ヨモツヘグイ
うーーん、もし此処が、別の異世界として、何でこの世界に私が居るのかは……情報不足でわかん無い、一旦保留にしとこう。
私の存在がこの世界では不安定と言っても、未だすぐに消えてしまう程に不安定ってわけでも無いと思う。
だけど、ともかく、現代の世界に戻る方法を考えなくっちゃ。
どうしよう……一旦、駅に戻った方が良いかな?
もしかすると、あの電車に乗れば現代の世界に戻れるとか。
でも、ここ何処よ?
キツネの後付いて行くのに気を取られて、道覚えてない。
とにかく、住宅街の外にまで戻れたら、一本道だったと思うんだけど……。
そうだ!
さっきのお店の男の子に、聞いてみるとか……小っちゃい子だったけど……わかるかな~……。
もう一度、駄菓子屋の店内に……あれ?
誰も居ない。
「ごめんくださ~い」
あれ?
さっきの男の子が出てこない……。
どっか出かけた?
もう一度、声を掛けてみたけど、やっぱ誰も出てこない。
また、人気の無い状況だ……一体、平和の世界って……。
已む無く外に出て、チョット考えようとベンチに座る。
あっ、そうそうラムネ未だ飲んで無かったよ。
飲もうとしたら、さっきのパンダちゃんがコケちゃったから。
まあ取り合えず喉を潤して、それから駅まで戻る道を探そう。
で、ラムネの瓶を手に取って、口元まで運ぶ……あれ?
これって、ヤバくない?
今、小野小町は不安定な状態で、平和の世界に存在している。
いつものリープと違って、その世界に産まれ育った、安定した体じゃない。
つまり、今のこの体と、この世界を構成する物質は、全く違う異世界同士の物質……安易に体に取り入れるのは危険な感じがする。
それと、以前から考えていた仮説がある。
大正と現代が異世界なのに確信を持ったのは、大正で大晦日に除夜の鐘を聴いた時だけど、そうかもという仮説はもっと以前から立ててた。
だとして、異世界を行き来できるのは、私だけ?
勿論、そんな訳は無いと思ったわ。
じゃあ、そう言う能力の有る人物が、人類の長い歴史の中に居たとすれば、何か痕跡ぐらいあるハズ。
例えば、神話や民間伝承と言った物の中にあるかもって……。
で、結構あっさり、それらしいのが見っかった。
それも、別に一般人に秘匿された神話とか、マイナーな昔話とか、そう言う物じゃ無く、メッチャ有名どこな神話の中に。
古事記とギリシャ神話の中よ。
古事記では、死んで黄泉の国にいる伊邪那美命の元へ、伊邪那岐命が黄泉の国に迎えに行く話が有る。
そこで、伊邪那岐命が伊邪那美命に「一緒に帰りましょう」って言うの。
そうすると、伊邪那美命が「黄泉の国の食べ物を食べちゃったから無理」って……。
ギリシャ神話の方も同じ様な話。
冥界の王ハーデースに連れ去られて、騙されて冥界産のザクロの実を食べちゃったペルセポネーが、食べた実の数だけ冥界で暮らさないといけなくなる話。
どちらも死後の世界を行き来する話だし、その死後の世界の食べ物を食べちゃって、帰れ無くなる話。
一般的にヨモツヘグイって言うヤツね。
日本とギリシャの神話で同じ様なコンセプトの話が有るって、偶然なの?
まあ、そうかもしれないし、もしかすると、ギリシャ神話が何らかの形で日本に伝わったりって事も考えられるけど……。
そうじゃ無くって、本当に黄泉や冥界を行き来した人が、ギリシャにも古代の日本にも居たって事は無い?
でも、そうだと仮定した場合、じゃあ、その黄泉とか冥界とかって何処よ?
幽世?
確かにウルタールは現世と幽世の狭間の世界から帰って来たけど、幽世まで行ったわけじゃ無い。
それに、お爺様の話だと、幽世は来世へ向かう為の魂の休憩所みたいなとこだって……つまり、物質世界じゃ無いわ。
ご飯食べるとか、ザクロ食べるとか、そんな生物としての行動が必要な所だとは思えないし、多分そんな食べ物自体、存在し無いところだと思う。
だとすると……結局それ何処よ?
で……それ、異世界なんじゃね?
って、考察した分けなんよ。
そんで、その世界の物を食べてヨモツヘグイする事で、自身を構成する物質もその世界の物質に変換されて、その世界に安定化する代わりに元の世界には帰れなくなる……。
長く成っちゃったけど、つまり、このラムネをヨモツヘグイしちゃったら、元の世界に帰れなく成るかもだわ。
勿論、これはあくまでも私の勝手な考察だし、必ずそう成るって確証は無いけど。
意味無く、リスク背負う様な行為をする必要も無いわ。
とにかく、今は非常事態かもだし。
慎重に行動した方が良さそう。
でも、もし最悪、時間が経って、この体があまりにも不安定なものに成って来たとしたら……ヨモツヘグイして安定化しなきゃ行けなく成るかも……。
まあ、それは、最後の最後、どうしようも無く成ったらって話だけどね……。




