価格破壊?
キツネだ!
いや、キツネには違いないんだけど、そうじゃ無くって……キツネのお面を着けてる……。
縁日とかで売ってそうなヤツ。
何、このシュールな絵。
キツネがキツネのお面を着けてるって……なんか、コワッ!
しかも、こっち見てるし……。
何となくだけど、あのキツネは、この世のものじゃ無い気がする……蘆屋小町の勘が、そう感じてる。
じゃぁ、あのキツネも、あの猿の様に襲い掛かって来るとか……。
うーーん、でも、そう言う感じでも無いのよね。
確かに、キツネがキツネのお面越しに、私を見ているって状況は、メッチャ、シュールで不気味だけど、敵意を込めてる感じはしないのよね……これも、何となくだけど。
「あっ、歩き出した……でも止まった」
そんで、こっち見た。
さらに、数歩歩いて振り返る。
これって、付いてこいって事?
悩みどこだわ。
如何にも怪しいキツネの誘いに乗って良い物やら……。
あのキツネが、唯のキツネじゃ無いのは一目瞭然だけど、だからと言って悪意は感じられない。
何か意味が有って、私の前に現れたのは確かだと思うんだけど……。
よし!決めた!
お誘いに乗ってやろうじゃない。
このまま、電車を待つのも暇だし、いざと成ればウルタールだって居るし、もしかすると優弥くんみたいな良い子で、困ってる私をバス停まで案内してくれる、とかかも。
意を決して、キツネの方に付いてくと、キツネはスタスタと歩き出す。
舗装されて無い道路の左右に広がる、稲の切り株が並んだ田んぼが夕日に染まり。
そこに、無意味に立ってる案山子。
で、キツネのお面を被ったキツネの後を付ける私……メッチャ、シュールだ……。
それに、何となく、誰かに見られてる視線を感じる。
周りには誰も居ないのに?
誰よそれ……まさか、案山子とか?
そう思うと、その意味なく立たされてる案山子達に見つめられてる気がしてくる……気のせいよ、気のせい!
ん?
なんか遠くの方から聞こえて来た。
お祭り?
祭り囃子だ……。
って事は……なんだ、商店街に誰も居ないのは、みんなお祭りに行ってるからかぁ~。
だったら、せめて戸締りしようよ。
ま、大らかな田舎の習慣って奴ね。
さらに、キツネに付いてくと、田んぼが途切れて、木造の平屋が立ち並ぶ住宅街みたいなとこに来た。
やっぱり、時代を感じさせる家ばっかだ。
住宅街……なのよね?
住宅街なら、近くにバス停とか有りそう。
それに、商店街同様に外を歩く人は見ないけど、明かりの漏れる家もあるし、トントンと包丁の音、それに、美味しそうな匂い。
人の気配がある。
やっぱ、キツネの案内に付いてって正解だったよ♪
レトロな家並みを眺めてると、またキツネが急かす様にこっちを振り向く。
「ごめん、ごめん」
で、再び付いてく。
程無く付いてくと……あっ、駄菓子屋だ!
お店の前に、木製のベンチが有って、お店の中から人の気配。
やっと、人を見っけたよ~。
これで、バス停の場所聞けるよ♪
「ごめんくださ~い♪」
まあ、予想はしてたけど、お店の中に並ぶ駄菓子も相当レトロね。
煎餅にあんこ玉に寒天ゼリー。
この串に刺さったカステラとか、大正でも見た事が有る。
どっちかって言うと小野小町より、蘆屋小町の方が馴染み深い感じかも。
でも、大正で蘆屋小町が見たこと無いのもあるわね。
だけど、小野小町から見ればレトロな感じ……って事は、やっぱ昭和レトロ?
この町はアレなのかな。
町ぐるみで昭和押ししてるとか……?
にしても、徹底してるわね。
その時、チョンチョンと誰かがコートの裾を背後から引っ張る感触。
「誰?」
と、振り返るが誰も居ない……えっ、怖っ!
さらにもう一回、チョンチョン?
目線を下に下げてみる……ひょっとこ?
小さい男の子がひょっとこのお面を着けて見上げてる。
身長的に5歳くらいかな?
うーん、それにしても、イマドキの子供でひょっとこのお面て……渋いチョイスね。
「ぼく、どうしたの?」
一応、御用を聞いてみる。
迷子とかじゃ無いよね……。
だけど、何故かお店の奥にひぱって行かれる。
そんで、男の子はレジの置いてあるカウンターの方に回ると、向こうにおいてある椅子か踏み台みたいな処に立つ。
ん?
これって……。
「ぼくが、お店番してるの?」
すると、男の子が頷く。
さっきの店の中からの気配は、この子だったってこと……。
それで、私が「ごめんください」って言ったから、何か御用?って事なのね……でも、困ったわね。
バス停とか言っても分かんない気がする。
でも、ダメ元で聞いてみる。
「バス停を探してるんだけど……わかるかな、ぼく?」
なんか小首をかしげてる。
「じゃあ、お父さんか、お母さんは居る?」
首を横に振る。
やっぱ、駄目かぁ~。
どうしよう……取り合えず、何も買わないのも悪い気がするし、何か買って、外のベンチにいでも腰かけて、チョットこの後どうするか考えよう。
何か買おうかな?
レジのカウンターの上の張り紙に『ラムネ 二十円』て書かれてる。
ラムネ菓子か~、そういえば最近、大正でも現代でもあんま食べないよね。
せっかくだし、チョット懐かしいし、これにしよう。
「じゃあ、このラムネを一つ下さい♪」
男の子は、大きく頷くと、何故か奥へはしってった。
何で、店の奥?
在庫取んに行った?
ラムネ菓子一個で、あんな小っちゃい子に在庫取んに行かすって、何か悪い事したかなぁ~。
暫く待つと、あの男の子がラムネを持って戻って来た。
けど、ラムネはラムネでも、菓子じゃ無くて、飲む方のヤツ。
で、器用にポン!とビー玉を落として、瓶を差し出してくる。
イヤイヤ……イマドキ、ラムネが一本二十円て、そんな価格破壊ある分け無いじゃん。
「ぼ、ぼく、このラムネ本当に二十円で良いの?安すぎない?」
また、小首をかしげてる。
で、『ラムネ 二十円』の張り紙と、ラムネの瓶を交互に指さして、大きく頷いてる。
どうやら、間違いないって言いたいのかな?
「じゃあ、五十円玉ね」
なんか罪悪感を感じながら五十円玉を一つ手渡すと、三十円の御釣りを返してくれる。
うーん、ホントに大丈夫かな?
あとで、この子怒られたりしないよね……。




