こじつけてみる
次回からは、再び大正の世界のお話しに成ります。
……Zzz……ハッ!
目が覚めて、膝の上に置かれた表紙の無い革装丁の本と、その上の魔法陣が描かれた十円札が目に入る。
「ここは……?」
電車は停車してる。
外の風景は、茜色に染まった見覚えの有る山、そして、なじみの有る最寄り駅のホーム……。
プシュー!
ドアが閉まりかける音。
「ヤバい!」
本と十円札を引っ掴んで、慌てて滑り込む様に、車両の外へ!
背後で扉が閉まる音。
なんとか、セーフ♪
走り去る電車は、いつもの見慣れた電車。
そうだ、今の時間は?
ホームの時計を確認すると……5時丁度だ。
ん?
じゃあ、さっき迄の事は……夢……なんかじゃない!
だってこの本、トゥーアサ・ジェー・ザナンじゃん!
やっぱ、さっき迄平和の世界に居たんだ……。
「でも、帰って来れたし♪おまけに、トゥーアサ・ジェー・ザナンまでゲット♪それもこれも、ウルタールのお陰だよ♪」
お札に戻ったウルタールに感謝のキス。
「さてと、あんだけケーキ食べたけど、平和で歩き回ったせいか、結構お腹空いた~。早く帰ろっと♪」
家に帰った後、結局夕食を完食してしまった……。
今日はあんだけ動き回ったから、太ったりしないよね、カロリーは消費されたよね。
そう言えば、帰ったらお姉ちゃんの菓子折りのストックがまた増えてた。
一体どこから、どうやって……謎だわ……。
まあ、それはともかくとして、謎と言えば、あの平和の世界はホントに謎だったわ。
何だったんだろう、あの世界は……。
見慣れた小野小町の部屋に戻って、椅子に座って、ぼんやり窓の外を眺めながら、今日の出来事を考察。
性格なのよね~。
こう言うのって、何か自分なりの答えを出さないと眠れなくなっちゃうのよ。
お姉ちゃんのいい加減さが羨ましい。
それにしても、シュールで不思議な世界だった。
でも、無意味にシュールって事でも無いのよ。
子供達が見せた、かごめかごめは最初は、意味不明で単なるイタズラかと思ったけど、迷える魂を送り返す術か何かだった。
電車の中から眺めただけだから、確証が有るわけじゃ無いけど。
多分、他の事も何か意味や理由が有るハズ。
例えば。
「あの長い夕日は、まあ、単なる天体現象ね。地理的に白夜の有る地域とか、もしかすると自転周期と公転周期が同じで、あの町はずっと夕日が出てる地域とかかも」
まあ、これも確証は無いけど。
じゃあ、町に大人が居なかったのは何故だろう?
ホントに居なかったのかな?
居なかったんじゃ無くって、見えなかったとか……。
「小野小町はあの世界では不安定な存在だった。あの世界にとって、この世の物とも、あの世の物とも付かない存在……だから、あの世界の人達には見えない存在……そして同様に、私からもその人達を見る事が出来なかった……とか?」
でも、子供達には、小野小町が見えた。
「多分、あの世界の子供達には、そう言う不可思議な存在を見る能力が有るのよ。そして、そう言う存在から身を守る為、かごめかごめの術が存在する……いいえ、二度目に会った時は、パンダちゃんは逃げ出したりしなくて、私の手を引いて円陣の中に誘ったわ。だから、もしかすると、迷った魂を幽世に返すのが、あの世界の子供達の遊びを兼ねた義務、とかだったんじゃ無いかな」
でも結局、それも確証は無いけど。
そんで、一番不条理だったのは、あのキツネ。
キツネがキツネのお面付けてるって……さすがに不条理過ぎて、意味不明よ!
まあ、誰かがイタズラしてお面を着けたとかだろうけど……。
「お面の事はともかくとして、何であのキツネは、小野小町をトゥーアサ・ジェー・ザナンの千切り取られた表紙なんかに……」
多分あのキツネは、千切られた表紙じゃ無くって、トゥーアサ・ジェー・ザナンに導きたかったんだと思うんだけど……そうする意味は?
ストーカーさんが言ってた因果って奴?
何かしっくり来ない。
「もっと、明確な理由が有ったハズ、例えばそう言う魔法……とか?」
それと無く、目に魔力を集中させてトゥーアサ・ジェー・ザナンを眺めてみる。
やっぱりオレンジ色の魔力。
大正の英国大使館の書庫で見た時と同じ魔力の色。
ん?
千切り取られた表紙にも、紫色の残留魔力が見える!
