↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブス女ですけど転生して美少女になりましたの。ほほほ。  作者: 夢見るライオン
第三章 レイラ、貴族になる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/384

5、ロイとレナルド

「やってくれましたね、兄上」


 アルフォード邸の豪華な一室では、静かなバトルの真っ最中だった。


「なんのことだろう、レナルド」


 執務机で走らせていたペンを止めて、ロイは目の前のソファに座る弟を見つめた。

 長い足を優雅に組んで、ソファの肘に右手を乗せて頬杖をついている。


 気取り屋のレナルドは、どこにいても何をしていても完璧なポーズで場を華やかにする。

 貴族の子女がきゃあきゃあ騒ぐのも分かるが、無骨なロイには正直うさん臭い。 


 自分の執務室にまで来て、このソファに座る時はろくな話ではない。

 長年の付き合いで、それは身にしみていた。


「しらばっくれないで下さい。ロリポップの絵師をどこにやったのですか?」


 やはりそのことかと、ロイは肩をすくめた。


「なんのことだ。私にはさっぱり分からない。それよりもお前はどうしてその絵師を探してるんだ? 絵でも描いてもらいたいのか?」


 わざと、すっとぼけた。


「ふざけないで下さい。分かっているのでしょう? 父上は老眼で見えてなかったようだが、あのケースに描かれてあったサインの絵の具。あれは庶民が手にすることの出来る絵の具ではないはずです」


「サイン? いったいどれのことだ? 見せてくれ」


 ロイが言うと、レナルドはフンと鼻を鳴らした。


「それがどういうわけか、今朝見るとサインの部分の絵の具だけ削られていましたよ」


「それはよくないな。ネズミにでも齧られたのか。一度屋敷内のネズミ退治をした方がいいかもしれないな」


 レナルドはイラついた顔でロイを睨みつけた。


「さぞかし精鋭のネズミが捕まることでしょうね」


 ゆうべのうちにレナルドの目を盗んでサインの部分を削らせた。

 ウッズとその配下の親衛隊たちはその手の仕事をさせたらピカ一だ。

 ロイ自身も何度彼らに救われたか分からない。


 このアルフォード邸は、国中のどこよりも芸術的で美しく。


 そして陰謀と策略のうずまく場所だ。


 その黒い渦の中心にいるのが、このレナルドと母親のクリスティナ。


 だがそれを知っているのは、ロイとレナルドに近しい僅かな者だけだ。

 何も知らない貴族たちは美しく優秀なアルフォード家の息子たちを、ただただ心酔している。


「まあいいでしょう。どこに隠したのか、だいたいの見当はつきますよ。さしずめスチュアート公爵邸かサエコス公爵邸あたりの使用人ということにしてるんでしょう?」


 真っ先に言い当てられてロイはため息をついた。

 証拠品がなくなれば諦めると思ったが、そうもいかないらしい。


「お前はその絵師を見つけてどうするつもりだ? もはや捕えるような物的証拠もなく、今さらそんな年端もいかない絵師を捕まえたところでお前に何の得もないだろう?」


「そうですね。元々、退屈しのぎに面白い遊び相手を見つけたと思ってただけですし」


 そんなことだと思った。

 レナルドにとって平民や貧民などゲームの駒にすぎない。


 意気揚々と未来に夢を描いている者を叩き潰すのが、レナルドの大好物のゲームだ。


 あの溌剌(はつらつ)とした夢溢れる絵師の少女などは、かっこうの獲物だ。


 もし先にレナルドに見つけられていたらどうなってたか分からない。

 そう思うと、ロイはホッと胸を撫で下ろした。


「では、もういいだろう。気の毒な少女だ。このまま放っておいてやれ」


 ミリセント教会で血まみれのまま抱き合う幼い姉弟を見つけた時は胸が痛んだ。


 怪我をした弟を守るように抱き締めて、最後の時を迎えようとした少女の強く清らかな姿にわけのわからない感動をおぼえた。


 この清らかな命一つ守れない者に、広大な領地を治める資格などないと思った。


 すでに息絶えているのかとひやりとしたが、幸いまだ体は温かく息をしていた。

 あと半時も遅かったら凍えて死んでいたのではないかと思うとゾッとした。


 そのままロイが少女を、ウッズが少年を抱いて温めながら馬車でスチュアート邸まで運んだ。

 よほど疲れていたのか、二人とも目を覚ますことはなかった。


「そうですね。私もさほど興味があったわけではないのです。庶民にしては美しい少女でしたが、まだ子供ですしね」


 レナルドの言葉にロイはホッとした。

 これで諦めてくれるなら良かったと、再びペンをとって執務の続きをしようとした。


 しかしレナルドは続けた。


「ですが気が変わりました」


「!」


 ハッと顔を上げてレナルドを見る。


「兄上がそこまでご執心の絵師となれば、別の興味がわいてきましたよ」


「な、何を言っている! 私は別に執心などしていない。変な勘違いをするな」


 ロイは慌てた。


 それを見てレナルドがくすりと笑う。


「ほら。珍しく動揺してるじゃないですか。誤魔化してもダメですよ」


「ご、誤魔化してなどいない!」


「ふふ。慌てる兄上を見るのが一番大好きなんです。楽しくなってきましたよ。どうやらしばらく退屈せずに済みそうだ。では失礼します」


 レナルドは嫌な笑顔を浮かべて、部屋を出て行った。



次話タイトルは「ザック」です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。