御霊を返してる?
思いもよらなかった所で、トゥーアサ・ジェー・ザナンを手に入れる事が出来たのは良かったんだけど……。
結局、一番の問題が残ってる。
どうやって、帰れば良いのよ!
もし、トゥーアサ・ジェー・ザナンと私を結ぶ因果って奴で、この世界に連れてこられたって事なら、そろそろ帰してくれても良いと思うだけど、こっからは自力で帰れとか、そう言う無責任な話じゃ無いよね。
六十万円も払ったんだから、最後まで面倒見てよね!
そんな私の不安を他所に、ウルタールはスタスタと先を歩いてる。
取り合えず、ウルタールを信じて後を付いてくしか無いんだけど……相変わらず街並みに変化はない。
茜色の空も相変わらず。
でも、スマホで時間を見ると、六時四十五分。
あと十五分で、ささらぎ駅に電車が来る。
マジで、怖く成って来た……。
「にゃー」
ウルタールが立ち止まった。
で、路地裏とも呼べない様な、家屋と家屋の隙間を見てる。
で、私を振り返る。
で、もう一度「にゃー」と。
「えーーと、ウルタールさん。まさか、ここ通れと?」
「にゃー♪」
マジですか~……。
その隙間は、狭いだけじゃない。
此処からだと出口が見えないくらい長そう。
そんで、メッチャ暗い、メッチャ怖い。
「えーーと、ウルタールさん。多分、他にルートが有ると思うのよ。考え直してみません?」
取り合えず説得してみる。
でも、ウルタールは首をフリフリ「にゃーにゃ!」と。
多分、「だーめ!」って言ってるんだと思う……。
しゃあ無い……。
已む無くウルタールの後に付いて、その狭い隙間に体をねじ込む。
やっぱメッチャ怖い。
いや今更、お化けが怖いとかじゃ無いのよ。
仮に、そんなの出てきても、私とウルタールで退治出来ると思うし。
そんなのより、私が恐れてるのは……Gよ!
木造の古い家屋同士の隙間。
暗くて狭くてジメジメしてて……絶対奴らの住処に成ってる。
先に進んでく。
狭い通路とも呼べない隙間は一直線じゃなく、途中右に曲がってそして、左にも曲がる。
あっ、出口の光が見える。
カサカサ!
「キャッ」
思わず小さな悲鳴を上げてしまったけど……多分、ヤツの気配。
いきなり飛び掛かってくるとか、背中に張り付くとか、ホントやめて……。
出口から差し込む夕日の光が、後もう少し。
カサッ、カサカサ!
「ヒッ!」
奴の気配がすぐ背後まで……。
そんで、必死で外に飛び出す。
「ふ~、出れた……。ハッ!」
気配に振り返る。
さっき迄、自分が居た空間に、Gが触覚をフリフリ……キモッ!
危うく追い付かれるところだったわ!
ん?
おもむろにウルタールが、スタスタとGの所まで行くと、猫パンチを振りかざす。
「ストップ!」
慌てて止める。
「ウルタール、バッチイのは触っちゃダメ!いい、分った?」
取り合えず言い聞かせておかないとね。
「にゃー♪」
分かってくれたみたい。
で、此処は……。
「あっ!」
Gに気を取られていて、今気付いたけど、見覚えのある木造のお店が並んでる。
最初に入ったお米屋さんとか、タバコ屋さんもある。
駅前の商店街だ。
「ウルタール♪アンタエライよ~♪」
抱きしめて、スリスリ。
「にゃー♪」
もし、Gに猫パンチしてたら、この行為は躊躇われるとこだったわ♪
そうだ、今の時間は……六時五十七分。
あと三分。
何とか、間に合いそうね。
急いで、ささらぎ駅に走っていく、改札の無い古めかしい狭い構内を、出た時と同じ様に「しつれいしま~す。通らせて貰いま~す」と横切ってホームに。
時間は、六時五十八分、既にホームには例のレトロな車両が止まってる。
余裕ってわけじゃ無いけど、ともかく間に合ったわ。
二両編成の前の車両に乗り込んで、隅っこの座席に落ち着く。
膝にトゥーアサ・ジェー・ザナンを乗せ、その上にウルタールを乗せて抱きしめる。
ペットを膝に乗せるのはマナー違反かもだけど、まだ、何か有るか分からないし、ウルタールはもう暫くこのままにして置こう。
何となく、車内を見渡す。
他には誰も居ない。
後ろの車両にも、人気は無い見たい。
これで、ホントに現代の世界に帰れるのか、未だ不安だけど、でも、少し落ち着いたわ。
「か~ごめ♪か~ごめ♪」
えっ!
外から、微かに歌声が聞こえる。
振り返って外を見ると、向こうのホーム越しに見える乾いた田んぼで、お面の子供達が、かごめかごめをしてる。
見覚えの有るお面も。
パンダちゃんやヒーローくんだ。
そう言えばあの、かごめかごめは何だったんだろう?
あの子達は、案山子を召喚していたけど……。
両目に魔力を集中させて、目を凝らして、子供たちを眺めて見る。
やっぱり、黄色い魔力が見える。
あっ!
かごめかごめの円陣の中央に、靄の様なモノ。
大正から持ってきた二十円札や、優弥くんのどんぐりの様。
しかも、あれって……何となく人の形に見える……。
実体も無く、魂だけの不安定で、不確定な存在。
「迷える魂……」
そんな単語が口から洩れる。
「うしろのしょうめん だあれ♪」
円陣の中に六芒星が黄色く輝いて現れ、案山子が召喚される。
あの時と一緒だ!
召喚された案山子は、本来の案山子には到底不可能な動作。
ゴムの様に腕を曲げ、子供達の円陣の中央に浮かぶ人の形をした靄に抱き着く様に巻き付く。
そして、案山子と靄はゆっくりと上空に舞い上がると、弾ける様に黄色い粒子へと変わる。
子供達は、拝む様に両手を合わせて、その様子を見上げてる。
「迷える御霊を幽世に返してる……」
何となくそんな気がする。
確証は無いけれど……。
私も、この世界では不安定で、不確定な存在。
多分あの時、パンダちゃん達には私もあの靄の様な存在に見えたんだ。
だから、私の魂を送ろうと、かごめかごめを……。
ジリリリリン♪
発車のベルが鳴って、プシューとドアが閉まる音、そしてゆっくりと電車が走り出す。
パンダちゃんがこっちに気付いたのか、見送る様に手を振ってる。
何となく手を振り返す。
そして……いつもの眩暈…………。




