通りゃんせ
ともかく、チョット勿体ないけどラムネは飲まないで、ここに置いとこう。
そんで、これからだけど……ん?
あのキツネだ。
やっぱこっち見てる……。
付いて来いって事なんだろうけど……。
もしかして、元の世界へ戻れる方法を知っていて、私を導いてるとか?
てのはさすがに、自分に都合の良過ぎる解釈よね。
とは言え、他に当ても無いし……やっぱ付いてくか……。
で、キツネに付いてくと、再びキツネがスタスタと歩き出す。
已む無く後を追っかけて歩くけど、益々帰り道が分からなくなる。
不安だ~……。
それにしても、相変わらず人気が殆ど無い。
『殆ど』って言うのは、偶に子供は見かけるのよ。
さっきの駄菓子屋さんの子とか、パンダちゃんみたいな小っちゃい子。
何故か、やっぱみんなお面付けてるってのは……まあ、置いときましょ。
そう言う世界なんよ……きっと。
でも、ささらぎ駅を出て、商店街に住宅街、結構歩いて来たけど、誰ひとり大人が居ない。
祭り囃子はもう聞こえないし、一人ぐらいお祭りから帰ってくる大人とすれ違っても良い筈。
大人のいない世界?
そんな事有り得ないよね。
だって、商店街には車が有ったよ。
五歳ぐらいの子が車なんか運転できる?
絶対無理よ!
運転技術とかそういう問題じゃ無くって、物理的にアクセルとかブレーキペダルに足が届くとは思えないもん。
単にシュールで不可解な世界ってこと……例えば夢の中の様な……?
うーん、分らん!
分かっているのは、この世界が異世界だってことだけよ。
まあ、明かりが漏れる家とか包丁の音が聞こえる家に突撃すれば、なんか分かるかもだけど、さすがにそんな勇気は無いわ……。
キツネは時折振り返りながら、私が付いて来てるのを確認しつつ、スタスタと先を進む。
古い木造の家屋が立ち並んだ街並みの中にある、少し開けた所に出た。
滑り台にシーソー、そんでジャングルジム。
でも……やっぱどれも錆び錆び。
公園ね。
公園にも、人は居ない。
まあ、夕方だもんね……って、夕日が沈む気配が無いから、そう言う問題でも無いか。
もしかして、この世界はずっと夕日って事かなぁ?
それとも、単に夕方が長いだけとか?
そう言えば、白夜の有る地域は夕日が長く続くって聞いた事が在る。
そう言う現象……かな?
公園の中をキツネに付いて行くと、公園の向こう側に小さな鳥居が有って、更にその向こうに森の中に続く細い道がある。
まさか、こんなとこ入ってくの?
キツネが鳥居をくぐって、私に振り向く。
「はぁ~、しゃあない……」
木々に囲まれた細い道。
夕日すら入って来ない。
メッチャ暗い……チョー怖い……。
結構、長い道が真っ直ぐ続く。
鳥居が有ったし多分、参道だ。
って事は、この先に神社が有るってことかな。
更に付いてくと、向こうにも鳥居が見えて来た。
ん?
なんか歌声……子供の歌声だ!
そう言えば、この世界で、人の声を聴いたのは初めて。
でも……聞こえて来るわらべ歌がなぁ~……。
「通りゃんせ 通りゃんせ~♪
ここはどこの 細道じゃ~♪」
さすがにこのシュチエーションで、通りゃんせは怖え~よ。
「天神さまの 細道じゃ~♪
ちっと通して 下しゃんせ~♪」
鳥居が近付くにつれ歌声も大きく聞こえて来る。
「……行きはよいよい 帰りはこわい~♪
こわいながらも♪
通りゃんせ 通りゃんせ~♪ 」
行きはよいよいだけど、帰りになんか怖い事が在るとか……そんな事無いよね……。
鳥居をくぐると境内。
正面に拝殿みたいなのが有って、その左右に石灯籠。
で、その拝殿の前の広場に、やっぱりお面を着けた子供達。
子供達が、こっち見てる。
あっ、さっきのパンダちゃん。
それと、ヒーローの男の子も。
他にも十人ぐらいのお面を着けた子供たち。
レトロなヒーローに、レトロな魔女っ娘?とか、他にもうさちゃんとか動物のお面を着けてる。
で、なんか私を見てひそひそ話をしてるみたい……何で?
……あれ?
そう言えば、キツネが居ない。
どうしよう……なんか嫌な予感がする。
走って逃げた方が……。
ん?
なんか、子供達の話がまとまったのか、みんな小さく頷いた。
そんで、さっきのパンダちゃんが、スタスタと駆け寄って来た。