良く調べてみると、この表紙、二枚の皮が重なって作られてる。
焦げた断面を見ると、その二枚の皮の間がスリットに成ってて、中に紙の切れ端が入ってた。
勿論焦げてて、良く判んないけど、魔法陣の端っこの部分が少し残って見える。
「書庫で見た時は気付かなかったけど、こんな仕掛けが有ったんだ……」
その錬金術師が、ストーカーさんのお爺さんに話した因果を結ぶ魔法がこれだったのかも。
「例えば、炎に反応して本を異世界に転移させる魔法陣とか、そんで、キツネに私を導かせる様な魔法……とか?」
じゃあ、小野小町があの世界に飛ばされたのも、何らかの魔法が働いた?
でも何時、何処でそんな魔法を掛けられた?
現代じゃ無い筈。
と成ると大正だけど……そうなると、書庫でこの本に触れた時?
それとも、ストーカーさんから焼け残った表紙を受け取った時……。
「あの焼け残った表紙が、あの平和の世界へ向かう電車のチケットだった……とか?」
「うーーん!結局、どれもこれも確証も根拠も全く無いわ!」
幾ら頭をひねっても、推測にも成らない。
こじつけの範疇を出ない。
「でも、無理からに納得しようとしたら、此処までが限界ね……」
ともかく、トゥーアサ・ジェー・ザナンと私の因果が繋がって、これが私の手に有る。
「今はそれで、納得しましょ♪」
冬休みの残りの二日は、念願の食っちゃ寝ゴロゴロを貫いた。
軍資金は六十五万円から、自由が丘の食べ歩きとトゥーアサ・ジェー・ザナンの代金で、残り四万円程に成っちゃったけど、まあ中学生のお小遣いとしては十分よ。
それに、お正月のバイト代とお年玉もあるし、当面金欠で困ることは無いわ。
いざと言う時は、大正から質草を持ってきて、玉藻堂に持ってけば良いしね♪
で、七日の夜、夕食を食べた後、玄関で御見送り。
「巴、体に気を付けるのよ。アナタに言っても無駄かもだけど、不摂生しちゃダメよ」
「分かってるって♪お母さん♪ちゃんと御飯は、誰かが作ってくれたの食べてるし♪」
やっぱり東京でも、ぬらりひょんしてんだ……。
「カップ麺とかはたまにしか食べないから♪」
私のお昼食べちゃったくせに……。
「お酒も飲んじゃダメだよ、お姉ちゃん。まだ未成年なんだから」
「もう、あれはお屠蘇よ♪」
東京の大学に通う姉は、向こうでシェアハウスに住んでる。
お正月の帰省も終えて、今から車で向こうに帰るからそのお見送り。
ともかく、これで明日からは静かな日常が戻ってくるよ~♪
と言っても、ちょくちょく帰省して来ては、迷惑だけを残してまた去ってくってのがいつものパターン。
「あ、そうそう小町、週末空けといてね♪拉致りに来るから♪んじゃ、アディオス♪」
「えっ!?何それ?どう言う事よ!お姉ちゃん!」
バタンとドアが閉められ、ブルルン!とお姉ちゃんの軽自動車が走り去る。
拉致るって、どう言う事よ!
まったく!
週末は姿を隠さないと、身の危険だわ!
身勝手でアホなお姉ちゃんの捨て台詞を気にしながら、部屋に戻る。
冬休みも終わって、明日は始業式……学校だ。
まあ、この二日はメッチャ久しぶりにゴロゴロ出来たし、ワーカホリックのリハビリも出来たと思う……多分。
「ふあぁ~♪んじゃ、そろそろ寝よっかな~♪」
あれ?
眩暈だ。
まあ、そんな予感は何となくしてたのよ……。
でも、今回は、大正のお仕事もひと段落してるし、どっちにしろ学校だし、まあ同じ事ね。
「そうそう、トゥーアサ・ジェー・ザナンを持ってかないと♪」
小野小町だと、この魔法陣を起動することが出来ないし、そもそも、リンゴの木を植えるスペースは家の庭には存在しないわ。
だから、大正に持って行かないと。
「それと、優弥くんと集めたどんぐりも、持ってこ♪」
コンビニの袋一杯分ある。
当面、不自由し無さそう。
まあ、このどんぐりを使って対処しないといけ無い状況なんて、早々有るとは思えないけどね。
トゥーアサ・ジェー・ザナンと、どんぐりの詰まったコンビニの袋を抱いて、ベットに潜りこむ。
そういえば、二つも同時に持っていけるのかなぁ?
まあ、試してみれば良いって事で♪
「ティル・ナ・ノーグのリンゴってどんな味なんだろ♪チョー楽しみ♪ん?あれ?そう言えばリンゴって……実が成るまで……どのくらい……掛かるん……だろ…………Zzz……」
毎日投稿は厳しく成って来たので、次章から投稿ペースを落とします。
ゴメンナサイです。
なんかの拍子でバズってテンションが上がればペースを戻すかもですが……。
引き続きよろしくお願いします。




