革装丁の切れ端
再びキツネの後を付いてく。
拝殿の横を回って、その裏側に来たけど……何も無い。
狭い広場に成っていて、その周りは森に覆われている。
キツネを見てみると、一瞬こっちを振り向いて、森の方を向いた。
よく見ると、鬱蒼と草が生い茂ってるけど、何となく獣道みたいに成ってる。
え!?
って、まさか、こんな所入ってく積りなの?
「えーと……それは、チョット……考え直してみない?」
ダメ元で、説得してみる……やっぱ、ダメだった。
キツネは獣道に入ってく。
「はぁ~」
已む無く付いて行く。
獣道って言っても、人が歩く様な道じゃない。
草が結構生えてる。
足元が悪い……歩きにくい……。
それに、さっきの参道より暗くて不気味。
程無くして、少し開けた所に出る。
他は結構密集して雑木が生い茂ってるんだけど、この一角だけ半径五メートぐらいの円型に木が生えて無い。
てか、この辺りだけ石畳に成ってる。
コケが生えて緑色に成ってるから、一瞬気付かなかったけど。
で、この石畳の広場の中央に小さな祠が有る。
キツネはその祠の真横に、こっちを向いて座ってる。
なんか御稲荷さん的な、神聖な感じがしないわけでも無い。
「キューーーン」
え?
コーーーンじゃ無くって……キューーーン?
キツネの鳴き声、聞いたの初めて。
結構可愛いじゃん♪
あっ!
キツネが草むらに飛び込む様に、どっか行っちゃった……。
えっ、ここが終着点てこと?
えっ、最後までフォローしてくんないの?
えっ、マジっすか?
「うーーん、この祠を開けると、なんか不思議空間があって、現代の世界に繋がってるとか?」
取り合えず、祠の方に歩いて行く。
でも、祠小っちゃい……こんな中に体入るかな~……。
祠の扉を開けて見る……はぁ~残念、そんな不思議空間なんか無いよ……。
その代わり、何だろこれ?
茶色い、なめした革製品みたいなのだけど……お財布か何か、かな?
手に取ってみる。
お財布とかじゃない。
でも、何だろう?
ペラペラじゃ無く、結構しっかりした革だ。
四角いみたいなんだけど、上半分?下半分?上下が分んないけど焦げ跡が有る。
火事か何かで焼け残った感じ……。
「うーーん、最近こう言うの見た気がするのよね……何だっけ?」
てか、何処で見たっけ?
記憶を遡る…………多分、小野小町じゃ無い。
って事は、蘆屋小町の方って事に成る。
蘆屋小町が最近、大正で遭遇した火事……あっ!
大使館の裏庭の書庫!
はぁ~、思い出したく無い事を思い出したよ~……。
書庫が火事に成って、その後ストーカーさんから手渡された、『トゥーアサ・ジェー・ザナン』の半分焼け残った表紙……。
これも、そんな感じ。
と、言う事は、何か古い本の革装丁の表紙の一部って事かな?
タイトルとか書いてないところを見ると、表紙の下半分か裏表紙ってことね。
「どうやら、あのキツネは、この革装丁の切れ端に私を導きたかったみたいだけど……でも……だから、どうしろと?」
これが、現代の世界へ戻るキーアイテムって言いたいのかな?
イヤイヤ、そもそも、あのキツネは私を現代の世界に帰そうとしているとか、私の勝手な都合の良い思い込みに過ぎないし。
キツネにそんな気は、さらさら無かったのかも……。
で、どうすんのよ。
キツネを信じて、こんな森の中まで……取り合えず神社までは一本道だから戻れるとしても。
こっから、駅まで戻れる自信は皆無よ!
でも、ホントどうしよ……。
「そうだ!得体の知れないキツネ何か当てにするからダメだったのよ。私にはウルタールが居るじゃん♪」
スマホのストラップの御守袋りからお札を取り出して、魔力を流す。
何時もの様に、白く発光して、猫の形に。
「にゃー♪」
「ウルタール♪」
取り合えずウルタールを抱きしめると、不安な気持ちが和らぐわ。
「ウルタール、ちょっとアナタにお願いが……ん、どしたの?」
ウルタールが、私の手にしてる革装丁の切れ端に鼻先を近づけてる。
匂いを嗅いでるみたいなんだけど、気に成るのかな?
まあ、確かに、あのキツネが何を思って、私をこの切れ端にまで導いたのかって、思うけど……。
ホントに何だろ、これ?
さんざん匂いを嗅いで満足したのか、ウルタールが「にゃー♪」と一鳴きして、スタスタと歩き出す。
「えっ、ちょっと、ウルタール?」
まだ、駅まで案内してって頼んでないんだけど……私の思ってる事が伝わったって事かな……以心伝心?
とにかく、ウルタールが変な所に案内する分け無いし、まあ信じて付いていきましょ♪




