ぶぁははは♪」
こいつ!
「殴るよ、お姉ちゃん」
「イヤー、ゴメンゴメン♪そう言やー、デッカイ猿と言えばさー、この街に伝わる都市伝説で、そんなのあったなー♪」
「えっ!?何それ?」
「おっ♪聞きたいー?聞きたいのー?」
くそーーー!
「教えて下さい。お姉ちゃん」
「お・ね・え・さ・ま♪」
くそー!この酔っ払いめー!
「教えて下さい。オ・ネ・エ・サ・マ!」
「しゃーない。可愛い妹の頼みだ教えて進ぜよう♪むかーしむかーし、と言っても数十年前ね。群れを追われたと思しきボス猿が、この街に降りて来て、人に襲い掛かったりして、悪さをしていたそうなー。それを見かねた猟友会のベテランハンターさんがその猿を撃ったそーなー。弾は命中し、血を流しながら逃走した猿は、その後誰も見ることは無かったという話じゃよ」
なんか、雰囲気出して話してる割には、猟友会のおじさんが、猿を撃ったってだけの話じゃん。
「それのどこが都市伝説なのよ!」
「まー聞きなされ、お嬢さん。話はここからじゃよ♪」
くっ、殴りてー……。




