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アルバイトなんて!

階段を下りて一階のリビングに。

お母さんは御節(おせち)の準備してるみたい。

さて、どうやって声を掛けようか……。

そうね、下手に聞くより、ただ見せて反応を見るとか良いんじゃない?

その方がいざという時のダメージが少なそうだわ、よし、それで行こう!


「お母さん、明けおめ♪」

新年の挨拶をしながら、十円札を見せる。

それも、あえて魔法陣の方を。


「明けましておめでとう。小町……って、もう!この子は……猫ちゃん可愛く描けてるけど、一万円札に落書きなんてして!バチが当たるわよ。それより、早く朝ご飯食べなさい。お雑煮出来てるわよ」

猫の絵(魔法陣)を見せる事で、あえてチョット不思議ちゃんを装って、致命的な不思議ちゃん認定を避ける、いわば肉を切らせて骨を断つ的な作戦はうまくいったわ。

ん?この例えって有ってるのかな?まあ良っか。

だけど……やっぱり、お母さんには一万円に見えるのかぁー……それじゃ、二十円札持ってきても売れないかもじゃん!

これは、考察の必要アリね。


その前に、先ずは朝食を……ん?

「あれ?お母さん。お父さんとお姉ちゃんは?未だ寝てるの?」

「それなのよー、今日は二人とも居ないから、カウンターの方に座って」

そう促されて、キッチンカウンターの前にある、少し背の高いカウンターチェアに座る。


「聞いてよ小町。お父さん、昨日近所のお宅で遅くまで飲んでそのまま寝ちゃって、今もイビキかいて寝てるって!」

まったく飲んべな親父だ。

まあ日頃、IT企業に勤めてて忙しいから、たまにはハメを外したいのかもね。


カウンターに重箱に入り切らなかった御節(おせち)の余りが並ぶ。

う巻き、かまぼこ、数の子、それとお雑煮。

(うち)のお雑煮は、お母さんの実家が大阪だからか、白味噌のお雑煮だ。

白味噌なのは良いとしても……。

「お母さん、お餅がドロドロに溶けてるんだけど……」

「何言ってるの、その溶けたお餅が美味しいんじゃない♪」

まあ、いっか、こう言うのもある意味家庭的で。

大正(むこう)で、千代さんの作った料亭並みのお雑煮食べたし。


「それで、お姉ちゃんは?たしか、叔父さんとこの神社で、巫女のバイトするって言ってたけど、もう行ったの?」

「それが、(ともえ)ったら、急に友達と旅行だってさっき出てったのよ。なんでもお友達の実家の旅館で、急にキャンセルが出て部屋が空いたんだって。それで、何人かのお友達で泊りに行くことに成ったみたいなの」

「相変わらず自由奔放だなぁー、お姉ちゃんは。ハフッ♪」

溶けたお餅も、味が染みてて案外良いかも♪


「なに他人事(ひとごと)みたいに言って、呑気にお雑煮(すす)ってんの」

「ん?どう云う事?」

「さっき、お義兄(にい)さんと電話で、(ともえ)の代わりに小町が手伝いに行くって話付けたから♪」

「な、な、何で勝手にきめるの!!横暴だ!!」

「良いじゃない、三が日だけよ」

大正(むこう)であれだけ働かされて、現代(こっち)でも働かされて三が日が潰れるなんて、絶対嫌だわ!

現代(こっち)じゃ喰っちゃ寝しまくるんだから!


「絶対いやよ!それに、法律で中学生のバイトは禁止されてるんだから!」

「それは大丈夫よ。アルバイトじゃなく、あくまで親戚の神社をお手伝いするだけだから。」

「それって、つまりタダ働きって事?尚のことお断りします!」

「小町!お母さんを見くびらないで!そこは、ちゃんと話付けてるわよ。通常のお年玉五千円、プラス一日に付き八千円がお年玉に加算されるわ。

しかも、三が日全てお手伝いすれば、千円ボーナスが付くの。全部合わせれば三万円よ。三日で三万円よわるくないでしょ?勤務時間は朝十時から夕方五時まで。どう?朝はゆっくり出来る様にも交渉しておいたわ。ちゃんと小町のこと考えてるでしょ♪」

うーん、条件は悪くないけど……そういう事じゃ無いんだよなぁー。

働きたくないの!


「それに、小町が行って上げないと、正和(まさかず)くん一人で可哀想だと思わない?」

今度は情に訴えてきたか……。

小野(おの)正和(まさかず)、二つ上の従兄だ。

叔父さんが宮司を務めてる(たかむら)神社は、近所にある小さな神社で、由緒は正しいらしい……詳しいことは知らないけれど。

叔父さんは数年前奥さんを無くして、叔父さんと正兄(まさにい)の二人暮らし、神社も二人で切り盛りしている。

まあ、普段は参拝客も少ないから二人で十分なんだけど、お正月は小さい神社とはいえ、それなりに参拝客が来るわけで、結構大変らしい。

それで、今年はお姉ちゃんが巫女のバイトすることに成ってたんだけど……。

まあ、確かに正兄(まさにい)の事は気の毒とは思うんだけどなー。


「仕方がない、まさか小町がここまで(かたく)なだとは思わなかったわ」

ふぅー、やっと諦めてくれたか。

じゃあ、朝ご飯も食べたし、お部屋でゴロゴロするんだぁー♪


「待ちなさい、小町。仕方ないわ、こうしましょう。小町が欲しがってたスマホの新機種でどう?手を打たない?」

うっ!そ、それは……。

そうきたか、蘆屋小町(わたし)の二十円札を確実に換金できる保証が無い以上、これは喉から手が出るほどの好条件だわ。

「しゃぁない、座ってお守り売るだけで良いのよね」

「やってくれるのね。偉いわ♪頑張ってね♪」


結局、上手く丸め込まれてしまった……。

五年前に退社して専業主婦に成る前は、お父さんの務めてる会社で営業部長してただけの事はあるわ。

さすがだわ。

因みに現在お父さんは、開発部技術課長という話しは、あまり突っ込まないで上げよう。


まあ、仕方ない、仮に三が日が潰れても後四日冬休みが残ってるし、その四日は何としても死守するんだから!



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