思いもよらぬ、再開
今度はウルタールの後に付いて、森を抜ける。
一応、あの革装丁の切れ端も持って来てる。
もしかすると、何か有るかもだしね。
そんで、さっきとは逆にルートを辿る様に拝殿の横を回って、その向かいに有る鳥居をくぐる。
そんで、あの暗くて不気味な参道へ。
まあ、さっきの獣道よかマシだけどね。
ウルタールは、来た時のルートを真逆に辿ってる見たい。
って事は、匂いを嗅いで、来たルートを辿ってるってことよ。
だったら、このまま付いて行けば、ささらぎ駅に戻れる!
ナイスよウルタール♪
参道の入り口に成ってた鳥居も抜ける。
さっきの公園だ。
相変わらず、人気が無い。
さっきの案山子を召喚した子供達は、あの後こっちの方に走って行ったけど。
あの子達も居ない。
帰ったか、それとも私に怒られると思って、もっと遠くに逃げたか。
まあ、イタズラにしてはシュール過ぎて、ホラーが過ぎるイタズラだものね。
ホント、あの子達は何がしたかったんだか……、それにあのキツネも……。
この世界の住人も、まあ動物も、ホント意図が良く分かん無い。
何か意味がある事の様にも思えるんだけど、ちゃんと会話が出来れば……。
言葉は、ある程度伝わってる様なのよね。
駄菓子屋さんで買い物した時は、ひょっとこくんとは意思疎通が出来た。
無口だったから会話には成らなかったけど。
それに、子供たちの歌は日本語だったし。
でも、上手く会話が出来ない。
これは、やっぱ小野小町の体が、不安定なのに起因する現象なのかなぁ……?。
ウルタールが公園を出て右に曲がる……えっ!?
確か、この公園には左の方から来た筈。
「ウルタール、逆じゃない?」
そう聞いてみるけど、振り返って背中越しに「にゃー♪」と一鳴きするだけ。
とにかく付いて来いってこと?
うーーん、まさかウルタールもこの世界のシュールさに毒された、なんて事は無いよね……。
ウルタールは迷う様な素振りも無いまま、レトロな街並みを縫う様に歩いてく。
空は相変わらず茜色、夕日が沈む気配はやっぱり無い。
でも、私の感覚だと、電車を降りてから既に一時間以上は経ったと思う。
そうだ!
スマホで時間を確認。
六時ニ十分。
あの時刻表通りなら、あと四十分で次の電車が来る。
それに乗って帰れる保証は無いけど、それでも乗らないまま、この町で野宿する勇気は無いわ……。
「にゃー♪」
ウルタールが立ち止まった……なんでこんな所で?
どう見ても、やっぱりここは駅じゃ無い。
ウルタールは座って、横の建物を見てる。
そんで、もう一回「にゃー♪」と鳴く。
この建物に入れってこと?
何かお店っぽいけど、何屋さんだろ?
レトロな街並みに溶け込んだ、古ぼけた木造の建物を見ると……あ、看板が有る。
煤けた木の看板に、くすんだ文字で古本て書かれてる。
古本屋さんだ。
ウルタールが足元で私を見上げて「にゃー♪」と。
「このお店に入れば良いのね?」
「にゃー♪」
しゃあ無い、ウルタールがそこまで言うんなら、入るしかないか。
本当は、早く駅まで戻りたいんだけど……。
木枠の引き戸に手を掛けて開ける。
鍵は掛かって無い。
営業中って事で良いのよね。
「ごめんくださ~い」
今までの経験上、誰も居ない可能性が高いけど、一応挨拶はエチケットよ。
お店の中に入ると、本棚が所せましと並んでる。
しかも、このお店結構広い。
現代の玉藻堂と同じ、間口が狭くて奥行きのある店舗、ウナギの寝床って奴ね。
適当に入り口付近に有る棚の本を手に取ってみる。
漫画ね。
勿論、めっちゃレトロな絵柄。
それと無く、パラパラ捲って中を見る。
ふふ♪漫画の登場人物はお面をかぶって無いわね。
ちゃんと顔が有る。
この世界に来て、お面をかぶった小っちゃい子達しか見た事が無かったから、ちょっと不安だったけど。
あのお面が、お面じゃなくてあの子達の顔って言う、ホラー展開じゃ無さそうで、安心したよ~。
漫画の絵柄はレトロな絵だけど、このレトロな街並みの風景から考えると、最近の物っぽい。
多分、奥に行くにつれ古い本とか、貴重な本のコーナーに成るって事かな。
ん?
ウルタールが足元をすり抜け、奥の方に。
そんで、振り返って「にゃー♪」と、ひと鳴き。
一応、ウルタールもお店の中なんで気を使ってるのか、チョットか細い鳴き声。
本棚に囲まれた狭い通路を付いて行くと、ウルタールが在る本棚の前で立ち止まる。
で、その本棚の一点を見上げてる。
「にゃー♪にゃー♪」
そこに、何か有るって事かな……なんだろう?
ウルタールの目線の先を追う。
その先に有るのは、革装丁の見覚えの有る背表紙。
「えっ!でも、なんで……?なんで、これが此処に……」
その背表紙に書かれている文字は日本語でも英語でも無い。
でも、とっても見覚えが有る文字。
一本の横線と数本の縦線で構成された、古代アイルランドのオガム文字。
そこに書かれているタイトルは……。




