一緒に付いてきましたわ♪
「そうですわ、マナちゃん。リンゴを一つ頂いてしまいましたけれど、宜しかったのかしら?」
もし、このティル・ナ・ノーグのリンゴの木とマナちゃんとの繋がりが深いと言う事なら、勝手にもいでしまったのは不味かったかも。
それに、いま気付きましたけれど、このリンゴの実にも魔力が宿っている。
その効能かしら、何口か齧っただけですけれど、ここの所溜まっていた疲れが嘘みたいに消えましたわ……体が軽い。
木の周りを踊っていたマナちゃんがピョンとジャンプ、リンゴを一つ掴み、そのままもぎ取ると私に差し出す。
「宜しいの?」
マナちゃんが頷く。
「有難うですわ♪」
「そうですわ♪マナちゃん、実は此れから、私のお友達のお見舞いに参りますの。出来ればその子にも少し食べさせて差し上げたいのですげれど、もう幾つか頂いても宜しいかしら?」
マナちゃんが頷いて、許可を貰って、お見舞い用のリンゴを幾つかもぎる。
もしかすると、梨咲ちゃんの病状に良いかもですわ♪
あら?
先ほどは、もいだリンゴの方に意識が行ってしまって気付か無かったけれど、枝からリンゴをもいだ矢先、新たな蕾が育ってすぐさま花が咲き、実に成って大きく赤く育つ。
恐らく、ティル・ナ・ノーグのリンゴは幾ら収穫しても、成っている実の数は変わらないと言う事かも知れないわね……素晴らしいですわ♪
でも、あまり収穫し過ぎるとどうなるか分かりませんし、市場に回す様な事をすれば、リンゴ農家の皆さんがお困りに成りますものね。
自重は大事ですわね。
爺に頼んで持って来て貰ったバスケットにリンゴを幾つか詰めて、再び車止めの方に戻る。
此れから、梨咲ちゃんのお見舞いですわ♪
爺が運転席に座り、後部座席のドアをイシャイニシュスさんが明けて下さる。
「有難うですわ♪」
そうお礼を言って、後部座席に乗り込む。
リンゴの詰まったバスケットは右の座席に置いて、左の座席に落ち着くと、ピョンと私の膝の上にマナちゃんが飛び乗る。
「マナちゃん、如何しましたの?もしかして御一緒に?」
マナちゃんが頷く。
うーん、どうしましょ。
マナちゃんが悪さするとは思えないけれど、梨咲ちゃんがビックリするかも。
でも、楽しそうなマナちゃんにダメとは言いずらい……。
「仕方有りませんせんわ。御一緒に参りましょう♪」
まあ、お見舞いのリンゴはマナちゃんの提供ですしね。
車が走り出す。
相変わらず、冷たい風が車内に入ってくる。
「寒いですわ……ん?気のせいかしら温かく成ってきましたわ」
マナちゃんですわ!
マナちゃんの周りの空気がポカポカと温かい。
春先に日向ぼっこしている様な温かさ。
さすがですわね。
太陽の乙女と言うお名前は伊達では有りませんわね♪
冬の寒い時期は、ずっとこの子を連れて歩こうかしら。
でも、夏場はどう成るのかしら……その事だけが心配ですわ……。
程無く、長い塀の続く通りに差し掛かる。
この塀の向こうは、油小路邸。
梨咲ちゃんのお家よ。
蘆屋邸の敷地も相当広いけれど、梨咲ちゃん家の敷地はそれ以上。
蘆屋財閥は日本有数の財閥と云っても、どうにか十本の指に入る程度。
でも、油小路財閥は……そうですわね、五本の指には余裕で入りますわ。
車は正門の前に着くと、見慣れた蘆屋家の車をみとめた守衛が門を開き、中へ。
正面には、赤レンガ作りで三階建ての宮殿の様な建物がそびえている。
確かチューダー様式と仰ったかしら。
蘆屋邸より、三割増しは大きいですわね。
玄関正面の車止めに付くと、油小路家の新しい執事さんがお出迎え。
以前は、事件を起こされた黒川さんがお出迎えされていたのですけれど……。
執事さんの案内で、二階の通い慣れたお部屋の前に。
そして、ノックをして扉を開けて中へ。




