現代の店主
さらに、お店の奥へ向かうと、カウンターが有って、その向こうに和服姿の店主が背を向けて居る。
そんで、私の気配に気付いたのか、此方に振り向くと……えっ!?
玉山さんだ!
いや、そりゃ、子孫とかなんだから、顔が似てるとか有ると思うんだけど、似てるってレベルじゃ無いわ。
それに……着てる服まで。
「いらっしゃい、お嬢さん。ん?どないされたんでっか?ワシの顔に何ぞ付いとりまっか?」
しかも、コテコテの関西弁……えっ?
なんかおかしい。
だって、大正時代に既に玉藻堂は銀座に有ったんだよね。
だとすると、何で関西弁?
勿論、大正の世界と歴史が違う可能性が有るから、断言はできないけれど。
「えっと……その……古い紙幣を売りたいのですが……」
「ああ、買取でっか。宜しおま。ほな、チョット見せて貰えまっか」
取り合えず平静を取り繕って、商談。
一応、二十円札は折り曲げない様に封筒に入れて持ってきてある。
それをコートの内ポケットから取り出して、中身を見せる。
「二十円紙幣でんな……おお、こりゃ凄いやおまへんか。シワ一つあらへん……もしかして、未使用の二十円札でっか?」
そりゃ、叔父様が銀行で下ろして来たばっかの新札だもんね♪
「多分、そうだと思いますけど」
「ほな、ちゃんと査定せんと、あきまへんな。チョットそこの丸っこいテーブルんとこの、椅子にでも座って待ってて貰えまっか……取り合えず、お茶でも入れまっさかい」
それで、椅子に座って暫く待つと、見覚えのある湯飲みを持って戻ってくる。
あの時と、まったく同じ古九谷の湯呑!
メッチャ既視感だわ……。
さすがに、小野小町の舌じゃ、同じ産地の茶葉かわかんないけど、やっぱり鉄観音。
どうやら、此処は私にとってのチョットした不思議空間ってとこね。
まあ、バイオレンスな事も無いし、こう言う不思議体験だったら悪く無いわよ♪
玉山さんそっくりの店主も、向かいの椅子に座って、二十円札をルーペで見てる。
「フン、フン……ホンマ、エエ状態でんな~。これやったら、そやな~……。お嬢ちゃん65万円でどないやろ?」
ろ、65万円っすか!?
想定してたより五万円UP♪
そりゃ、もちろん……。
「ええ、それで、宜しくお願いしますわ♪」
何とか頑張って、平静を装いつつ、蘆屋小町のお嬢様モードを捻りだしてみる。
「ほな、商談成立でんな♪」
ほどなくして、レジの方から札束を持ってくる。
蘆屋小町の方はともかくとして、小野小町はあんな札束見た事無い。
「スゲー!」とか「ウォー!」とか歓声上げたいのをグッと我慢!
で、その札束が私の手に。
取り合えず、心の中で「ヒャッホー♪♪」と、雄叫びを上げとく。
「有難う御座ます。ですわ♪ホッホッホ♪」
「ハッハッハ♪ワシもエエ買い物させてもらいましたわ♪」
これで、今日の一つ目のミッションはクリアよ!
でも、帰る前に、このモヤモヤを解消しとかないと、寝つきが悪く成りそう。
「此処のお店って古いんですか?何となく歴史を感じるんですけど」
てな感じで、それとなく探りを入れる。
「ハハハ、このお店でっか。もうどれくらいに成りますやろな~。ひい爺さんの頃や言うっとったから、大正時代か、明治の終わりぐらい、ちゃいまっしゃろか」
「え?でも、おじさん、関西の方ですよね?」
「ハッハッハ♪ちゃいまんねん、一応、こう見えてもワシ、産まれも育ちもチャキチャキの江戸っ子でんねん」
いやいや、「江戸っ子でんねん」って……。
「ワシのこの大阪弁は教育の賜物言うヤツでしてな。『商売人は大阪弁や無いとアカン』言うのが、玉山家の家訓なんですわ。そんで、産まれた時から大阪商人の英才教育で、こんなしゃべり方に成ってしもたんですわ。ハッハッハ♪」
なんか……ある意味、闇の深い一族ね……。
再び、あの暗い階段を下りて、不思議空間から脱出。
「うーーん!」と、ひとつ背伸びをして……。
「さて、軍資金は手に入れたわ!」
これだけの軍資金よ。
普段出来ない、無茶してやるんだから。
何万円分のスイーツ食べられるか、自分の限界に挑戦よ!
「よ~し、スイーツ食べまくるわよ♪♪何処行こっかな~♪やっぱ、スイーツって言ったら聖地、自由が丘よね~♪そんで、自由が丘を制したら、次は表参道を制して見せるわ♪」
修正履歴
2020/6/5 玉藻堂の所在変更。有楽町⇒銀座。本文の内容は追加変更無し。




