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植えてみる

まあ、手伝って頂くと言ってもトゥーアサ・ジェー・ザナンを埋める穴を掘るぐらいですから、スコップを一つと水の入ったジョウロを手に付いて来て貰う。


お母様のバラ園を抜けて、お爺様の日本庭園との間にある一角。

奥行約五メートル、幅十メートルほど、レンガで区切られたその内側は、土がむき出しに成っていて何も植えられていない。


本来だと、リンゴの木を植えるのなら、それに合う様に土作りをしなくてはいけないのでしょうけれど、この種は普通のリンゴでは有りませんわ。

ティル・ナ・ノーグのリンゴの種ですもの、重要なのは肥料より魔力ですわね。

恐らく、この魔法陣に、リンゴを育てる術が施されていると思うわ。


ともかく、植えてみて、種の発芽や苗の育ち具合を見て、何かしら魔法的な微調整をするしか有りませんわね。

魔力が足りない様でしたら、お爺様の地下のお部屋から、精霊結晶の欠片か何かを取ってきて埋めてみようかしら。


それで、先ずは穴を掘りませんとね。

花壇の土には霜が降りてますわ。

とっても冷たそう……。


「俺が掘ろう」

イシャイニシュスさんからスコップを受け取り、躊躇(ためら)っていると、それを見かねたのかイシャイニシュスさんが申し出て下さる。

まあ、此処(ここ)は御厚意に甘えましょ♪

「宜しくお願いしますわ」


「それで、どのくらい掘るのだ?」

「ええ、この御本をページを広げた状態で埋めれる程に、お願いしますわ」

「本?リンゴの種では無いのか?」


「フフ♪此方(こちら)を御覧に成って。この魔法陣の中央にリンゴの種が貼り付けて有るのですけれど、この魔法陣何となく何処(どこ)かで見たモノに似ておりませんこと」

「ん?この図柄……何となくだが、ウェンディゴのトーテムの力を封印する布に書かれていたモノに似ている様に思うが……」


「フフ♪さすがですわね。恐らく、同じ人物が描いた魔法陣ですわ。オリジナルの魔法陣にはその魔法陣を編み出した人物の癖と言うか、特徴の様なモノが御座いますの。しかも、この魔法陣を描似た人物は、西洋人で有りながらネイティブアメリカンの集落で指導者的な立場にある人物とか」

「成るほど、あの布を俺の集落に譲ってくれた者も、西洋人で、他の集落の酋長(チーフ)だからな」


イシャイニシュスさんが掘ってくれた、普通の種を植えるには(いささ)か大きい穴にトゥーアサ・ジェー・ザナンを置き、魔法陣の有る最後のページを開く。

そして、魔法陣に手をかざす……少々緊張しますわね。

なんと言っても、恐らくこの世界に……いいえ、大正、現代、平和の三つの世界を股にかけてもこれ一つしか御座いませんもの。


かざした手から慎重に、ゆっくりと、魔法陣の反応を確かめつつ魔力を注ぎ込む。

魔法陣がオレンジに輝き出す。

起動し始めた見たいですわね。


でも、まだ注ぐ魔力が必要ね。

魔法陣に暴走の気配も御座いませんし、もう少し大胆に注ぎ込んでも問題無さそう。


それから五分程、魔力を注ぎ続けると、魔法陣から魔力が零れそうな気配。

「これぐらいで、宜しいかしら」


魔法陣は依然オレンジ色に安定して輝いていますわね。

問題無さそう。


「では、イシャイニシュスさん土をかぶせて頂けるかしら」

「ああ、分った」


で、最後に盛られた土の上から、ジョウロで水やり。

このリンゴの種に水が必要かどうかは分かりませんけれど、こう言うのは気分の問題ですわ♪


「イシャイニシュスさん、有難うですわ。助かりましたわ♪」

「いや、大した事はしていない。穴を掘って埋めただけだ」


「フフ♪それでもですわ♪それと、このリンゴのお世話は、私がしますけれど、時々で構いませんわ。様子だけでも見て頂けると助かりますわ」

「ああ、良いだろう。承知した」


ともかく、一仕事は終えましたわ。

まだ、外は薄暗く、北風が寒い。

「二度寝も出来そうに有りませんし、お部屋に戻って紅茶でも頂こうかしら」


リンゴの木は実を付ける程に育つまで、何年もかかるでしょうけれど、どんなお味かしら楽しみ♪


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