平和の世界
ラムネの瓶と御釣りを受け取って、お店の外のベンチに腰掛ける。
取り合えず、一服。
ともかく、この町で初めて、人に会えたのは良かったよ~。
まあ、子供だし、ひょっとこのお面を着けてたけど。
祭り囃子は、もう聞こえてこなく成った。
まあ、こんな夕方だしね。
そんな感じで、ベンチでまどろみながら、ラムネの瓶に口を付け様とした時、ワーワーという子供達の声が近付いてくる。
で、何となく目を向けてみると、五人ぐらいの子供が走ってくる……えっ?
また、お面だ。
やっぱ、レトロな感じのヒーローとか動物とかのお面を全員付けてる。
何これ?
この町は、お面がマストアイテムって事?
あ、でもあれか。
お祭りやってたみたいだし、縁日で子供達の乗りで、皆で買ったって奴ね♪
あっ!
着物姿で、パンダのお面を着けた子が、目の前でコケちゃった。
「大丈夫?」
咄嗟に駆け寄って助け起こす。
この子も、さっきのお店の男の子と同じ年ぐらいかな。
でも、この子は女の子。
「あ~、綺麗な着物に砂着いちゃったね。怪我して無い?」
着物の裾に付いた砂をパンパンと払って上げる。
ん?
なんか、パンダちゃんが両手を胸に当て、震えてる……。
なんで?
え、私が怖いってこと?
イヤイヤ、助け起こして、砂を払って上げただけなんだけどな~。
まあ、小さい子だし、知らない人に声掛けられて、怖かったのかな?
「な、なんかゴメンね」
取り合えず謝っとく。
すると、先を走ってたヒーローのお面付けた男の子が、スタスタと走ってきて、私とパンダちゃんの間に入って庇う様に後退る。
なんか、ヒーローっぽいけど……と、すると、わたしゃ怪人っスか?
で、子供たちはまた、ワーワーと走って行っちゃった。
なんか、ショックだわ……。
そんな怖いかな私?
気を取り直して、再びまどろもうとベンチに戻ると、ベンチの上に置いといたラムネの御釣りの三十円がベンチの下に落ちてる。
さっき、慌ててパンダちゃんに駆け寄ったから、その時に落ちたのね。
落ちた十円硬貨三枚の内二枚は真下に、で、もう一枚はどこかな~……あっ、見っけた。
チョット転がって、お店の入り口の方に。
何気に拾った十円硬貨に違和感。
うん?
なんか変な感じだけど……平和27年……。
なんじゃこりゃ?
平和なんて元号聞いた事ないよ。
あっ!あれだ、エラー硬貨って奴よ!
ラッキー♪また玉藻堂に売りに行こ♪
うん?
やっぱおかしい……元号の漢字間違うとか、そんなの有る?
ハッ!
ベンチの上に置いた他の二枚の十円硬貨も確認……平和14年、平和23年……。
エラーなんかじゃ無い……。
良く考えたらこの空も変だわ!
この町に着いて、多分三十分以上経ってるのに、夕焼けの色が変わらない。
夕日が沈む気配がまるで無い。
まるで現実の世界じゃ無い見たい……。
それに、確か、降りた時に見た電車……妙にレトロだった。
此処は……現代でも大正の世界でも無い。
勿論、昭和でも……平和の世界……ってこと?
そう言えば……電車の中で、眩暈……。
あの後、睡魔に襲われて、そして、電車のブレーキの音で、目を覚ましたから、あの眩暈は気のせいって思ってた。
食べ過ぎてたし、歩き回って疲れてたし……だけど……。
えっ?
でも、リープしたんなら私は……誰よ?
小野小町?
それとも、蘆屋小町?
着てる服は矢絣の着物じゃない。
小野小町が朝出かける時に着ていたコート。
駄菓子屋の入り口の窓ガラスに映る自分の顔を見る。
やっぱ、お団子頭……私は小野小町で間違いないわ……えっ!?
一瞬、ガラスに映った自分の姿が、粒子の様に……。
でも、直ぐに戻った。
これって……どんぐりや、二十円札と同じ……。
もしかして……この世界では、不安定な存在として、私は平和の世界に居るってこと……。
だとしたら……このままじゃ、私は召喚した猫達の様に粒子に成って消えてしまう……かも……。
そうだ!
名前!
「私は小野小町!」「私は小野小町!」「私は小野小町!」「私は小野小町!」「私は小野小町!」
もう一度、ガラスに映る自分を見る。
暫くすると、やっぱり一瞬粒子に……やっぱダメだ……。
そう言う事じゃ無いみたい……でも、どうしたら……?




